「いつ終わる?」ネーティブの感情を害する3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(11)確認する
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は頼みごとを確認するシチュエーションです。
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同僚に頼んでいた仕事。そろそろ時間がなくなってきた。いつ終わる? 尋ねたい。「いつ」だからwhen なはずです。案外むずかしい「終わり」を尋ねる文ですが、せっかく仕事を引き受けてくれた相手の感情を害さず、それでもはっきり言わなければなりません。
正しい訳:いつ終わりますか?
影の意味:何日の何時に終わるかを約束してくれ。
「いつ終わるか」を尋ねるときに、すぐに思い浮かぶのがこれ。でも Will you…? には明確な答えが欲しいというニュアンスがあり、少しきつい言い方に聞こえる可能性があります。
メールであれば問題はありませんが、面と向かって言うといらぬ誤解を生むかもしれません。
正しい訳:まだ企画書は終わっていない?
影の意味:まだ企画書は終わっていないの! 遅いね。
正しい訳:企画書を終えるのにどれくらいかかる?
影の意味:後、どれだけあれば、企画書は終わるの?
…are you going to take…? はわざと時間を取っている、わざわざゆっくりやっていると伝わるニュアンスがあります。
これなら影の意味はない
いつ頃、企画書終われそう?
この文には意味を和らげる2つの要素が入っています。about whenなら「いつ頃」という意味がうまく伝わります。またdo you think…を入れたことで、相手の気持ちや様子を聞いているというニュアンスが出ます。
いつ企画書は終われそうでしょうか。
I was wondering…は「ちょっと思っているんだけど…」の意味でとても柔らかな言い方になります。過去形であることもポイントです。これを書く場合はI was wondering when you can finish the proposal.のようにしますが、話す時にはネーティブはほとんどこのような形にします。I was wondering の後に間を置く。これは「あのね」の役割があります。
企画書を終えるのに後どれくらい時間が必要ですか?
必要な時間を確認しているので、嫌味のない言い方になります。
あなたが知らない本当の使い方― wonder
Adventures in Wonderland 「不思議の国のアリス」ではwonderは「不思議」。日本ではwonderと言えば「不思議」という意味で捉えられるケースが多いようです。他の例にもれず、wonderも様々な顔を持った単語です。
動詞で使う場合、実は日本人はこの使い方をあまりしませんが、ネーティブは「~なのだろうか?」と独り言のように使うことがよくあります。
・I wonder where he went. 彼はどこに行ったのだろうか?
・I wonder about her sometimes. 時々彼女は大丈夫かなと思ってしまう。
・It's no wonder that he's sleepy. He worked all night. 彼が眠いのも不思議ではない。彼は徹夜で仕事してたんだ。
*It is no wonder that…: ~は明らかだ/疑う余地がない、~なのも不思議ではない
・I wonder whether or not he can come. 彼が来るのか来ないのかどうなんだろう。
*wonder whether or not: ~だろうか否かと考える
・This resume makes me wonder if he's really interested in working here. この履歴書を見ただけでも、彼が本当にここで働きたがっているのか疑問に感じる。
*make someone wonder: ~に疑問を抱かせる、人を驚かせる/感嘆させる
・Sorry, I was just wondering aloud. ( = I was just thinking aloud.) ゴメン、ちょっとひとり言を言っちゃった。
*wonder aloud: = think aloud ひとり言を言う
・It makes you wonder if this company will survive. この会社が生き残れるかはちょっと怪しいよね。
* make someone wonder: 人に疑問を抱かせる、すなわち「不思議だね、怪しいよね」
・This new application can do wonders. このアプリ、すごいわよ。
* do/work wonders: 薬や方法などが驚くほど利く/効果を発する
「~に対して」はfor…
* 人や物などが奇跡をやってのける.
・Wonders never cease! (些細なことに対しておおげさに)これはまた驚いた。
*会話内で使うおどけた表現
I was wondering....はネイティブがよく使う表現です。I was wondering if you could help me. 「ちょっと助けてもらえるかな、と思って」のように相手を気遣う感じのよい言いまわしです。そのため相手も正直に「ちょっと忙しいから、ゴメン」などの言葉を率直に気楽に言える雰囲気を作ってしまうことは確かです。
I was wondering, when can you finish the proposal? はある面では、相手の気持ちを慮る思いやりの表現になりますが、明確な答えを求めていない表現のため、相手もMaybe sometime next week. 「多分、来週あたりかな」のように曖昧に答えることにもなりかねません。すなわち、弱腰であいまいな表現ということにもなります。そのため、リーダーシップを発揮すべき立場にあるネーティブが使う表現ではないという認識があります。
では、上の立場の人に言う場合はどうなるでしょうか? アメリカでは、立場や役職の上下が日本ほど大きな意味を持っていないのは、皆さんもご存知の通りです。例え立場が下であっても、明確な答え、例えば、On Monday morning.「月曜日の朝に」のように、具体的な回答を引き出せないないのであれば、これはリーダーとなる器がないと思われる可能性があります。立場にかかわらず、必要な場合は相手と対等に話し、明確な表現を引き出す必要があることは覚えておきたいものです。
Stay on the road to success!
:D セイン
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。長年にわたる豊富な英語教育経験を生かし、数多くの英語関連書籍を執筆。著者に「英語サンドイッチメソッド」シリーズ(アスコム)、「カシオ英会話学習機 入門ビジネス英会話 Joy Study」、「TOEIC テスト完全教本 新形式問題対応」(研究社)などの他ベストセラーも多数、累計300万部以上の著作を刊行している。日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞などでコラムを連載。NHKの日本語学習番組にレギュラー出演。英語教育推進事業団(EEPS) の学術顧問。受験生向けの英語学習サイト(http://david-thayne.com/)と日本文化を英語で紹介す る英語学習サイト(http://www.wakaru.guide/ )を監修。