介護のための残業免除 企業は「起こる」想定で準備を
男女 ギャップを斬る(池田心豪)
今月から改正育児・介護休業法が施行され、仕事と介護の両立支援制度は大幅に改正されている。よく報道されていたのは介護休業の分割取得だが、それより介護のための所定外労働(残業や休日労働)免除が新設されたことに企業は関心を持っているのではないだろうか。
改正法では労働者の申し出により介護終了まで所定外労働が免除される。介護はいつまで続くかわからない。時には10年を超えることもあるのに、その間ずっと残業や休日労働をしないということは現実的でないと思うかもしれない。
筆者は今回改正の参考にするための調査を実施し、改正事項を検討する厚生労働省の研究会にも参加した。そこで得られた知見は、長く休み大幅に働き方を変える制度よりも、なるべく通常どおり勤務しながら柔軟に介護に対応できる方が離職防止につながるということである。それゆえ介護休業は長期1回より分割取得の方が良いという結論になり、介護休暇も半日単位になった。
勤務時間短縮等の措置の期間も3年に拡大されているが、短時間勤務の必要性はそれほど高くない。それより所定労働時間は通常どおり勤務するが残業はしないという意味の所定外労働免除の方が重要性は高い。だが、一切残業ができないというケースは多くない。日ごろ多少の残業があっても週の半分以上、定時退勤できていれば、特段心配する必要はないだろう。
企業向けのセミナーでそのように説明するとたいていは納得していただける。だが、それでも仕事を抜けられたら困るという声がときどき挙がる。その度に私はある労災の専門家から聞いた言葉を思い出す。
「日常生活において、子どもが生まれる、親が年老いて介護が必要になる、自分や家族が病気をするといったことはありふれている。そのありふれた出来事が自分の会社の従業員には起こらない前提で管理する方がおかしい。起こるという想定で準備しておけばあわてることはない」。
従業員が介護に直面したら困ると言って、そうならないことを祈るのではなく、そうなったらどうするかを考えた方が良い。その解決策として働き方改革に取り組むことが重要である。
〔日本経済新聞朝刊2017年1月21日付〕
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