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マリナーズ本拠地のシアトル スタバ1号店も

イチローが歩いた街(1) スポーツライター 丹羽政善

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NIKKEI STYLE

おそらく、イチローがマリナーズに入団するまで、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ボストンといった大都市は知っていても、シアトルがアメリカのどこにあるのか、そもそも、街の名前さえ初耳だったという人も少なくなかったはずだ。

アメリカでも、1990年代に入るまでは知名度が低く、住宅価格も手ごろ。2000年代に入って「全米で住みやすい街」ランキングで上位に選ばれることもあり、移住する人が増えたが、イチローのマリナーズ入りでシアトルという地名はアメリカを上回るペースで日本に浸透していった。

そのイチローが開幕から記録的な活躍を見せ始めると、彼を見ようとシアトルを訪れる日本人観光客が急増。夏休みを利用して、という人が多かったが、本来の目的ではなかったことが、次から目的となったリピーターも少なくなかった。

シアトル 夏は冷房いらず

実際、友人が空港の外に出たところでこう口にしている。

「シアトルの夏って、こんなに快適なの?」

そう。シアトルの夏は最高気温がせいぜい27~28度で湿気もない。冷房いらずで、知る限り家に冷房があったのは、06年から09年までマリナーズに在籍した城島健司さん宅だけ。雨が多いと聞いたことがある人もいるかもしれないが、それは冬から春にかけての話。夏に雨が降ることはめったにない。また、6~8月は9時半ごろまで明るく、夕方からゴルフを1ラウンドすることも可能だ。

見どころも近場に多く、短期観光向き。マリナーズの本拠地、球場のセーフコ・フィールドを起点とすれば、西側のビーチまでは車で10~15分ほど。海水温が低いので泳ぐのには適していないが、やはり車で10~15分走れば、泳げる湖がある。また、フリーウェイを使えば、90年代前半にカルト的な人気を誇ったテレビドラマ「ツイン・ピークス」(デビッド・リンチ監督)の舞台となった街まで30~40分。同じフリーウェイをさらに東へ15分ほど走ると、冬はスキーが楽しめる。

イチローの試合目当てでシアトルを訪れた人の多くは、ダウンタウンに宿泊し、歩いて球場へ通い、観光の移動手段も"足"がメインだったはずだが、それでも特に不都合を感じなかったのではないか。街のサイズがコンパクトなので、どこへ行くにも徒歩圏内。すべてとはいかないまでも、シアトルらしさの一端に触れることができる。

今回は、紹介するところをダウンタウンから歩けるスポットに絞るが、イチローが歩いた街、シアトルとはどんなところなのか。ブラブラしながらセーフコ・フィールドへ向かうルートを想定しながら、たどってみたい。

全米最古のマーケット

まず、ダウンタウンの中心に近く、年間1000万人の観光客が訪れるのが、1907年8月17日にオープンし、生鮮食品から、野菜、果物、花、工芸品などを扱うパイクプレイスマーケットだ。現存する同種のマーケットとしては全米最古という。

もともとは、主に野菜、果物を扱うファーマーズ・マーケットで、開場時に参加した農家はわずか8戸だったというが、2年後には平均して64戸に増え、1910年に拡張されるとその5年後には150戸もの農家が軒を連ねるようになった。

今のチャイナタウン、元はジャパンタウン

日本からの移民も多く参加していたようで、発展には浅からぬ関わりがあるが、やがて哀(かな)しい歴史をたどることになる。1941年12月、火災によってパイクプレイスマーケットは大きな被害を受けた。原因は今も不明だが、それが12月8日の真珠湾攻撃の1週間後だったことから、日系人による仕業ではないかと疑われたのだ。

年が明け、日系人がことごとく強制収容所に送られると、マーケットの広いスペースの半分が空き家になったそうである。

余談だが、日系人の多くは、球場に近い、今のチャイナタウン周辺に住んでいた。もともとはジャパンタウンで、強制収容によって日本人が消えると中国人が入って来て、チャイナタウンとなった。

悲劇の痕跡は今も残る。少し外れたところに「パナマホテル」という古いホテルが立っているが、その地下にいわゆる日本の銭湯があり、強制連行される前に日系人は、大切なものをトランクや段ボールに詰め、そこに隠していった。家具なんかもあったようだ。

それらは、代々のオーナーに大切に引き継がれ、今となっては引き取りに来る人もいないが、銭湯も含めて保存され、その歴史が後世に語り継がれている。話を戻せば、パイクプレイスマーケットもさすがに老朽化が進み、なにより手狭になったことから、現在、拡張工事が行われている。裏の駐車場だったところに建物を建て、南側に広がるウオーターフロントとのアクセスを設ける予定で、順調にいけば今年6月に完成する予定だ。

