マネー研究所

もうかる家計のつくり方

家計の司令塔は1人より2人 夢と目的を共有 家計再生コンサルタント 横山光昭

2017/1/25

PIXTA

 「夫が家計管理をしているのですが、私も参加してお金をためたいのです」と相談に来たのは、主婦のCさん(39)。以前はCさんがしていた家計管理を、今は夫が担当していて、まったくタッチさせてもらえないそうなのです。

 Cさんのご家族は会社員のご主人(38)と小学3年生の娘さん、幼稚園の息子さんです。Cさんもパートに出ていますが、お金に関してはすべて夫が管理しており、Cさんは支出の流れについて把握していません。

 家計管理を交代したのは5年前のこと。Cさんが管理していたときに貯蓄もやりくりもご主人が期待していたようにできず、ご主人から「もうお前には任せておけない」と言われたそうなのです。バトンタッチ以降は、毎月夫の給料から10万円だけもらい、日常のやりくりだけを担当することになりました。

 はじめはお金のことを気にしなくてよくなり、「楽になってラッキー」という感じでしたが、次第に将来のことが気になるようになってきました。それに、家計に関わることができないことに対する物足りなさも感じ始め、もう一度、自分も責任を持ちたいと思ったそうなのです。

 ですが、家計管理を交代した時のわだかまりがあり、今でも夫とはお金の話がしにくい状況だといいます。そのやり取りの様子を聞いていると、ご夫婦間で意思疎通がうまくいっていないことが伝わってきます。

 定期的に面談に通ってもらい、家計や支出の把握、お金の知識をつけること、ムダ支出の削減などに取り組みながら、同時に「ご夫婦でとにかく話をすること」を提案しました。ご夫婦の心の距離を近づけるには、それが一番効果的です。夫婦はそもそも一番近くにいる他人。気持ちをきちんと伝えないとわかり合えないことがたくさんあります。ここが何より最優先事項だと思いました。

 「住宅購入をどうする?」「老後はどこでどう過ごしたい?」「教育についてどう考える?」「車は持つ? 持たない?」「保険はどうする?」など、おおざっぱでいいので将来に向けた話題を中心に話すことをお勧めしました。具体的な金額の話をするより、このほうが目標や生き方、価値観も理解しあえると思ったのです。

 ご主人は最初は、妻が急に夢の話や将来の話をするようになって驚いていたようでした。ですが次第に自分自身もそれを楽しむようになっていったようです。

 自分の考える将来像や夢など、生き生きした表情で話し「その実現のためにはどうしたらいいのか」といった具体的なことも話したそうです。夫婦の距離はぐんと近づいたようでした。そこで、話した夢を実現させるために家計の見直しをスタートしました。

 共に夢に近づくためにやりたいことは、「極端な節約はしない。教育費は勉強よりも情操教育に力を入れたい。家族で楽しい時間を共有できる娯楽費は多めに。今は安めの賃貸住まいでいいから、お金をためて50歳を過ぎたら中古マンションを購入したい。あまり乗らない自動車はカーシェアにしよう」。かなり具体的です。そして、2人で一緒に家計を管理するようになりました。

 当時住んでいた賃貸住宅がちょうど契約更新の時期だったので、思い切って家賃の安いマンションに引っ越しました。敷金などで多少出費がありましたが、貯蓄から払いました。

 食費は食事のメニューを冷蔵庫の中を見ながら家族で相談して決めるようになったため、無駄な買い物がなくなったうえ、食材もきちんと使い切れるようになりました。自動車は夫の意見通り手放しました。家族での外出やショッピングで自動車を使うときはカーシェアを利用しています。娯楽費は夫の希望通り、家族で楽しむ機会を増やしたため、少し支出が増えましたが許容範囲です。このようなことを、私のところに面談に来るたびに、非常に明るくいい笑顔で話すようになりました。

 こうして、Cさん一家の家計は変化しました。Cさんが家計管理をしていたときは30万円ほどの貯蓄を保つことで精いっぱいでした。夫に交代してからは、毎月1万円、夏冬ボーナスでそれぞれ10万円ほどの年間約30万円を貯蓄できていました。

 いまは、ご夫婦で無理な節約をせずに貯蓄をつくるという目標をかかげ、毎月4万7000円、ボーナスから各13万円、合わせて年間82万円以上を貯蓄できるようになりました。今までよりもかなり貯蓄額を増やせました。

 家計の改善をするには、「闇雲な節約」だけではうまくいきません。どうしたいのか? どう生きるのか? ということを大事な人と話し、共有するという当たり前のことをしっかりやっていきたいものです。

 Cさんご一家のように目的や生き方を見据えることによって、しっかりと“楽しく”動けるようになるのかもしれません。家計管理をうまく進めるためのスパイスは、「楽しく」だと思うのです。やはり、うまくいっている人は楽しんでやっているのです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は2017年2月8日付の予定です。

横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計180万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)


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