マネー研究所

Money&Investment

銀行手数料ゼロ目指す 優遇条件引き上げに注意

2017/1/22

 ATMで現金を引き出したり、他の銀行口座などに振り込んだりする際にかかる手数料。貸し出しの伸び悩みなどを背景に手数料を引き上げたり、無料になる条件を厳しくしたりする銀行が増えている。不用意に利用すると利息が吹き飛びかねないだけに、手数料をゼロにする工夫をしよう。

 「条件を慌てて確認しました」。こう話すのは東京都の男性会社員Aさん(39)。正月明けの最初の週末、みずほ銀行のATMで現金を引き出したところ、時間外手数料が無料になる会員特典の適用条件を変えたとのメッセージが操作画面に流れたからだ。運良く変更後の条件も満たしていたので負担せずにすんだが「口座がある他の銀行も確認したい」と話す。

 時間外手数料は自分の口座がある銀行(自行)のATMの場合、平日の夜間・早朝(午後6時~午前8時45分が一般的)と土日祝日に利用するとかかる。多くの銀行は108円か216円に設定しているが、大手行は通常、一定の取引条件を満たせば無料になる会員特典を設けている。

■残高条件引き上げ

 他行あての振込手数料(自行ATMでカード利用の場合、216~432円)も無料になる銀行が多い。会員特典の対象になる条件としては、円預金など金融商品の預かり資産残高が代表的だ。みずほ銀は昨年12月、残高の最低条件を10万円から30万円に引き上げた。

 手数料体系の見直しはみずほ銀だけではない。大手行ではゆうちょ銀行が10月、ATMを使った自行口座間の振込手数料を月4回目以降は1回123円と有料化。従来通り無料なのは月3回までに限った。三井住友銀行も預金残高が10万円以上なら無料だったATMの平日時間外手数料を1回108円にした。

 インターネット専業銀行や地方銀行でも相次ぐ。じぶん銀行は従来、口座を開設すればだれでも月3回までコンビニATMの引き出し手数料が無料だったが、11月から取引条件に応じて段階的に無料回数を設定。月2回~11回にした。住信SBIネット銀行も段階的な仕組みを導入している。地銀では東邦銀行、大東銀行、宮崎太陽銀行が振込手数料を見直した。

■融資の環境悪化

 銀行が手数料体系を見直す背景にあるのは融資事業の環境悪化だ。全国銀行協会の預金・貸出金速報によると、15年度末時点の預金から小切手などを引いた実質預金は679兆2615億円と前年度末比4%増えたが、貸出金は469兆7023億円と同2.6%増にとどまった。企業などの借り入れ需要が低下しているためだ。日銀のマイナス金利政策で有価証券などの運用が苦戦していることもあって、他の収益源を長期的に育てる狙いがある。

 1回当たりの手数料は少額だが、預金者にとって負担は小さくない。大手銀行の普通預金金利は現在、年0.001%。100万円を1年間預けても利息は10円しか付かないからだ。無駄な手数料は払わないようにしたい。

 有力な方法は会員サービスや優遇の対象になる取引条件を満たすことだ(表参照)。例えば預かり資産残高の基準なら10万~30万円以上が多く、リタイア世代や一定の年齢以上の現役世代ならハードルはさほど高くなさそうだ。

 ただ資産残高が多くなるほど優遇内容が拡充する例は少なくないため、預金口座が分散しているなら集約するのが選択肢だ。例えば三菱東京UFJ銀行では残高が「10万円以上」から「30万円以上」になると、提携先のコンビニATM利用手数料が月3回まで無料になる。

 資産残高以外の条件を満たせば、優遇対象になる銀行も多い。三井住友銀は給与や年金の受取口座に指定すれば適用され、三菱東京UFJ銀はインターネット通帳に切り替えるだけで対象になる。みずほ銀は25歳未満の大学生や専門学校生などの学生なら、専用サイトを通じて登録するだけですむ。

 ただし優遇策の適用を目的に必要性の低い取引を利用しては本末転倒だ。外貨預金や外国為替証拠金(FX)取引、カードローンの残高などを条件に加えている銀行もある。「こうした取引で被った損失や支払った利息が手数料の優遇分を上回っては元も子もない」とファイナンシャルプランナー(FP)の八ツ井慶子氏は指摘する。

 ATM手数料を節約する方法としてはデビットカードの利用も一案だ。原則として買い物などの代金を預金口座から即座に引き落とすため、現金をATMで引き出さずにすむ。残高以上の引き落としは一般的にできないので、無駄遣いを防ぐのにも役立つ。

 特に使い勝手が良いとされているのがクレジットカードの国際ブランドの加盟店で利用できるタイプで、大手行の多くが導入済みだ。最近では三井住友銀が16年10月、みずほ銀が12月から取り扱いを始めている。(藤井良憲)

■デビット利用で現金還元特典も
 デビットカードのメリットはATMで現金を引き出す手数料を節約できることだけではない。従来はクレジットカードに比べ特典が見劣りしていたが、利用額の一定割合を現金で還元するデビットカードが増加している。クレジットカード並みの還元率を提供する例もある。
 例えば三井住友銀行の「SMBCデビット」は毎月の利用額の0.25%分の現金を預金口座に振り込む。みずほ銀行が扱う「JCBデビット」は0.2%を現金還元する。ソニー銀行は預かり資産残高に応じて国内利用額の0.5~2%を還元している。最低でもクレジットカードで一般的な0.5%と同じ水準となっている。

[日本経済新聞朝刊2017年1月18日付]

マネー研究所新着記事