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アライヘルメット 手作りのこだわり徹底、高品質生む ヘルメットの科学(3) 北岡哲子日本文理大学特任教授

日経テクノロジーオンライン

2017/2/27

・アゴひも、シールド取り付け

 最後に、アゴひも、シールドベースなど、さまざまな部品を取り付ける。

 アゴひもは命を守る重要なパーツだ。簡単に外れてはならないので、機械を使ってリベットでかしめる。アゴひもには、静荷重による負荷や動的荷重による衝撃を加え、伸びしろを計測する試験を実施する。アライヘルメット独自の認定制度を設けており、認定者のみが作業に当たっている。

 シールドベース(取り付け部)を帽体に固定していく(図14)。シールドの開閉時の動き、ロックの掛かり具合が適正となるよう、一つひとつ確かめながら作業する。

図14 シールドベース取り付け工程。シールドの動きが適正となるよう、一つひとつ確かめる

 以上の他、アゴパッドや耳パッド、通気ダクト、その他細かいパーツを組み付ける。最後に「Arai」マークを貼る(図15)。簡単な作業に見えるが、曲面の上に水平になるように貼らなければならないので、スキルが必要だ。

図15 「Arai」マークの貼り付け。これも熟練の必要な手作業

 そして、最終検査。ヘルメット個々の質量はもちろん、内装はズレることなく取り付けられているか、シールドを適切に開閉できるかなどを確認する。SNELL規格のラベルやその他の規格ラベル、最後に検査員の名前の入った検査ラベルを貼って終了する。作業票には工程ごとの作業者の記録が残り、責任の所在が明確になる。

 こうして、1個のヘルメットができあがる。最終検査後、箱詰めされて出荷を待つ(図16)。

図16 出荷を待つヘルメット完成品

■機械ではなく手づくりで思いを込める

 今回、3カ所の工場で作業するスタッフの働きぶり、仕事へ立ち向かう姿を拝見させていただいた。老若男女、多くの従業員の気構えをこれだけひしひしと感じられる会社は、貴重な存在といえる。

 ここまで紹介した全ての工程で熟練した技が必要だ。例えば、帽体の厚さの検査にしても、目視で厚みの違いにアタリをつけられる目利きになるのに、数年かかるという。各担当者が、「これは自分しかできない」という作業に対する自信と誇りを持つことができれば、面倒な作業も厳しい確認検査も「やってやろう!」という気持ちになる。

 上記の工程の説明ではアゴひも取り付け工程でしか触れなかったが、帽体成形工程においてもアライ社内の認定制度があり、有資格者のみが従事する作業だという。独自の認定制度を制定することは、やる気、責任、高いテンションの維持にもつながり、従業員それぞれが自分の意志でレベルアップしたいと努力する集団を形成する上で、とても効果的だ。

 アライヘルメットでは、普通の企業で定年になる年齢になっても、多くの方が働き続ける。匠の技は年齢を重ねなければ習得できないからだ。離職率が大変低いのも納得できる。

 伝統を守りながらも、最先端のテクノロジーを用いてより高い安全性をどこまでも追求する。あえて機械ではなく、手作りに思いを込め、効率は考えない。その泥臭さく誠実な態度こそが、ものづくりを支える日本人の素晴らしさであると実感した。

(次回に続く)

(日本文理大学特任教授 北岡哲子)

[日経テクノロジーオンライン2016年11月29日の記事を再構成]

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