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8年で資産格差は1.6倍 毎月分配型投信のワナ QUICK資産運用研究所 高瀬浩

2017/2/1

毎月分配型だと複利効果が効かなくなる=PIXTA

 投資家が毎月楽しみにしているという投資信託の分配金。受け取った分配金の大部分が実は投資元本の払い戻しだった、と知ってまさかと驚く投資家が後を絶たないようだ。ETF(上場投信)以外の追加型株式投信には値下がりしても分配金を出せる仕組みがあり、分配金はもうけとは限らない。分配金の原資はすべて基準価格の中にあり、他から補填されることはない。そのため、分配金を毎月受け取ると複利効果が剥落し、長期投資では不利な選択になりかねない。

■普通分配金と特別分配金

 分配金のことを「収益分配金」というので、分配金は収益(もうけ)だと勘違いしやすいが、事実は異なる。投信の仕組み上、分配金の大部分、場合によっては全額が元本の取り崩しということも起こりうる。

 分配金には2種類あり、収益に基づく分配金を「普通分配金」、収益に基づかず元本の一部払い戻しの分配金を「特別分配金」と呼ぶ。普通分配金は課税対象だが、特別分配金は元本の払い戻しなので非課税の扱いで、損益通算の対象外となる。特別分配金として元本の払い戻しを受けても、購入時に支払った販売手数料は返還されない。

 つまり、分配金は普通分配金か特別分配金の両方、もしくは片方から成っていて、「分配金=普通分配金+特別分配金」の関係にある。

 特別分配金という言葉には何かスペシャルな収益還元のような響きがあり、誤解を招きやすい。そんな事情もあってか、5年ほど前、目論見書など投信の公式資料では「元本払戻金(特別分配金)」と明記し、その意味合いを説明するよう制度が改正された。

 ETF以外の追加型株式投信(投資対象は株式に限定されない)では、たとえ基準価格が下落したとしても、後から購入した投資家の元本の一部など収益以外を原資として分配金を出せる仕組みがある。このため、分配金の大部分が投資元本の払い戻しとなっても不思議ではない。

 分配金の額は個々の投資家ごとではなくファンドで一律に定まるので、普通分配金か特別分配金かを自分で選ぶことはできない。普通分配金と特別分配金の区分は購入基準価格が大きく関係する(後述)ので、同じ投信の同じ分配金が、ある投資家には普通分配金であっても、別の投資家では特別分配金になる場合がある。

 普通分配金と特別分配金の内訳は分配後に販売会社から交付される「分配金の支払い通知」で確認できる。

■特別分配金の多さを左右する購入時期

 2016年末時点で純資産総額の大きい主な毎月分配型ファンドについて、3年前に購入した場合と1年前に購入した場合に分け、受け取った分配金に占める特別分配金の比率、特別分配金の購入元本に対する比率、分配金合計額、および分配金を現金で受け取った時の投資リターンを一覧にした(表A)。

 1年前に購入した場合は、残高上位20本中12本と、分配金全額が特別分配金というファンドが目立つ。例えば、純資産総額最大の毎月分配型投信「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」を1年前に購入した場合は分配金全額(1140円)が特別分配金となり、購入元本(5814円)の19.6%が取り崩された。

 これに対し、同ファンドを3年前に購入すると、合計分配金3280円のうち27.5%にあたる903円が特別分配金で、購入元本(5456円)の16.6%を払い戻したが、残り2377円(分配金の7割強)は普通分配金であり、分配金の多くがファンドの運用成果による収益の還元だったことを示している。

 このように、同じ投信でも特別分配金の多さは購入時期で大きく変わる。

 具体的には、分配金が普通分配金と特別分配金のどちらになるかは、分配金を支払った後の基準価格と支払う前の個別元本の大小比較、および分配金額で決まる。個別元本というのは個々の投資家の購入基準価格のことだ。

 分配金支払い後の基準価格が個別元本を上回っている場合は、収益を基に分配したことになるので、分配金の全額が普通分配金に当たる。一方、運用悪化で基準価格が下落し、分配金支払い後の基準価格が個別元本を下回った場合には、元本を取り崩して分配金したことになり、分配金の一部または全額が特別分配金になる。特別分配金が出るたびに、個別元本は特別分配金の額だけ減額更新していくのは注意点だ。

 「フィデリティ・USリート・ファンドB」を例にとり、購入時期の違いで特別分配金の多さが違ってくる理由を図示した(グラフB)。

 3年前に購入した場合、1年前までは分配後の基準価格が個別元本を上回って推移したため、分配金の大半が普通分配金だったが、1年前に基準価格が個別元本を割り込んでからは特別分配金が目立っている。

 これに対し、1年前に購入した場合は基準価格が個別元本を上回ることは一度もなく、分配金全額が特別分配金になった。

■分配金の原資はすべて基準価格の中

 毎月分配型投信に限らず、購入後に値上がりし続けて支払われた分配金でない限り、分配金の一部や全額が特別分配金となるのは、追加型株式投信の仕組み上、避けられない。

 より重要なのは、普通分配金にせよ特別分配金にせよ、その原資は基準価格の中にあり、他から補充されることはなく、分配金を出すと基準価格はその分下がるという認識だ。そのため、分配金を現金で受け取り続けていると、基準価格の上昇局面では複利効果が剥落して投資リターンが大きく減りかねない。

 「フィデリティ・USリート・ファンドB」の基準価格は金融危機後の09年3月に最安値をつけた。そのタイミングで同ファンドを購入した場合の基準価格(分配後)、現金で受け取った分配金を足し込んだ基準価格、分配金を受け取らずそのまま再投資した場合の基準価格の3つの推移を比較してみた(グラフC)。

 基準価格は購入時点での3688円から16年末の4666円まで約1.3倍に上昇。この間の分配金はすべて普通分配金だ。分配金は合計8615円に上るので、分配金を足し込んだ基準価格は購入価格の3.6倍の1万3281円に上昇する。これに対し、分配金を一切受け取らなかった場合に相当する分配金再投資基準価格は、8年弱で約2万1681円と5.9倍近くまで上昇し、分配金足し込み基準価格の1.6倍になった。分配金を受け取らず、運用に回し続けた時の複利効果の威力がよくわかる。

 もっとも、特別分配金が多いからといって元本割れとは限らない。表Aを見ると、特別分配金の対分配金比率が60%以上でも、足元の基準価格の急回復などを背景に、3年間のリターンが2桁のファンドもある。ただ、特別分配金の支払いが長く続くのは、分配金を払い過ぎているという不自然な状態に違いなく、分配金の引き下げにつながりやすい。

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