コンビニの「おにぎり温めますか」 常識か非日常か?
おにぎり・おむすび(2)
前回に引き続き、おにぎり温めますか問題が尾を引いている。
プリントアウトしたらA4で4枚半にもなったこのメール。どこを紹介しようか。そうだここから温め問題。
手慣れたコンビニ店員もたまには間違えることもあるらしく、おにぎりの形した押し寿司を温められそうになったこともありますが、それはほかのおにぎりと紛れていて多分ややこしかっただけ。が、かつてあたしの友人が、パック入りのなっと巻きのみを購入しようとしたとき「温めますか?」って聞かれたことがあったと喜んでおりました…これはね、温めて召し上がる方はほとんどいらっしゃらないと思います(和歌山出身ちろこ@札幌さん)
和歌山もそう? 半ライス大盛りさんの印象だと東北、北海道という寒いところでの現象みたいだが、そうでもないのだろうか。
北海道に長くいたので感覚が麻痺(?)したのか、佐賀に来ておにぎりを買っても「温めますか?」と聞かれないことに違和感を感じる今日このごろです(今は佐賀市民のわしさん)
なぜ、北海道ではおにぎりを温めるのか。冬の寒さのせいではないでしょうか。ご存知のように冬の北海道は暖房の温度が高いです。25度くらいのお宅は普通でしょう。
暖かい部屋でTシャツ1枚で冷たいビール、アイスクリームというのが冬の醍醐味という人も多いはず。冷え切ったお客様には暖かくして差し上げるのが何よりのおもてなしでもあるのです。
「襟裳岬」の歌詞にも「遠慮はいらないよ、あたたまってゆきなよ」とあるではありませんか。
また、北海道の雪の降る地方の小・中・高校には「スキー遠足」という行事があります。お弁当持ってスキー場に出かけ、1日滑りまくるというものです。この時のおにぎりは冷え切ってコチコチになりましたっけ。ところが、最近は「使い捨てカイロ」を使って冷えないようにする工夫があるのです。ここでも「おにぎり温め」ているわけですね(札幌生まれ、札幌育ち 道産子三代目 雪あかりさん)
元どーほくみん@埼玉さん、最近の北海道はこんなふうになっているようですよ。温めるのが普通になりつつあるんだそうです。
その北海道から「温め反対」の声。
自慢ではないが、私は筋子の握り飯を食べたことがない。さっき食べたのは海老シューマイおにぎりと広島菜で巻いた海苔の佃煮入りのものであった。海老シューマイの下にマヨが潜んでいた。心ならずもマヨ飯を食べることになってしまったことが惜しまれてならない。
デスク考察 コンビニ以前の時代は、少なくとも関東ではおにぎりを温めるという習慣は一般的ではなかったと思いますよ。同時にマヨネーズや揚げ物入り、チャーハンなどといった油分の多いおにぎりもなかったはず。コンビニの「温めますか?」はそうした冷えると胸焼けする「油物」おにぎりの登場と因果関係があるのではないでしょうか?
野瀬 長いこと目をつむっていたから寝てるんだと思ってたら、コーサツしてたんだ!
デスクん? 「愛の流刑地」? それは絞殺か…。
おにぎり温め現象が確認されているのは北海道、郡山をはじめとする東北各地、飛んで和歌山である。
話題は変わる。こんなおにぎりはいかが?
a)海苔を真ん中で2枚に切る
b)全体にまんべんなくご飯を敷く。あまり厚くならないように(厚さ2センチ程度)
c)好きな具をはみ出ないようにのせる
d)真ん中で2つ折り財布のように折って、上下から押し付けて完成
その名も「ぺちゃにぎり」。でも、バッグに突っ込んでいくにはいいんですよ。なんせ最初からつぶれてますのでね(S.I.さん)
写真を送っていただいている。しかし、これはおにぎりと言えるだろうか。にぎっていないのである。「おつぶれ」ではないのか。デスク意味なく 僕は「おちぶれ」?
それと、もうひとつ小さいころから気になってたのは鳥ご飯とか、炊き込みご飯のおにぎりになると海苔で巻かれるのが少ない、ということです。実家ではラップで海苔なし鳥ご飯が包まれてることが多かったのです。なぜでショー? 個人的には鳥ご飯に海苔は合わないからだと思ってます(恵さん)
炊き込みご飯系のおにぎりが海苔で巻かれていないのは、海苔で巻いてしまうと何が入った炊き込みご飯かわからなくなるからである。「具いっぱい鶏ごぼうご飯」とか書いてあるのに、食べたらほとんど何も入っていなかったというような事故を未然に防ぐ意味もあるのである。違う?
名古屋。
東京の人は牛肉のしぐれ煮を思い出すかも知れません。でも、こちらの「しぐれ」は海産物です。コンビニおにぎりの原材料一覧には「塩飯」「あさりしぐれ」「のり」と書いてあります。そのまんま。要は佃煮です。桑名ですかね、ハマグリなど貝の佃煮を「しぐれ煮」と言って名物なんですよね(日野みどりさん)
千葉。
新潟。
日本のあちこちで、漬物の葉っぱにくるんだおにぎりがありますが、結局、ああいうノンたんぱく質のおにぎりがおにぎりかなぁって思います(新潟市 矢作ちかぶーさん)
そう、赤味噌地帯で「しぐれ」といえばハマグリの佃煮なのである。名古屋駅(名駅って言うんですか?)近辺の地下街にもこのしぐれを売っている店が何軒かある。恥ずかしいことではあるが、私はこのしぐれが好きだった。今でも好きなのだが、硬くてかめない。悲しい。
落花生炊き込みご飯。私の目の前の席に座っている学生バイト君に「落花生の炊き込みご飯て食べたことある?」と聞いたら「殻はむいてあるんでしょうか」と聞き返された。もっともな疑問である。
デスク訴え だから落花生はゆでるとおいしいんだってば。栗だって炊き込むでしょ? 皮むいて。それと同じじゃん!
白菜漬け巻きミニおにぎりは好きになりそう。だっていま広島菜巻きのおにぎり食べたばっかだもん。こんど家でやってみよ。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。