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K-POP再ブームへ3つの強さ KARA仕掛け人が語る

K-POP新世代ファイル(10)

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NIKKEI STYLE

KARA、少女時代、SHINeeほか、韓国のメジャーアーティストの音楽を日本市場に投入し続けているユニバーサル ミュージック。2016年末の契約アーティスト数は約20組で、日本で最も韓国アーティストを抱えるレコード会社になっている(表)。SHINeeが出演した16年12月14日の『2016 FNS歌謡祭』など、韓国アーティストがテレビ出演する例は今でもある。しかし、10年にガールズグループの4MinuteやKARA、少女時代がユニバーサルから続々デビューし、日本でK‐POPブームが巻き起こった当時に比べると、盛り上がりに欠ける現状といえるだろう。

なぜユニバーサルは、K‐POPアーティストと契約し続けるのか。KARAブームを作り出した実績を持ち、今でも韓国アーティストの発掘を続ける、ユニバーサル ミュージック 執行役員の中村 卓氏にK‐POPの再ブームを見据えた戦略と17年の展望を聞いた。

――K‐POPというジャンルが日本に定着しましたね。

KARAと契約した10年当時はK‐POPアイドルという言葉もなくて、周囲は「韓国の女性アイドルグループのCDなんて、誰が買うの?」という反応でした。あまり期待されていなかったんです(笑)。でも、私はKARAのパフォーマンスを見たときに、頭をガツンと殴られたような衝撃が走って、「このコンテンツには日本でブームを起こす強さがある」と思いました。

当時、韓国では少女時代、ワンダーガールズがトップで、KARAは3番手でした。実は同じ頃、社内の別のチームが少女時代のデビューを準備していたこともあり、先に仕掛けようと、それも、少女時代とかぶらない打ち出しにしようと思いました。

KARAの魅力は、1人ひとりのキャラクターが立っていることでした。「女神のギュリ」「ジャイアントベイビーのジヨン」など、当時の日本のアイドルが言わないような、斬新なキャッチコピーを持っていた。歌も踊りもかわいいし、コンテンツを発信する"角度"が新鮮なので、世の中をびっくりさせられるだろうなと。

少女時代はSMエンターテインメント所属で、日本で実績のあるBoA、東方神起を先輩に持つカリスマグループです。スタイリッシュで憧れの存在になることは分かっていましたので、KARAは180度逆を行って「お茶の間のアイドル」を目指したんです。

パワーアップしている3つの強さ

――KARAは『NHK紅白歌合戦』に出場、東京ドーム公演も果たしました。しかしその後、日韓関係の冷え込みでブームもしぼんでしまいました。

でも実は、この5年来、ユニバーサルはK‐POPアーティストのデビューやリリースを変わらず続けてきました。SHINeeが『2016 FNS歌謡祭』に出演しましたが、年末の地上波の番組にK‐POPアーティストが出るのは久しぶりです。状況はまた変わってきているように感じています。

新世代のアーティストも出てきていて、K‐POPのコンテンツとしての強さは逆にパワーアップしていると思っています。K‐POPの強さは、(1)歌やダンスのスキルの高さ、(2)層の厚さ、(3)自己PRのうまさ、です。

日本ではアイドルが「会える存在」として、どんどん身近になりました。ファンがアイドルの成長の過程を一緒に楽しむスタイルが定着したと思います。これに対し、韓国の音楽界では、新人は各事務所の練習生としてスタートするシステムが定着しているので、どんなに若いアーティストでも、厳しいトレーニングを経ないとデビューできません。韓国のショーケースに新人発掘に行くと、その時点で、ダンスや歌のスキルがかなりの完成度にまで高まっています。スタートポイントが高いのが強みですね。

次に、層の厚さについてですが、日本は音楽業界の歴史も長く、ポップスからロック、演歌までとても幅広いジャンルのアーティストがいます。これに対し、韓国のショービズ界では、音楽というと、R&B系、ヒップホップとダンスミュージックが主流です。ここでの成功をみんなが目指すので、とても層が厚い。今や、日本人メンバーがいるグループも増えていますよね。

今、韓国では新世代が台頭してきています。仮に、東方神起やBIGBANGを男性グループの第一世代とするなら、第二世代は、SHINee、BEAST、2PMそして第三世代に、BTOB、B1A4、とかINFINITE、でしょうか。そして今、その次の第四世代が出てきています。例えば、防弾少年団、iKON、SEVENTEEN(日本未デビュー)、GOT7がいますね。一方、女性グループでは、KARA、少女時代を経て、Apink、AOA(いずれもユニバーサル)。そして新しい世代に、TWICE、GFRIヨジャENDチング、(いずれも日本未デビュー)がいる。この層の厚さはすごいと思います。

ファンが増え、再ブームの可能性も

そして、自己PRのうまさがさらにK‐POPアーティストに華やかさを加えます。みんな、スターになるのに必ず必要な「自分をもっと見てくれ、自分がナンバーワンだ」という気持ちを強く持っています。韓国の男性アイドルは、「白馬の王子様」みたいな打ち出しでも照れずにやれます。そこが、女性ファンの擬似恋愛願望にぴったりとはまるんだと思います。

この3年~4年、K‐POPがマスメディアに拾われない時期がありましたが、こうしたコンテンツの強さがあるので、見たり、接するチャンスが増えれば、まだファンは増えると思っています。

弊社社長がよく話す、アーティストとサインするときの3大原則があるのですが、邦楽も洋楽もアーティストや作品の力を基に契約しています。K‐POPもこの例外ではありません。(1)A&Rが、そのアーティストに対し、強い情熱を持っていること、(2)ドーム公演、セールス100万枚、または100万ダウンロードの可能性が見えること、(3)年末恒例の音楽番組に出演を目指せるスター性があること、です。

――K‐POPはファンの若返りが進み、CDを買わない層も増えていると思いますが…。

確かに、CD全盛から、ストリーミングの時代になっていますね。でも、状況はKARAブームのときも同じでした。ファンは、CDだけでなく、ケータイや動画配信サイトでもKARAの音楽を聴いていたんです。ただ、今に比べて、ストリーミングの状況も悪くて、聴く環境が整っていなかった。そこで『ミスター』ではストリーミング音楽をイヤホンで聴く層にも聞きとりやすいように日本語の歌詞、発音に徹底的にこだわりました。

当時、K‐POPは、クオリティーの高いPVによる「画の付いた音楽」で注目されましたが、KARAについては、歌のクオリティーにこだわったこともヒットにつながったと思っています。

今や、ファンも質の高いPVには慣れてしまっていますし、もう一度原点に帰って、ここで再び、K‐POPも歌で勝負する時代だと思っています。2017年には、新たなアーティストも加わる予定です。楽しみにしてください。

(日経エンタテインメント! 白倉資大)

[日経エンタテインメント! 2017年2月号の記事を再構成]

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