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「胸キュン」バレンタインはいずこに

立川談笑

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NIKKEI STYLE

ちょうど時期だと思って「バレンタインデー」をテーマにしたのに、どうやらイベントとしてかつてほどの勢いがなくなっていることを知りました。なんと昨年は、国内での経済効果としてハロウィンに追い抜かれたなんて報道も。そこで今回は考えます。

「どうする、どうなる、バレンタインデー!」

手に負えるのか? それでも突っ込みます。前進あるのみ!

バレンタインデーをスペシャルなイベントとして、思いを込めたチョコレートをやりとりする。なんてこと自体が実は日本独自のもので、なおかつお菓子屋さんの業界が仕掛けた販売戦略だったと。これはもういわずもがな。周知の事実でしょう。また仕掛けるうえでのとっかかりとして欧米の「聖バレンタインの記念日」を流用した、とか。もっと言うと、ローマ帝国の時代にバレンタインさんが処刑された命日が2月14日だったなんて、意外に血なまぐさい豆知識も、私はこの際、興味はありません。

「年に一度だけ女性から男性に愛の告白ができる日」という、空前絶後の一大イベントだったはずなのに、その大義名分が昔に比べてすっかり色あせちゃった。この一点がつくづく残念なのです。たとえそれがどこぞの業界に世間が踊らされただけだったとしても。またたとえ本気の告白チョコレートをもらった経験が一度もないとしても。ああ、ないさ。ないさ。ないともさ! 泣いてなんかいないさ!

落ち着いて周囲を見回せば、バレンタインデーに向けて元気なのはまずはチョコレート販売関係のみなさんです。メーカーは「今年の傾向! 誰にあげるの? 価格帯は?」なんてリサーチ結果を発表したりしてこの記念日をアピールするのに余念がありません。デパートでは相変わらず特設売り場をしつらえて「とびきり高級なチョコレート」を華やかに並べたてます。そこでは見たこともない有名ブランド(って言葉が変ですが)の店名が金色の繊細なフォントで踊っています。フランス語やイタリア語っぽいのが多くて、とにかくおしゃれ。

街のコンビニやスーパーはというと、ちょっと風向きが変わった気がします。この季節のチョコレート販売熱が、直近の和風イベントである節分の新たなアイテム「恵方巻」に侵食されている感がある。それでもまだまだ全体的に2月のチョコレート販売促進活動には根強いものがあります。

近年では、バレンタインデーは本来の欧米流に夫婦でお互いにプレゼントしあいっこする人たちがいる、なんて話があります。チョコを離れて、バッグだとかスカーフだとかを。これは噂には聞くけど見たことがない。知らない。少なくとも私の周囲には、そんな人はいません。相変わらずチョコレートに寄っています。たとえば、高級なチョコレートを「女の子のお友だちにプレゼント」する。また「友だちと一緒に自分も楽しむ」。「どうせだから、自分用も別に買う」。「お父さんにプレゼントする」。「男性が買って彼女にプレゼントする」。おおー。男も買うか。

つまり、2月14日のバレンタインデーとは、「みんなで仲良く大いにチョコレートを楽しむ日」になったということでしょうか。……うん。いいのだろうさ。ただ、そこに「いきなり告白」要素が消えてなくなってしまったのを、おじさんとしては物足りなく感じるのです。スリリングなハプニング感、ゼロ。

そういえば「義理チョコ」なんて言葉も死語に近いようです。そりゃそうです。義理チョコとは「本命チョコ」があってこその存在だったのですから。両方とも価値が薄らいじゃった。

思い起こせば、全盛期のバレンタインデーのイメージは鮮烈でしたよ。

2月の晴れわたった空の下。早朝のピンと凍(い)てつく空気の中を、あなたはマフラー越しに白い息を吐きつつ、学校を目指して歩いています。最寄駅で電車を降りた、いつもの通学路。いつもの制服姿が列をなして行儀よく歩くいつもの光景。おそろいの制服の背中を見ながら、同じ歩調で同じ学校を目指して歩く。そんな自分の姿を客観視して軽く息が詰まります。足元にはこの季節らしく溶け残った雪や張ったばかりの氷があったり、なかったり。ざくざく、ぎしぎしと今日はやけに力強く歩を進めながら、頭をよぎるのは大学受験のこと。

