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給料が一気に倍!? 制度が後押し レア人材の市場価値 今ドキ出世事情~あなたはどう生きるか(21)

2017/1/31

PIXTA

 たくさん残業した係長と、その上司である課長の給与水準はほぼ同じ。そんな構造があるのは、従業員の生活を守るための「結果平等」の社会構造があったからでした。

 しかし、日本でも転職があたりまえになるにつれ、結果平等の仕組みが消えつつあります。その原因は、標準的な家庭が減ってゆくとともに、様々なタイプのレアな人材が可視化されるようになっているためでもあります。

■生活を守るために生まれた後払いの給与

 とある会社が次のように考えたとします。あなたはそれについてどう思うでしょう?

 40才くらいの社員は、子どもが大きくなってきているだろうから生活費もかかるだろう。学費だってたくさん必要だ。そして子どもが独立するのは50才過ぎくらいだろうから、若いころのようにバリバリ働けなくても、主婦の奥さんと、大学生の子ども二人を養えるくらいの給与は支払ってやろう。

 良い会社だ、と思う人が多いかもしれません。では「だから」という前提で、会社が次のように考えたとしたらどう思うでしょうか。

 40代で仕事ぶりに関わらず給与をたくさん払うんだから、その分若いうちは低い給与でガマンしてもらおう。子どもが小さければそんなに生活費もかからないだろう。
 特に20代くらいだと、まだ親許から通う人もいるだろうから、稼いでくれた分よりも少なくても良いだろう。親元から通えないのなら独身寮に住ませればいいし。ただ、給与が安すぎると他の会社に行かれてしまうだろうから、せめて横並びくらいの給与水準にはしておこう。

 これはつまり、「給与の後払い」の仕組みに他なりません。

 このような考え方は、実は多くの企業での常識でした。そして厚生労働省の賃金構造基本統計調査のような統計データを見る限り、まだ多くの日本企業ではこのような考え方が続いています。

 これをグラフにしたものが次のようなものです(人事関係の方にしてみれば、古臭さを感じると思いますが、少しおつきあいください)。

 このグラフは、戦後から高度成長期を経て広まった、日本での一般的な賃金(給与)と貢献度の関係を示しています。そしてこのグラフは3つの期間で構成されています。

 第一の期間は、入社からしばらくの間。新卒で仕事はできないかもしれないけれど、給与はそれなりに払いますよ、という期間です。

 第二の期間は、逆に貢献度が賃金カーブを上回っている期間です。仕事はどんどん覚えて会社に貢献してくれるのですが、給与は増え方はゆっくりです。

 そして第三の期間では、再び賃金カーブが貢献度を上回ります。今の貢献ではなく、過去の貢献に対して高い給与を支払う構造です。

 2000年台初頭くらいまでは多くの会社で定年まで給与が増え続けていたのもこういう考え方が背景にあったためでした。

■レア人材の顕在化が結果平等を打ち消していく

 しかし、現在多くの会社で、このような賃金カーブが消えています。

 第4回「50代後半で年収が130万円も下がる業界はどこだ?」でも示したように、業界によっては年齢によって給与が大きく下がるようになりました。また、そもそも生活できるだけの給与を支払おうとしない業界も増えてきました。

 これらは給与を下げる方向での変化なのですが、実は増やす方向の変化も起きています。

 その原因がレア人材の顕在化です。

 典型的なレア人材は、専門性、実績の2つの要素で定義することができます。

 現在であれば、人工知能開発ができる専門性を持った人材はとても希少です。そしてその人材が、実際に機能する人工知能開発を行った実績があるとすれば、さらに希少性が増します。

 希少性は技術領域に限りません。たとえば買収・合併(M&A)は当然の経営手段になっていますが、難しいM&Aを実現し、かつその後の成長まで達成した実績となればこちらも極めてレアです。起業から新規株式公開(IPO)までを実現していたり、あるいは大規模倒産に巻き込まれながらも清算を完了させたりした経験もとてもレアなものでしょう。

 時代に関わらずレアな人材は存在していました。産業革命の時代であれば、蒸気機関を設計できる人はレア人材だったでしょうし、さまざまな技術発展に伴う新技術に関わる人材は常に希少性を持っていました。

 より重要な変化は、それらの人材についての情報が入手しやすくなっているという点にあります。情報が瞬時に伝わり世界中に届くようになったことで、どこでどういう人材が求められているかがわかりやすくなりました。同時に、どこにどういう人材がいるのかということも格段にわかりやすくなっています。つまり、レアな人材についての労働市場が広がりつつあるのです。

 そんな中で、人材を求める企業側は、レアな人材を確保するために様々な仕組みを採用しています。その中でも顕著な仕組みが、「逓増型」の給与の仕組みです。

■レアカードの価値はおよそ倍になっていく

 最近、弊社で設計した逓増型の給与の仕組みは、グラフにするとこうなります。

 希少性が増すとともに、財の価値は増えます。その増え方は、たとえば50%の確率でしか手に入らないものであれば、2倍前後の価値になるでしょう。人材について定量的な判断は難しいのですが、少なくとも、「みんなの昇給は1万円だけれど、君はすばらしい実績をあげてくれたから2万円昇給します」ということでは不十分なのです。

「みんなには年収500万円を払っているけれど、君は来年から800万円にしましょう。来年もさらに活躍してくれたら1200万円にすることも考えます」という仕組みが必要になっているのです。

 比較的私たちが耳にしやすい例で言えば、少々極端ですが、日産のカルロス・ゴーン氏の年収が20億円を超えているという話があります。わずか2年で2兆円の負債を返済し、その後も業績を高め続けている実績を考えれば、20億円の年収もまだまだ安すぎると考えられるかもしれません。

 今の私たちがさらに成功するためには、自分自身の持つ専門性と実績について、希少性の観点からの確認と研鑽がより重要になっているのです。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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