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ジャック・ウェルチ氏といえば、希代のカリスマ経営者だ。1980~90年代にゼネラル・エレクトリック(GE)の最高経営責任者(CEO)としてその手腕を発揮し、その後もプライベート・エクイティ・ファンドのパートナーとして活躍するとともに精力的に講演活動を続けている。そんなウェルチ氏が妻のスージー氏と共著で刊行したビジネス指南書が『ジャック・ウェルチの「リアルライフMBA」』(日本経済新聞出版社)だ。ビジネスに勝ち残るための教えを13章にわたって書き込んだ本書の中から第1章を6回に分けて紹介しよう。5回目と6回目はリーダーが真実と信頼を得るための、いま行動すべき5つのステップについて語る。5回目で取り上げるのは、まず始めるべき2つのステップだ。

◇  ◇  ◇

今日から始める戦術

そこで、一貫性をとる人、リーダーに目を転じよう。

前にも触れたように、つまらない仕事を取り除き、一貫性をとるために、リーダーシップは欠かせないものだ。車のタイヤをきちんと整備していても、車を運転する人が誰もいなければ何の意味もない。そうだろう? 行き詰まりを見せた組織に、ミッション、行動、結果を新たに作り、植え付けるのに、新鮮なリーダーシップは絶対に不可欠のものだ。

後ほど、1章まるまる使ってリーダーシップについて述べる。経験と観察から得た新たな総合的モデルを提案するつもりだ。そこでは、リーダーシップを、執拗に真実を追求し、絶え間なく信頼を作り出すものとして書いた。

だがここでは、つまらない仕事を取り除くために必要な、真実と信頼を得る戦術について話そう。具体的には、いま行動すべき五つのステップについて話していく。沈滞している、てんてこ舞いだ、あるいは可能性をフルに発揮していない。組織がそういう状態だったら、問題解決にすぐさま取り掛からなくてはならない。来週からでは遅い。明日からでも遅い。

今日始めなくてはならない。それにはこうすればいい。

(1)心の奥底に入り込む

横柄で偉ぶったマネジャーが、将軍のように歩き回る、アシスタントに怒鳴る、部下を集めた会議を仕切る、そして、上司が主催する会議の準備をする。それが唯一の仕事のように振る舞う。最悪だ。こういう出しゃばりで、役員の椅子にこだわるタイプは、かつて広告業界や自動車業界が世界の中心にいたころにのさばっていた。あのころこういう連中は大勢いた。彼らが快適なオフィスから出るのはランチのときだけ、それも仲間と一緒に。こういう輩は消滅したと思っているだろう? 残念ながら大外れだ。この10年間、たっぷりと見てきた。昔と変わったのは、テクノロジーの背後に隠れる技を身に着けたことくらいだ。

仕事にも社員にも飽き飽きして無関心。毎日どうして会社にやってくるのか不思議だと思われるような意気地のないマネジャーも、このひどい奴らの仲間に入れておこう。

こんなのはまったくバカげている。もし君が会社のミッションや行動にきちんと一貫性をとっていて、素晴らしいことをやってのけたいと思っているのなら、さっさとそんな状況から抜け出してしまおう。そして部下を一人の人間として理解するように努め、大切にしてあげるべきだ。本当に優れたリーダーはスポーツのコーチに似ている。選手の動きに興奮した気持ちを隠そうとせずにコートの外で飛び跳ね、ベンチに戻ってきた汗だくの選手を抱擁する。一人ひとりの選手の心を動かす方法を知っている。こういうコーチと優れたリーダーは同じだ。

もう一歩進めて考えよう。最高のリーダーは自分自身よりも部下のことを大切にする。ちょっと前にニューヨーク・タイムズ紙にドン・クナウスのインタビュー記事が載っていたが、いい話だった。当時彼はクロロックスのCEOだった。20代のころ、ドンは海兵隊の少尉でハワイに駐屯していた。ある日のこと「朝5時から起きていてかなり空腹だった。ランチの行列の前のほうに歩いていった。下士官の一人が私の肩をつかんで振り向かせた。そしてこう言った。『少尉、戦場では兵隊が最初に食べるのが決まりだ。あんたは残り物があったら食べればいいんだ』。私は『OK、わかった』と言った。そう、部下が重要なんだ。自分ではないんだ」

いい話だ。優れたリーダーは部下に敬意を持って接し、部下を尊重するということを、大きなことでもささいなことでも、言葉と行動で何度も繰り返し、信頼と信用を築く。

疲れそう、と思うか? ときにはそのとおりだ。とりわけ現実の場面では。当然だ。だが、チームを勝利させるためならいとわないと思うべきだ。いつもそうしているように周りから見られるようにすべきだ。

(2)自分はチーフ・ミーニング・オフィサー(仕事に意義を見出す最高責任者)だと考えよう

デイブ・カルホーンやエリック・ファーワルドはトップに就任した最初の18カ月間に、どのくらい頻繁にミッションと行動について話しただろう? それは毎日どころではなく、あらゆる会話の機会を捉えて、組織のあちこちで話した。このように過剰と思えるほど会話を持つことが不可欠なのだ。変化のプロセスを始めたときだけではなく、絶え間なく。

リーダーは、仲間に目的を与えるために存在するといっても過言ではない。「私たちはここに行くんだ。その理由はこれ。そこにたどりつく方法はこれ。そこで君はこういう役割を果たす。これが君の得るものだ」と、たゆまず情熱をこめて説明する。

念のために言っておくが、こうして全部説明をし終わったら、再び説明する必要がある。

君の部下は毎週40時間以上働いていることを忘れないように。それだけの投資が意義あるものになるよう手助けをしなければ、彼らの時間、人生を無駄にさせていることになる。小言幸兵衛になってはいけない。だが、リーダーシップのこの側面は、ひるみたくなるようなものだ。わかっている。いやというほど同じことを繰り返すのが好きな人などいるわけがない。だが、社員に向き合い、心から気に掛けるためには、これが絶対に必要なことだ。真の関係を持つ間柄であれば当然だ。

そしてもう一つ。チーフ・ミーニング・オフィサーになるべきなのはトップだけではない。どういう事情でその仕事が出てきたのか、その目的は何かを考えるのは、会社の大小を問わず、チーム・リーダーレベルに至るまであらゆる階層の管理職の仕事だ。それによって生み出される力の強さと一貫性を思い浮かべてみよう。

(斎藤聖美訳)

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