相続・税金

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財産は基礎控除の範囲内 でも相続税の申告は必要!? 税理士 内藤 克

2017/1/13

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 相続は時期を問わずいつでも発生するものです。今年も年明け早々こんな会話がありました。
「内藤先生。亡くなった夫の預金ですが、名義変更も無事終了しました」
「良かったですね。そういえば相続税の計算はご自分でなされたということですが、どうでしたか?」
「いろいろ工夫して計算したら基礎控除の範囲内でしたので、申告しなくてもよさそうです」
「あれ? ご自宅は一等地にありましたよね?」
「ええ、でも配偶者である私が取得するので80%減額できまして……」
「小規模宅地の特例ですね。それなら申告しなければいけませんよ」
「えー? 基礎控除の範囲内なのに?」

 最近ではだいぶ知られてきたように、2015年以降、相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。残されたのが配偶者と子供2人なら4800万円ですね。財産評価を行った結果、合計額がこの金額を下回っていれば相続税はかかりません。しかしこのケースのように「小規模宅地の評価減」などの特例を適用し、結果として基礎控除を下回った場合には期限内に申告をしなければならないのです。他にもこうしたケースは存在しますので、今回はそれを見ていきましょう。

■最も重要な「小規模宅地の評価減」の場合

 相続税を軽減する特例の中でも最も重要で、存在もよく知られているものです。相続する土地が被相続人が居住していた宅地、貸宅地、事業をしていた土地などであれば、一定の要件を満たすことで最大80%まで評価を減額できるという制度です。評価額が1億円でも2000万円として計算できるので節税効果は絶大ですが、要件が複雑なことでも知られています。またこれは相続後も今までと同じ状況で居住や賃貸している場合(つまり換金化していない場合)に適用される制度です。

 今回はよくあるケースとして、自宅を相続した場合と貸宅地を相続した場合について説明していきます。

【居住用宅地】
・面積:330平方メートルまで
・減額割合:80%
・特例が適用される取得者の要件:
 (1)配偶者……別居の配偶者も含む。相続後すぐに売却しても適用可。
 (2)同居親族……申告期限まで所有し居住していることが条件。法定相続人でない親族が遺言で取得する場合も可。
 (3)別居親族……(1)(2)がいなかった場合に日本に居住している親族が取得する場合。相続開始前3年以内に持ち家を持っておらず(配偶者名義含む)、相続税の申告期限まで所有することが条件。
【貸宅地】
・面積:200平方メートルまで
・減額割合:50%
・特例が適用される取得者の要件:
 申告期限まで所有し賃貸していること。法定相続人でない親族が遺言で取得する場合も適用可。

 これらのケースで80%、または50%減額した結果が基礎控除額以下だった場合は、前述のように相続税はかかりません。ただ、それは「自動的に非課税になるから申告しなくてもいい」ということではないのです。ここを誤解されている方が多いのですが、特例を受けるための手続きとして書類なども添付して申告すれば、その結果として非課税で済む、ということなのでお間違えのないように。

■1億6000万円まで非課税の「配偶者の税額軽減」

 こちらも比較的よく知られている制度です。相続で配偶者が財産を取得した場合に、法定相続分または1億6000万円までは税金がかからないというものです。

 日本では長年連れ添って財産形成に協力してきた配偶者に対しても相続税がかかることになっています。夫の商売をただで手伝ってためたお金は半分妻のもののような気がしますが、ここにも相続税はかかってきます。ただし、実際にはそれを税額控除という形で軽減してあげようという趣旨で設けられています。法定相続分がそうであるように、結婚した翌日に夫が亡くなっても配偶者はこの特例を使うことができます。

・対象者:配偶者(事実婚の場合はNG)
・減額される額:次の(1)と(2)のいずれか大きい金額
 (1)1億6000万円 (2)配偶者の法定相続分相当額

 この減額を配偶者の税額軽減といいますが、この金額には仮装または隠蔽された財産は含まれないことになっています。要するに、配偶者が相続税を逃れようとして財産隠しをし、当初申告しなかった財産が後から見つかって修正申告するような場合は、その隠していた財産については減額はなされない、ということです。

 これらのように、単純に「基礎控除の範囲内であれば申告しなくてもいい」と思い込んでいると、場合によっては後から税務署から指摘を受けて申告することになります。その場合は加算税や延滞税もかかってきますので注意が必要です。

内藤 克(ないとう・かつみ) 税理士法人アーク&パートナーズ 代表・税理士。1962年生まれ、新潟県長岡市出身。90年に税理士登録、95年に東京・虎ノ門で個人税理士事務所を開業。97年に銀座で税理士・司法書士・社会保険労務士による共同事務所を開業。2010年に税理士法人アーク&パートナーズを設立。弁護士ら専門家と同族会社の事業承継を中心にコンサルティングを行っている。事例中心のわかりやすい講演にも定評あり。「士業はサービス業である」ことを強く意識し、顧客満足度を追求。日本とハワイの税法に精通し、ハワイ税務のコンサルティングも行っている。趣味はロックギター演奏。

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