大きくなった源泉徴収票 読み解き方に3つのポイント
知って得するお金のギモン
12月または1月の給与明細と一緒に渡される「源泉徴収票」、皆さんはもう受け取りましたか?「何に使うのか分からない」と、すぐにしまい込んでしまう人も多いのですが、それはもったいない! マネー上手になれる「使える書類」なのですよ。今回は活用術を伝授します。
源泉徴収票は、勤務先があなたの給料から天引き(源泉徴収)した1年分(1~12月)の所得税の額を、税務署にお知らせするための書類です。2通発行し、1通は本人に渡されます。企業と税務署とのやり取りのためのものなので、専門用語も多く分かりにくいですね。
マイナンバー導入で今年から紙のサイズが大きくなり、情報量が増えましたが、チェックすべき項目は主に次の3つです。
A 「支払金額」……額面年収
B 「源泉徴収税額」……天引きされた所得税の額
C 「社会保険料等の金額」……本人負担分の厚生年金、健康保険、雇用保険等の保険料
まず「支払金額」の欄で額面年収を確認しましょう。これは、交通費を除く各種手当を含んだ金額です。前年に比べて増えているか、減っているか、毎年チェックしてくださいね。
手取りは年々減っている!
今年しっかりためるためには、実際に使えるお金である「手取り年収」も知っておきます。
手取り年収は源泉徴収票に書いてあるわけでなく、自分で計算しないと分からないのです。額面年収(A)から所得税(B)、住民税、社会保険料(C)を引いた金額が手取りです。住民税だけは源泉徴収票に書かれていないので、給与明細を見て毎月天引きされている住民税を12倍します。
例えば額面年収400万円の人の2016年の手取りは、約317万円(扶養家族のいない40歳未満のケース)。差額83万円が「使えないお金」です。うん、かなりの金額で驚きますね。内訳は、所得税約8万5000円、住民税約17万5000円、社会保険料が約57万円です。よく「税金が高い」といいますが、よほどの高年収でない限り、税金より社会保険料の負担のほうが大きいのです。
実は、税金や社会保険料の負担が増える制度改正は03年から毎年実施されており、額面年収が同じなら手取りは減り続けています。額面年収400万円の手取りは、02年には333万円ありました。14年間で16万円も少なくなっている! ゆゆしき事態です。
国の財政状況を考えると、今後も増税や社会保険料の負担増は避けられないでしょう。額面年収が変わらなければ、これからも手取りはじわりじわりと減ってしまうのです(涙)。
手取り年収を知ることは、額面年収を把握するのと同じくらい大事なこと。だって、自分が本当に使えるお金でマネープランを立てないと"絵に描いた餅"になってしまいますからね。
今年のマネープランを立てる前に昨年を振り返ってみましょう。1年間で貯蓄できた額はいくらですか? 先ほど算出した手取り年収から、昨年1年間の貯蓄額を引くと、支出総額が分かります。「年間貯蓄額」と「年間支出額」は、しっかり頭に入れておきましょう。マネー上手のキホンです。
今年も昨年並みの貯蓄をしたいなら、その金額が自動的にたまるように積み立ての手続きをします。昨年の貯蓄額が少なく「これではいけない」と思った人は、昨年の支出の内訳を書き出してみましょう。大まかでいいので、とにかく書くこと。そうすると、使い過ぎなど問題点が浮き彫りになりますよ。
今月の回答者
ファイナンシャルプランナー。株式会社生活設計塾クルー取締役。外資系電機メーカー勤務を経て、1996年にFPに転身。現在は、特定の金融商品を販売しない独立系FP会社生活設計塾クルーのメンバーとしてコンサルティング業務を行うほか、雑誌等の原稿執筆、講演などを手がける。
[日経ウーマン 2017年2月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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