英語教師ら3人が生んだスターバックス1号店

そのパイクプレイスマーケットを歩いていれば、嫌でも目に入るのが、通りを挟んだ向かい側にある小さなコーヒーショップの行列である。その店が実は、1971年にサンフランシスコの「ピーツ・コーヒー」に感化された英語教師、歴史教師、ライターの3人が開店させたスターバックス1号店だ。

一般的には「オリジナル・スターバックス」と呼ばれているが、ここでしか売られていないマグカップなどのオリジナルグッズもあり、平日でも日中は中へ入るのに列ができるほど。もっとも本当の1号店は、現在の店の右斜め手前あたりにあり、今の場所に移転したのは、開店から5年後だったそうだ。

実際に訪れると、日本でもなじみのあるあの緑のロゴがないので戸惑うかもしれないが、オリジナル・スターバックスでは、今もオープン当時のロゴがそのまま使われている。

モデルはギリシャ神話に登場する「セイレーン」という海の怪物で、「ディクショナリー・オブ・シンボルズ」(J.E. Cirlot)という本に載っているセイレーンがモチーフだそう。

先ほど触れたオリジナルグッズは、当然このロゴのもの。他では売っていないものもあり、オークションサイトで、高値で取引されているグッズがある。ちなみにオリジナルロゴが使われている店舗がダウンタウンの北側、ワシントン大学近くのモールにもあり、旗艦店として位置づけられている。

イチローも通った寿司屋

もう1カ所、パイクプレイスマーケットへ行くなら、ここにも寄りたい。オリジナル・スターバックスの並びに「イン・アット・ザ・マーケット」という小さなホテルがあるが、そこに「SHUSHI KASHIBA」というお寿司(すし)屋さんがある。開店前から多くの人でにぎわう。

そこで寿司を握る加柴司郎さんは、シアトルに初めて江戸前寿司を紹介した職人。以前はダウンタウンの外れで「SHIRO'S」というお寿司屋さんを営み、そこでは偶然、イチローとも会ったことがあるが、その店の経営権を譲った後、15年の冬に「SUSHI KASHIBA」をオープンさせた。

京都出身ながら江戸前寿司に魅せられた司郎さんはかつて、作家の池波正太郎も通ったという京橋の老舗寿司店「与志乃鮨(すし)」で修業。最初の1年は数寄屋橋店で働いたが、そのとき店を任されていたのが、後に同じ場所に「すきやばし次郎」を開店させる小野二郎さんで、司郎さんは「基本中の基本を教わった」と振り返る。「すべて、二郎さんから」

ただ将来的に、日本ではなくアメリカで寿司屋をと考えた司郎さんは1966年12月1日、シアトルへ渡る。以来50年、シアトルにこだわって寿司を握り続けている。

「ここは本当にローカルの食材が豊富ですから。グイダック(みる貝)、スメルト、カキ、ウニ、ナマコ、ボタンエビ。他の町に移ることは考えられない」

シアトルといえばシーフードでもあるが、それが堪能できる。

 さて、そろそろ次へ。パイクプレイスマーケットからファースト・アベニューをセーフコ・フィールドに向かって下っていくとパイオニアスクエアという広場に出る。

重厚感があり、昔ながらのたたずまいが感じられるが、実のところ周辺の建物も含めてすべて1900年以降に建てられた。しかも、計画的な復興プロジェクトによる産物だ。

大火に見舞われた木材の街

ワシントン州といえば木材の街。1850年代の半ばになると、この辺りには製材所などが立ち並んで栄えていたそう。ところが、1889年6月6日に「シアトル大火」が発生し、一帯が大きな被害を受けた。そのとき、ビルを再建する際には石材かレンガを使うこと、また周辺が海抜ゼロメートル地帯で、昔から満潮になると度々浸水の被害にあっていたことから、土地に勾配をつけて高い位置に入り口を作ることなどが定められた。パイオニアスクエアから西側の海に向かって下り坂になっているのは、そんな理由がある。

もっとも一部は災禍を免れ、その上に建物が建てられたことから、図らずも地下空間ができた。その存在は長く忘れられていたが、1964年、地元紙「シアトル・タイムズ」のコラムニストでシアトルの歴史を研究していたビルー・スピーダルが読者の投書をきっかけにパイオニアスクエアの地下一帯を調査したところ、街の成り立ちを知る貴重な遺構にたどり着いた。のちに彼は「アンダーグラウンド・ツアー」を主催し、シアトルの歴史を伝える役割を担うようになっている。

