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マリナーズの本拠地シアトル ブルース・リーも活躍

イチローが歩いた街(2) スポーツライター 丹羽政善

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NIKKEI STYLE

イチローがマリナーズに移籍した2001年、チームがリーグタイ記録となる116勝をマークすると、シアトルのスポーツシーンは、全米でも一目置かれる存在となった。

スポーツタウンとして下地

鼓動が聞こえたのは1990年代半ば。売却、移転が噂されたマリナーズは任天堂の故山内溥氏の出資により九死に一生を得る。95年、ケン・グリフィーJr.を擁してプレーオフ初出場を果たすと、同時期、NBA(全米プロバスケットボール協会)のスーパーソニックス(現サンダー)も全盛期を迎えており、スポーツタウンとしての下地ができた。

イチローの登場は、そういう中で流れを象徴する現象となったのである。

もともとはカルチャータウン

ただ、それまでシアトルと言えば、音楽、映画といったカルチャータウン。今回はその軌跡をたどってみたい。

そのときまだ、そういうアパートだとは知らなかった。

95年秋。留学のためシアトルへ引っ越し、知り合いのオフィスに寝泊まりしながらまずはアパート探し。キャピトルヒルというエリアから歩いた。そこはライブハウスなどが集中し、グランジムーブメントの発祥地であり、それまでも、今もシアトルカルチャーの発信地だが、大通りから一歩入れば歩道が整理され、街路樹がみずみずしい緑の葉を茂らせる。初めてシアトルを訪れたその数年前、この雰囲気に触れたのがすべてのきっかけになった。

アパート探していたら

歩きながら、「FOR RENT(部屋を貸します)」、「VACANCY(空室あり)」などのサインを見つけたら、とりあえず「MANAGER(管理人)」と書いてある部屋を探してブザーを押す。運良く管理人がいれば、開いている部屋を見せてもらうということを繰り返しているとき、本当にたまたま、真ん中に小さな中庭があるコの字形の二階建てアパートを見つけた。

管理人の部屋を見つけてノックする。

「空いている部屋を見せてもらえますか?」

すると女性の管理人は、気持ちよく、「もちろん」。

後について入った部屋は1階の入り口正面。南向きで日当たりはよさそう。ただ、部屋の中は段ボールなどが無造作に置かれ、ひどい散らかりよう。引っ越し準備をしているのは分かるが…。なにより、トイレ、キッチンなど水回りの古さが気になったが、家賃は425ドル。魅力だった。

「9月いっぱいで出るけど、その後きれいにするから、入れるとしたら10月中旬よ」

ならば、それまでオフィスに泊めてもらって・・・と頭の中で算段していると、冷静に告げられる。「じゃあ、アプリケーション(申請書)を書いて」

賃貸アパート、相手の顔が曇った

アメリカでアパートを借りる場合、このアプリケーションが重要な意味を持つ。支払い能力があるのか、信頼できる保証人がいるか、素性がしっかりしているのか等々が問われ、多くのケースでクレジットカードの履歴まで調べる。

日本から留学などで来る場合、そのクレジットカードヒストリーが鬼門だ。来たばかりだから当然、アメリカのクレジットカードなど持っていない。クレジットカードの支払いを遅れずにしていますという実績は、アパートを借りる、あるいは家のローンを組むというときの決め手になるが、肝心のそれがないのである。

そうした事情を説明していると、明らかに相手の顔が曇った。"こりゃ、だめだな"と思った。「じゃあ、あなたが選ばれたら、連絡するわね」とは言われたものの、案の定、期限までに電話はなかった。

それでもなんとか大学近くのアパートが見つかって年が明けたころ、シアトルを舞台にした映画だといって、日本から来た友人が「シングルス」という映画を置いて帰っていった。後日、何気なくその映画を見ていて驚いた。

映画「シングルス」のロケ地だった

あそこじゃん!

