不動産・住宅ローン

転ばぬ先の不動産学

中古マンション価格 金利より在庫と株価に注目 不動産コンサルタント 田中歩

2017/1/11

2017年、日経平均株価は21年ぶりに高い上げ幅を記録して始まったが…(4日、東京証券取引所)=ロイター

 今年1月、フラット35の金利が2カ月連続で上昇しました。今月の金利は「返済期間21年以上35年以内、借入額が住宅購入額の9割以下」の場合、先月より0.02ポイント上がって1.12%です。このまま金利が上昇すると、住宅価格が下がる可能性があるとする意見も散見されます。ところで、なぜ金利の変化によって住宅価格が変化するのでしょうか。

■金利下がると住宅価格は上昇

 2013年7月のフラット35の金利は2.05%でした。この時に4000万円を35年返済で借り入れた場合、総支払額は約5600万円となります。一方、16年8月の金利は0.9%でしたので、同じ条件で借りると総支払額は約4660万円となり、総支払額は約940万円も少なくなります。

 つまり、16年8月の時点であれば、13年7月時点と比べて940万円高い物件を買っても、結果として総支払額は変わらないというわけです。ということは、その分、中古マンション価格は上昇していてもおかしくないということになります。

 実際に13年7月における東京都23区の中古マンションの成約平均単価は57万6000円/平方メートルでしたので、70平方メートルの中古マンションなら価格は約4000万円、16年8月の成約平均単価は71万4000円/平方メートルですから同約5000万円となり、金利低下による総支払額の減少分と同じくらいの価格上昇が見られたということになります。

■今回の影響は限定的か

 このように、金利の変化が中古マンション価格に影響するとすれば、今後、金利が上昇すると価格が下がる可能性はありますが、その影響は限定的だと思います。

 フラット35などの固定金利住宅ローンは長期金利の動向を踏まえて決められますが、日銀はインフレ率2%を達成するまでの間は金融緩和を続ける予定であり、10年長期金利をおおむね0%程度にコントロールしようとしています。

 筆者を含め多くの人が10年長期金利はマイナス0.1~プラス0.1%程度の範囲でコントロールされるのではないかと見ていますので、昨年12月の10年長期金利の平均値0.05%程度だったことからすると、上昇するとしてもあと0.05%程度ということになります。

 もし、フラット35の金利が上昇するとしても同程度と考えられますので、仮に現在1.12%のフラット35金利が0.08%上昇し1.2%になったとしても「借入額4000万円、35年返済」であれば、借入金返済の総支払額は約60万円増える程度のインパクトしかありません。

■在庫推移と株価に注目

(注)東日本不動産流通機構「市況データ」より筆者作成

 筆者としては、現時点において23区内の中古マンション価格に影響する要素は、金利というよりは別の2つの要素、在庫と株価ではないかと思っています。

 グラフに示されているように、2015年7月以降は、在庫が急増しているものの価格が下落せず横ばい傾向となっています。金利低下の影響が大きいのです。しかし、今後、さらなる金利低下が見込めない、かといって金利が急騰する状況ではない中では、価格の動向を握るものは在庫推移ということになると思います。

 価格が高止まりしているうちに売ろうという人がさらに増えれば在庫は増加し、価格下落圧力は強まる可能性があります。

 もう一つは株価です。23区内の中古マンション価格は16年以降を除き、株価との相関が強いことが分かります。23区内の中古マンションにおいては、その取引金額が多額になることから、ご両親が子供のために資金援助をすることが多々あります。現場の肌感覚ですが、株価が高いときのほうが援助しやすいということが影響しているものと思われます。

■米新大統領の政策が左右

 今年の株価は、米国の金融財政政策(ドル・金利高→円安→株高)と保護主義的な通商政策(リスクオフ→円高→株安)という2つの側面から影響を受けそうですが、新大統領の政策に関する評価が明らかになるのは今年の夏から秋ころと思われます。

 筆者は、23区の中古マンション在庫水準が過去のトレンドから勘案して一気に減少せず、今後1年程度は高止まり、またはやや上昇を継続すると予想していること、新大統領の通商政策が国際的な景気高揚に資するとは考えていないことから、23区の中古マンション価格は本年夏から秋ころまでは一進一退、以降は下落傾向が明確になるのではないかと予想しています。

 いずれにせよ、今年の23区中古マンション価格を占うためには、金利動向よりも、在庫と株価動向に留意する必要がありそうです。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。2017年1月14日(土)「不動産投資 成功の実践法則50」(ソーテック社)出版記念イベントを開催。不動産コンサルタントの長嶋修と田中歩が不動産投資の極意を語り尽くします。詳しくは http://www.sakurajimusyo.com/publish0114

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