ニューヨークより西側では全米一のビル

そのパイオニアスクエアから少し坂を上ったところにある白いビルがスミスタワー。大火からの復興が進む中、1908年にこの場所の土地を取得したのは、タイプライター事業で財をなしたL.C.スミスというビジネスマンで、一緒に旅行をした妻がシアトルを気に入ってしまい、土地を買うよう迫ったと伝えられる。

スミス氏は翌年、地元紙「シアトル・デイリー・タイムズ(現シアトル・タイムズ)」の取材に対して、「シアトルの街がどんどん開発されているのに、ここに何も建てないわけにはいかない」と話し、18階建てのビルを建設する計画を明かしたが、彼が翌年に他界すると、計画を受け継いだ息子が、42階建てのビルを建ててしまった。完成は1914年の独立記念日(7月4日)。

462フィートという高さは、完成当時、ニューヨークより西側では全米一の高さ。その後、全米各地で高層ビルが建ち始めると、1923年には「シカゴより西側では一番高い」、1931年には「カンザスシティーより西側では一番高い」といったように、どんどんスケールが小さくなったが、それでも1962年にやはりシアトルの名物といえるスペース・ニードルが完成するまで、西海岸でトップを誇った。今となっては、周りに高層ビルが立ち並んでどこか貧相だが、シアトルのエンパイア・ステートビルディングとして長く象徴的な存在だった。

昨年夏、大規模な改装を終えて、再び一般オープン。35階にレストランとバー、展望台が作られ、かつてのにぎわいを取り戻している。

そのスミスタワーの南側には、高いビルがほとんどないので、展望台からセーフコ・フィールドなどが一望できるが、視線を下に落とすと見えるレンガの建物が、キングストリートステーションという、現役のアメリカ合衆国国家歴史登録財。今は、アムトラックなどの駅として使われている。

大陸横断鉄道の駅舎

誕生は1906年で、アメリカ大陸を横断するグレートノーザン・レールウェイとノーザンパシフィック・レールウェイが乗り入れた。設計・建築は、後にニューヨークのグランドセントラル・ステーションの改装を手掛けることになる「リード&ステーム」というミネソタ州の会社で、ともにボザール様式が採りいれられている。グランドセントラル・ステーションを知っている人なら、駅舎の中に入ると既視感を覚えるのではないか。

 時を経て老朽化が激しくなり、すっかり寂れてしまったが、08年にシアトル市が駅を所有していた鉄道会社から10ドルで買収し、5500万ドルをかけて改修したのが今の姿。特徴的な242フィート(約74メートル)の時計塔もそのときに修理、改修された。

ボーイングの技術者がつくったサラミ屋

さて、ここまで来ると、もう目の前にセイフコ・フィールドが見えてくるが、駅前にあるおいしいお店を最後に紹介しておきたい。

入り口が狭いので少し分かりにくいが、道に看板が出ている。 名前を「サルーミ」といい、自家製サラミ屋さんだ。ボーイングのエンジニアだったアーマンド・バタリさんが引退後に長年の夢をかなえた店だが、1999年の開店当初から、評判となると、03年ぐらいだったか、イチローとも会ったことがある。

営業はランチタイムのみで、午前11時の開店と同時に行列が出来、店内は人が行き交うスペースもないほど。以前は火曜~木曜の3日間しか開いていなかったが、今は月曜日(持ち帰りのみ)から金曜日までオープンしている。並ぶのを避けるなら、閉店間際の午後3時頃が狙い目か。いろんな種類のサラミが味わえるサンプラーがおすすめで、チーズとパンがついて19.50ドル。これを持って球場へ行くというのが、最高のぜいたく。もう、セーフコ・フィールドにイチローはいないけれど――。

丹羽政善(にわ・まさよし)
立教大学経済学部卒業。出版社勤務ののち1995年に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。著書に「メジャーの投球術」(祥伝社)、「MLBイングリッシュ~メジャーリーグを英語のまま楽しむ!」(ジャパンタイムス)、「メジャーリーグビジネスの裏側~本当に儲かってるのはこの人達~」(キネマ旬報社)、「夢叶うまで挑戦―四国の名将・上甲正典が遺したもの」(ベースボール・マガジン社)がある。シアトル在住。

(2)マリナーズの本拠地シアトル ブルース・リーも活躍 >>

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