主人公らが住み、映画のロケに使われていたのが、くだんのアパートだった。

その「シングルス」では、80年代後半から90年代前半のシアトルのストリートカルチャー、特にグランジロック、そのファッションが、色濃く切り取られている。

ローカル色が強いが、監督はシアトル郊外の街、ウドゥンビルに住むキャメロン・クロウ。彼にとっては日常を描いたにすぎない。生まれはカリフォルニアだが、10代の頃から「ローリング・ストーン」誌に寄稿するなど音楽シーンに造詣が深く、その原点を描いた自伝的な映画が、2000年に公開され、アカデミー脚本賞に選ばれた「ALMOST FAMOUS(邦題:あの頃ペニー・レーンと)」だが、シングルスでもその眼力がうかがえる。

全米の人気バンドに

映画に登場し、俳優マット・ディロンがリーダーを務めるバンドのモデルは、シアトル出身のバンド「パール・ジャム」であることは知られ、パール・ジャムのボーカル、エディ・ヴェダーらが出演しているが、彼らはまだ撮影を始めた頃、「ムーキー・ブレイロック」という奇妙な名前で活動するシアトルのローカルバンドにすぎなかった。それが92年9月の映画公開当時には、パール・ジャムとしてその人気が、全米規模を誇るまでに急騰していたのである。

ただ、裏話があり、「当初からパール・ジャムを起用するわけではなかった」と、後にクロウ監督は振り返っている。そもそもはアンドリュー・ウッドというシアトルの伝説的なボーカリストをフューチャーする構想だったが、ウッドがヘロインの過剰摂取で急死したため、プロットを変更しているうちに、ウッドの「マザー・ラブ・ボーン」というバンドのメンバーだったジェフ・アメントとストーン・ゴッサードらがその後作ったムーキー・ブレイロックというバンド、すなわちパール・ジャムを通した人と人との絆が主題になったそうだ。

脱線ついでにもう一つエピソードを紹介すると、ムーキー・ブレイロックというバンド名は、当時、NBAで活躍していた選手にちなんでいる。たまたまメンバーの手元にブレイロックのバスケットカードがあったことから名付けたとのこと。パール・ジャムのファーストアルバムのタイトルは「TEN」だが、それはブレイロックの背番号。そういう由来がある。

ロックのカート・コバーンも

さて、同じ頃、シアトルではグランジロックのカリスマが生まれた。世界の音楽シーンの流れを変えたとまで言われたニルヴァーナのカート・コバーンもまた、シアトル出身である。

パール・ジャムの「TEN」の発売が91年8月27日。約1ヶ月後の9月24日、赤ちゃんがプールで泳ぐジャケット写真で有名なニルヴァーナのセカンドアルバム「ネバーマインド」が発売されると、爆発的な売り上げを記録し、グランジロックが幅広く認知されるようになった。伴って伸び悩んでいた「TEN」の売上げも増したのだから、その時流に乗ったのが、パール・ジャムと解釈もできる。

ちょうどその頃、日本のファッション誌で編集の仕事をしていたが、グランジロックから派生した、ネルシャツ、古着、ダメージジーンズといったアイテムを崩して着るグランジファッションを特集したこともある。ショーツにワークブーツを合わせて、靴下をルーズソックスのように見せる着こなしを見たときも、音楽同様、革新的なものがあった。

コバーンの衝撃的な最期

もっとも間もなく訪れる彼の死は、それ以上に衝撃的な出来事として音楽史に刻まれている。1994年4月5日、コバーンはシアトルの自宅で、壮絶な遺書を残して自ら命を絶つ。深い葛藤がつづられていた。

死後、他殺説もあり、幾度となくその死が話題に。コバーンが世を去ってから20年後の14年3月には、ファンの要求もあってシアトル警察が未現像だった分の現場写真を公開し、以来、毎年のように少しずつ新しい写真を提供しているのは、彼の人気と死の衝撃、その大きさをなにより物語っている。

そのコバーンが自殺をしたシアトルの家は、今もダウンタウンの東側、ワシントン湖を見下ろす場所に建っている。そこには屋敷が並ぶ、シアトルでも別格の高級住宅街だ。

周辺は道路の車幅が、車がギリギリすれ違うことのできる程度しかなく、車が止められないので少し離れたところから歩いたが、その家はすぐにわかった。シアトルに住んでいれば、折に触れて、新聞やテレビで目にし、記憶に刷り込まれている。

自殺をしたとされるガレージの上の部屋は、死後間もなく、ミュージシャンで女優のコートニー・ラブ夫人により取り壊されてしまったが、それ以外は、昔の面影を残す。むしろ、今の住人が、コバーンが住んでいた時とあえて同じように手入れしているのかと思うほどだ。

