不動産・住宅ローン

転ばぬ先の不動産学

住宅購入 右手に「夢」、左手に「そろばん」を 不動産コンサルタント 田中歩

2017/1/25

PIXTA

 引っ越しシーズンが近づいてきました。この時期までに家を買おうという人も多いのではないでしょうか。家を探すときは物件サイトなどで地域や沿線を絞り、買えそうな価格をイメージして検索するというのが一般的です。

 ところで、「買えそうな価格」をどうやって決めていますか? 毎月のローン返済額をイメージして「買えそうな価格」を計算しているという人が多いでしょう。でも、実はそんなに単純な話ではないのです。気を付けないと、あとで金銭的に大きなしわ寄せが来ることもあるのです。

■住宅以外に様々な費用

 家を買うときにかかる費用には、住宅購入価格のほかに以下のような費用があります。

◇売買契約書に添付する印紙税、不動産仲介手数料(中古住宅の場合)、固定資産税などの精算金、所有権移転登記費用

◇ローン契約書に添付する印紙税、ローン事務手数料、ローン保証料、団体信用生命保険料、火災保険料、抵当権設定費用

◇不動産取得税、固定資産税、都市計画税、引っ越し代、家具などの購入資金など

 これらの費用は中古住宅の場合、住宅価格の8~10%程度かかります。この費用を加味しておかないと、後々支払いがきつくなります。

 新築住宅の場合は、仲介手数料(購入価格の約3%)はかかりませんので、購入価格の5~8%程度と考えておくとよいでしょう。新築マンションは修繕積立基金も支払う必要があります。

 気の利いた不動産業者ならば、すぐに調べて教えてくれますので聞いてみるとよいでしょう。

■購入後かかる費用に注意

 購入後は毎月のローン返済のほかに、固定資産税と都市計画税がかかります。税額がどのぐらいになるのか、事前にしっかり説明されるケースは少ないので、不動産業者に聞いておきましょう。都内の中古住宅ですと年間10万~15万円程度、新築ならもう少し金額が上がります。

 マンションの場合は管理費と修繕積立金、駐車場使用料もかかります。修繕積立金は徐々に上昇しますので、ローン返済期間中にどの程度まで上昇するか予想しておくことも大事です。長期修繕計画案という資料を不動産業者からもらえば、ある程度の見積もりをすることが可能です。

 戸建ての場合、修繕積立金はかかりませんが、一切の修繕をしないで済むということではありません。15年に1度くらいは、屋根や外壁の防水工事を行わないと劣化が進み、思った以上に多額の修繕費用を支払わなければならなくなることがあります。こうした防水工事は建物のサイズや形状によって異なりますが、100万~150万円程度かかります。

 修繕積立金があるマンションの場合、修繕費は気にしなくてよいかというとそうではありません。マンションも戸建ても部屋の内部にある設備機器や配管などの修繕費用は自己負担です。

 中古住宅の場合は給湯器の交換時期が思ったよりも早く訪れることがあります。給湯器の交換サイクルは10~15年程度といわれていて、給湯器のサイズにもよりますが交換費用は15万~25万円程度かかります。

 こうした中長期にわたる修繕費用については、購入時の建物や設備の劣化状況をホームインスペクターなどの専門家に調査してもらい、いつ頃、どの程度の費用がかかるのか事前にチェックしておくと安心です。

■収入と支出のバランスを確認

 このように、住宅を購入すると、住宅購入価格以外にいろいろとかかるものです。働いて得たお金を住宅にばかり偏って拠出し続けるというのでは、後々困ったことになるかもしれません。人生には住宅資金以外にも、大きな支出があります。その一つが子どもの教育資金です。

 修繕積立金が上昇し、設備機器を交換しなければならない時期に教育費が思った以上にかかると、ともすると収入以上に支出が増え、赤字になることもあり得ます。ここで預貯金を取り崩すと老後資金に影響を及ぼします。昨今では長寿命化が進んでいることもあり、従来以上に老後資金の蓄えについて考慮しておく必要があるといわれています。

 住宅資金、教育資金、老後資金のバランスについては、ファイナンシャルプランナーなどに一生の資金収支をシミュレーションしてもらうと無理のない住宅購入が可能となります。家を買うときは夢やロマンを追いつつも、冷静なそろばん勘定を忘れてはならないのです。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。

不動産・住宅ローン