(先輩たち、みんな気合い入ってたなあ。全員受かるといいな。俺ももう来年かあ。でも志望校を決めろったって、それ以前にどんな仕事に就きたいのかもぜんぜん決まってないんだよ。俺、かなりヤバいかも……)

そこへ横合いの自販機の陰からザッ!と何かが飛び出してきた。視界いっぱいに広がったのは、同年配らしき女の子の姿。こわばった表情であなたの目をまっすぐに見据えています。

「あ、あ……。あのぉ。ずっと見てました。これ!」

ドンとあなたに身体ごとぶつかるようにしてすれ違うと、女の子は後ろに向かって駆けてゆく。鼻をくすぐる残り香。あなたは後ろ姿を見送るでもなく、あぜんと立ちすくんだまま、頭の中でとりあえず今の出来事を整理して理解に努めます。

何だったんだ? 知らない女の子。何か言ってた。真っ赤な毛糸の手袋。あの制服、あの学校か。何か押し付けられた。ってことは、受け取ったのか。

改めて自分の手元を見れば、かわいらしい紙包みが。風変わりなリボンが目立つ不思議な雰囲気。高価そうだけどひどい安物にも見える。何だ、こりゃ? あ? あ?あー。 ……こ、れ、は? ま、さ、か、?

「バッ、バッ、バるるレンタインデーのぉ、告白チョッコレート、だああああ!!!」

と、これほどハプニング仕掛けのロマンチックなイベントったら、古今東西そうそうありませんよ。一方的に誰にでも告白できるというルールは、設定された段階ですでに全員の強制参加が見込まれているのです。それは誰にでも訪れるロマンスのびっくり箱。恋愛のフルーツバスケット。恋のめちゃぶつけ。

ええ、ここまで盛り上げといてナンですが。正直に申します。私は、このイベントが嫌いでした。わはは。ご安心下さい。大嫌いでしたよ。だって参加するつもりもないのに、組み込まれちゃうんですから。自動的に「チョコをもらえない人」のレッテルが貼られるなんて、不本意で仕方ありませんでした。

それに、なんだか意識過剰になっちゃって。この時期に男子たちは自分でチョコレートを買うなんて行動は恥ずかしくってとてもできませんでしたよ。「もらえないから自分で買って見栄を張ろうとしてる」って思われそうで。あと、朝から「絶対に期待しないように」と自分に言い聞かせ続けて、それだけでも十分へこむのに、夜にはやっぱり空振り感が確実にあって。そこへ母親から「気休めチョコ」なんかもらっちゃった日には、もうコテンパンにやられた気分になったものです。

天下泰平。時代が変わって、ようやく2月14日に平和が訪れたのです。恐ろしい呪縛から世界は解き放たれた。あの風潮が復活してほしいなんてこれっぽっちも思いません。今の若者には今の時代なりの、昔とは違う形での楽しさやトキメキがあるのでしょうし。じゃあ、私は何をここで残念がってるのだろうと考えてみました。ふうむ。遠ざかってしまった青春時代の雰囲気を懐かしんでいるだけなのか。

さてと。デパートでものぞいて、ピエール・マルコリーニかゴディバあたりの高級チョコレートを買ってこようかな。今はもう、おじさんが自分で買ってたってちっとも恥ずかしくないもんね。

☆     ☆     ☆

次回のテーマは「お取り寄せ」。だいじょぶかなあ。

(次回2月12日は立川笑二さんの予定です)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子らとともに開く一門会は2月13日、3月29日、4月28日の予定。独演会は2月23日、3月18日、4月5日の予定。

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