ファンらの聖地となっているのは、家の隣にある小さな公園。あるのは、たった一つのベンチのみ。ファンらの間では"コバーン・ベンチ"として有名だが、無数のメッセージが残され、まだ、さほど時間がたっていないと思われる花が添えられていた。

イチローのテーマ曲

余談ながら、同じシアトル出身で、コバーンの流れをくむミュージシャンの1人に「デス・キャブ・フォー・キューティー」というバンドのベン・ギバードがいるが、彼は、イチローがヤンキースへトレードで移籍した12年7月、イチローのシアトルに対する貢献に感謝の意を込め、「イチローのテーマ」という曲を発表している。オルタナティブ系の世界からも称賛されたのは異例といえた。

27は不吉な数字

ところでコバーンは27歳で逝去したが、それによって「27クラブメンバー」という不吉な迷信をよみがえらせてしまった。過去、ドアーズのジム・モリソン、ザ・ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズら天才と呼ばれたミュージシャンらも27歳で亡くなっており、コバーンの死と関連づけて捉える向きもあった。ただ、「27」という数字を聞いて、なによりシアトルの人々が連想したのはジミー・ヘンドリックスだった。

そう、シアトルが輩出した不世出のギタリストと知られるヘンドリックスもまた、27歳の時にロンドンで薬物を大量摂取し、窒息死しているのである。

突如として世に現れると、音楽の概念を変えた。2人にはそんな共通点があるが、ヘンドリックスの死に対してもコバーン同様、他殺の疑いが消えず、死後も長く議論が続く。

そのヘンドリックスは、シアトル郊外の街・レントンのグリーンウッド・メモリアルパークで眠る。シアトルからは車で15~20分ほどの距離で、駐車場から大きなガゼボが見えるので、すぐに分かる。

中心にはギター。3面の壁には、彼のイラストと直筆の文字が彫られている。以前は地面に小さな墓石が置かれているだけの質素なものだったが、03年に現在の威厳を誇るかのような墓が、残された遺族らによって建てられた。

映画「シングルス」では、バンドリーダーに扮(ふん)するディロンがヘンドリックスの墓石の横に寝転がって歌うシーンがある。これもシアトルのミュージックシーンを知るクロウ監督の敬意のあらわれだろう。

なお、09年までは墓の前の道を挟んで向かい側にヘンドリックスが育った家があったが、さすがに老朽化が進み、取り壊されてしまったそうだ。

ブルース・リー、シアトルで学ぶ

さて、ジャンルは違うが、もう一人、"シアトル発"で世界にその名をとどろかせた天才がいる。截拳道(ジークンドー)を創始し、それを映画の世界で体現したブルース・リーだ。

1940年11月27日、サンフランシスコで生まれた彼は少年時代を香港に戻って過ごすことになるが、18歳でアメリカに留学。シアトルのエジソン・テクニカル・スクールを経て、1961年3月、ワシントン大へ入学した。一般には哲学を学んだとされるが、同大学の記録では演劇が専攻となっている。

在学中にシアトルで最初の道場を開くと、それを拡大。映画の世界で才能が見いだされてからは、主演だけではなく、監督、脚本をこなすこともあり、日本でも彼の作品は成功を収めた。死後、その影響力が改めて評価されると、1999年には米「TIMES」誌により"この100年で最も大切な100人"にも選ばれている。

夫人がシアトル出身ということもあり、32歳で早世したリーは今、やはり28歳という若さでこの世を去った息子のブランドン・リーと並んで、キャトルヒルレイクビュー・セメタリーにまつられている。

今回、久々に訪れてみたが、普段から訪問者が絶えないようで、様々なものがお供えされ、ちょうど行った日も、次から次へと人が現れては、足を止めていた。

丹羽政善(にわ・まさよし)
立教大学経済学部卒業。出版社勤務ののち1995年に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。著書に「メジャーの投球術」(祥伝社)、「MLBイングリッシュ~メジャーリーグを英語のまま楽しむ!」(ジャパンタイムス)、「メジャーリーグビジネスの裏側~本当に儲かってるのはこの人達~」(キネマ旬報社)、「夢叶うまで挑戦―四国の名将・上甲正典が遺したもの」(ベースボール・マガジン社)がある。シアトル在住。

前回掲載「マリナーズ本拠地のシアトル スタバ1号店も」では、イチローが通った寿司店など穴場スポットを紹介しています。

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