17年スマホ占う3つのカギ 格安、決済、次世代USB
マイクロソフト事情に詳しく、海外の展示会を飛び回るITジャーナリスト山口健太氏。今年2017年をどう予測するのか。
【1】日本のスマホ市場は「海外格安メーカー」が台頭
【2】Androidスマホでも新たなモバイル決済が広まる?
【3】次世代USBがスマホに本格普及
「海外格安スマホ」が日本メーカーを脅かす
2015年には「格安SIM」「格安スマホ」という言葉が一気に広まり、2016年には競争が激化。MVNO(仮想移動体通信事業者)各社が大手キャリア顔負けの施策を採り入れ、体力勝負を繰り広げている。
格安SIMに組み合わせられるため日本市場で急速に存在感が高まっているSIMフリースマホで、最も注目したいのが中国・ファーウェイだ。2万円前後と手頃な価格の「HUAWEI P9 lite」は、いまや格安スマホの代名詞的な存在。ライカと共同開発したデュアルカメラが特徴の「HUAWEI P9」は、写真の画質にこだわるユーザーをうならせている。さらに2016年12月13日には、大画面のフラグシップ機「HUAWEI Mate 9」を日本で発表し、同16日に発売した。
近年、ファーウェイ以外にも、「ALCATEL」や「ZTE」「モトローラ」など多数の海外ブランドが日本で製品を発売してきた。とはいえ、それらはあくまでSIMフリースマホ市場での話。大手キャリアを含めた日本のスマホ市場全体で見ると、まだまだシャープや富士通にも根強い人気があったといえる。
だがBCNランキングの調査では、2016年に日本のスマホ市場全体でファーウェイのシェアが4位に上昇、3位のシャープに迫っているという。その上には、Xperiaを擁する2位のソニーモバイルと、iPhoneで圧倒的なシェアを誇るアップルしか残っていない状況だ。この勢いが続けば、ファーウェイをはじめとした海外メーカーが2017年、日本の格安スマホ市場をリードしていくことになりそうだ。
「Android Pay」は普及する?
2016年は日本のモバイル決済も大きく進展した。アップルの「iPhone 7」が日本で普及するFeliCaに対応し、10月からApple Payが日本でも始まった。SuicaとiD、QUICPayに対応したことで、日本全国でiPhone 7やApple Watch Series 2を使ったモバイル決済ができるようになった。
では、2017年には何が起きるのだろうか。iPhoneの次は、Androidでのモバイル決済の普及にも期待したい。
アップルの「Apple Pay」に対抗するグーグルの「Android Pay」は、2016年12月13日より日本でもサービスが始まった。だが、その対応機種はおサイフケータイ搭載のAndroid端末に限られ、利用できる電子マネーも「楽天Edy」だけと、Apple Payに対する特別な優位性は感じられない。今後、専用チップが不要の「HCE」(Host-based Card Emulation)に対応し、海外メーカー製を含めたAndroid端末を広くサポートできれば話は別だが、現時点ではApple Payの後追いになりそうだ。
一方、モバイル決済の世界で個性的な存在が、サムスンの「Samsung Pay」だ。特徴は、海外で普及するNFCだけでなく、磁気カードとしても使える点にある。クレジットカードをスライドさせて読み取る端末にSamsung Payを設定したGalaxy端末を近づけるだけで、決済ができてしまうという画期的な技術だ。店舗側も決済端末を新たに導入する必要がなく、負担が小さい点も優れている。
2016年には日本国内でも発売予定だった「Galaxy Note7」が発火騒ぎで生産終了になるなど、大きくつまずいたサムスンだが、世界各国に展開を進めるSamsung Payの日本上陸があれば、再び存在感を取り戻せる可能性がある。
一方、楽天の「楽天ペイ」は国内で利用できる場所はまだ少ないものの、中国で普及するQRコード決済を採り入れ、訪日外国人の需要を取り込もうとしている点が面白い。モバイル決済を取り巻く2017年の動きは、海外勢だけでなく国内勢の動向にも注目したい。
裏表がない「次世代USB」が表舞台へ
次世代のUSB規格「USB Type-C」は、2017年からいよいよ本格普及が始まりそうだ。2016年には、大手キャリアのスマホも、ソニーモバイルのXperiaシリーズなどハイエンド端末が先行してUSB Type-Cの採用に踏み切った。
初心者向けやシニア向けスマホはまだMicroUSBにとどまるが、いずれかのタイミングでUSB Type-Cへ移行することになるだろう。
USB Type-Cの特徴は、コネクターに裏表がないことに加え、ディスプレー信号や急速充電など、さまざまな拡張性を秘めたものになっている点だ。アップルの新型MacBook Proは、インターフェースをUSB Type-Cをベースとした「Thunderbolt 3」だけに絞り込むという斬新なデザインが注目を浴びた。東芝の最新Dynabookも同様のデザインを採用するなど、Windowsパソコンにもこうした動きは広がりつつある。
基本的にUSB Type-Cへの移行は歓迎すべき動きといえるものの、どんなに素晴らしいインターフェースでも移行期には面倒が付き物だ。これまでパソコンはUSBでおなじみのtype-Aコネクター、スマホなどのモバイル端末側はMicroUSBと統一されてきたものが、両者がUSB Type-Cに置き換わっていくと、端子の組み合わせは多岐に渡って行く。さらにケーブルや変換アダプターには品質の悪いものも多数出回っているというから厄介だ。
まだ一部のパワーユーザーへの普及にとどまっているUSB Type-Cだが、2017年には広く一般ユーザーに普及することは間違いない。混乱が起きることは必至と思われるので、あらかじめ予備知識を仕入れて準備しておきたい。
(ライター 山口健太)
[日経トレンディネット 2017年1月5日付の記事を再構成]
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