まだまだ続く渋谷の新施設 10月は「エンタ祭り」も
渋谷の街が大きく変わりつつある。まず駅周辺で再開発が進み、東急グループが中心となって建設している新施設の開業が相次ぐ。 2017年春にはシェアオフィスに多目的スペース、住居と多様な機能を持った「渋谷キャスト」が宮下公園の近くにオープンする。18年秋には旧東横線渋谷駅のホーム跡地に、地上35階建ての「渋谷ストリーム」が誕生。商業施設やオフィスに加えて、約180室の客室を備えたホテルや、最大収容人数約700人規模のホールが完備される予定だ。
これらの大規模な商業ビルの開業ラッシュは27年頃まで続き、施設以外にも、ハチ公前広場の拡充や、東口と西口を結ぶ自由通路の拡大などの整備も行われる。また「渋谷区役所建替プロジェクト」も進んでいる。18年に新庁舎とともに完成予定の渋谷新公会堂は、地下2階~地上4階建てになるという。
12年に開業した「渋谷ヒカリエ」がそうだったように、従来から渋谷に集まっていた10代20代の若者に加えて、上の年代の層も取り込める施設が増えていくことになりそうだ。渋谷は"大人の街"へと少しずつ変貌を遂げていく。
建物だけでなく、コンテンツの面でも新たな展開が始まっている。16年4月には一般財団法人 渋谷区観光協会の体制が一新され、「PLAY!DIVERSITY SHIBUYA」(=世界で最も多様な遊びができる町・渋谷)というスローガンの下、渋谷の遊び体験や観光資源を増やそうとしている。渋谷区観光協会の金山淳吾理事長は、「まだ構想段階だが、10月を渋谷がエンタテインメントであふれる期間にしたい」と意気込む。
10月に焦点を合わせるのは、一大イベントとなったハロウィーン(10月31日)があるからだ。渋谷はそのメッカで、16年は駅前を交通規制するほど。しかし課題も多い。「渋谷にあまりに人が集まるため、街が汚れたり、店舗の営業に支障をきたすといったマイナス面もあり、それを解消しないと渋谷区や商店街は消極的にならざるを得ない」(金山氏)。
ハロウィーンに屋台村
そこで渋谷区観光協会は、16年のハロウィーン当日に2つの新たな試みを実施した。ひとつは代々木公園に屋台村「ハロウィーン横丁」を設け、人々に行き場を提供することで駅周辺の人口密度を緩和した。もうひとつは「OFFハロウィーン」という企画。仮装だけなく、ドレスアップをする日にもしようと、着飾ったモデルなどに集まってもらった。渋谷はファッションの街でもあるので、アパレルショップなどの需要喚起を促す狙いがあった。
こうした実績を踏まえ、今年は既に毎年10月近辺に渋谷で開かれている各種イベントをリンクさせて、「SCRAMBLE 2017」という横断的な祭典の開催を検討している。109前などにステージが作られる「渋谷音楽祭」、渋谷の街を舞台にしたアートフェス「渋谷芸術祭」、路上ファッションショーなどが行われる「渋谷ファッションウィーク」などがそれにあたる。「期間中は、ジャンルをまたいだイベントや会議なども開催して、エンタテインメントとビジネスをかけあわせられるような場にしたいですね」(金山氏)。
16年12月31日には、スクランブル交差点で交通規制をして、カウントダウンが滞りなく楽しめるような試みにも初めて取り組んだ。「ニューヨークのタイムズスクエアで毎年行われているような、大きなカウントダウンイベントを渋谷でも開催できれば面白い」と金山氏は将来の夢を語る。
変わりゆく街を、様々なイベントで彩り、若者から大人まで多様な人々を集めて地域の活性化を図ろうという構想が進む。10月は渋谷の街が面白くなりそうだ。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2017年1月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界