悪をもって悪を制するヒーロー 『ブラックリスト』
2016年12月 海外ドラマ月間レンタルランキング
最近の海外ドラマで人気なのが、悪のダークヒーローが主役となり、より巨悪を倒すために戦う作品。米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配犯が、FBIに協力して国際的な犯罪者たちの捜査にあたるアクション・サスペンス『ブラックリスト』も、そうした「悪をもって悪を制する」ヒーローが人気のドラマ。DVD最新シーズンがTSUTAYA海外ドラマ月間レンタルランキングで2位に初登場するヒット作となっている。
『ブラックリスト』はFBIの最重要指名手配犯の1人であるレイモンド・"レッド"・レディントン(ジェームズ・スペイダー)が、自分が関わってきた犯罪者のリストである「ブラックリスト」を携えて、大胆不敵にもFBI本部に出頭。国際的な犯罪者たちの逮捕に全面協力すると持ちかけ、彼が指名した新人捜査官エリザベス・"リズ"・キーン(メーガン・ブーン)をパートナーにして、犯罪捜査にあたるというストーリー。
毎回違った犯罪者を追い詰める1話完結形式だが、世界中の凶悪犯の裏取引に協力してきて"犯罪コンシェルジュ"の異名をとるレディントンが、なぜFBIに協力するのか、なぜ新人捜査官のエリザベスをパートナーに指名したのか、といった重大な謎はシーズンを通して徐々に解明されていく。
全米では2013年からNBCで放送が始まり、その年の新作ドラマの視聴者数ランキングで1位となる大ヒットを記録。その後も人気は衰えず、昨年9月からはシーズン4の全米放送が始まっている。また、今年2月からは、劇中の人気キャラクターであるトム・キーンを主人公にしたスピンオフ・シリーズの全米放送が始まり、人気はさらに広がりを見せている。
『ブラックリスト』の最大の魅力である主人公レディントンを演じるのは、ジェームズ・スペイダー。映画『セックスと嘘とビデオテープ』(カンヌ国際映画祭主演男優賞)、ドラマ『ボストン・リーガル』(エミー賞主演男優賞)などで知られる名優だ。冷酷非道な凶悪犯でありながら、立ち居振る舞いも装いも紳士的で、どんな状況下でもジョークを口にするインテリジェンスを持ち合わせた、なんとも魅力的な人物を見事に演じている。彼はこの役で、ゴールデン・グローブ賞テレビの部ドラマ部門主演男優賞に2年連続ノミネートされている。
『ハンニバル』のレクター博士をほうふつ
ジェームズ・スペイダーは、自身が演じるレディントンの魅力について、あるインタビューでこのように語っている。
「彼は、他の人たちが言いたくても言えないことを言ってしまう。他の人たちがやりたくてもやらないことを、やってしまう。私たちの多くが恐れを抱くものに対して、レディントンは恐れない。それどころか、彼はその恐怖を抱擁するんだよ。それを自分の人生にするんだ。そういうところが、(視聴者の)好奇心をかき立てるんだ」
TSUTAYA MD販促部映像ユニット レンタルチーム 海外ドラマ担当の中山知美氏は、「1980年代にイケメン俳優だったジェームズ・スペイダーがスキンヘッドになっているインパクトは抜群。彼が『ハンニバル』のレクター博士をほうふつさせる、悪をもって悪を制するダークヒーローを演じている点が、他の作品では味わえない魅力となって支持を広げているようです」と、本作の人気を分析する。
レディントンのような悪のダークヒーローが活躍する人気ドラマは、近年多い。なかでもヒット作となったのが、ガンで余命短い高校の化学教師がドラッグ精製に手をそめて悪の道に入り、国際的な麻薬カルテルと抗争を繰り広げるようになる『ブレイキング・バッド』や、極悪バイカーチームが愛する街を守るために、敵対するギャングや腐敗した警察と戦う『サンズ・オブ・アナーキー』だ。
いずれも悪とはいえ、社会のルールやしがらみにとらわれず、自分の信念や理想を信じて突っ走り、行動する主人公の姿は壮快そのもの。閉塞感が増す現代社会にあって、そうした奔放な姿にあこがれを抱く人々は、増える一方なのだろう。ダークヒーローが活躍するドラマは、さらに人気を伸ばしそうだ。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
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