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シェアリングエコノミーの拡大や人工知能(AI)の普及をはじめ、既存産業の枠を超えた大きな変化が起こっている。東京五輪を控える2020年を見据え、激変する環境の中で伸びる企業の条件は何か、働く私たちは何を考えるべきか、5人のトップコンサルタントに聞いた。

第2回はベイン・アンド・カンパニー東京オフィス会長兼パートナーの火浦俊彦氏。成功し順調に拡大を続けた企業であっても、多くがある時点で伸び悩み、失速してしまう。なぜ停滞してしまうのか、どうすれば成長を持続できるのか、その鍵を聞いた。

◇   ◇   ◇

企業の不調は、組織内部から生まれる

「2020年」に限らず、もう少し普遍的な話になりますが、私たちは、成長を持続する企業はある共通の特徴を持つと考えています。

どんな企業でも、最初は数人・数十人の小規模から始まり事業を拡大させていく過程で、業務プロセスや意思決定など内部の構造を変化させていきます。ところが、こうして複雑化した組織構造こそが、企業の成長を阻害する大きな要因となります。巨大な管理機構や仕組みが無用な調整業務を生み、大切な創業時の理念や目的意識は薄れていきます。これは、拡大する企業にはどこであれ必ず降りかかることです。

こうした困難を乗り越え、企業の成長を手助けする力となるものが、私たちの考える「創業メンタリティ」です。これには3つの特徴があります。

1つ目が「革新志向」です。独自の強みを絶えず磨き、差異化を図ろうとする"尖(とが)り"を持ち、顧客ニーズに応えるべく業界に挑もうとする野心などが特徴です。

役職に関係なく、全従業員が"自分がオーナーである"という意識を持って行動することも重要です。キャッシュに対する厳しい姿勢や大きな決断・行動を生みだす衝動など、「オーナーマインド」が2つ目の特徴です。

3つ目の特徴として「現場へのこだわり」があります。現場は、企業が掲げる使命や価値観を直接、顧客に伝えられる場所です。そのため、現場の従業員にはお客様の支持獲得に執念を燃やす高い意識が求められます。

データでは、これら創業メンタリティの特徴がみられる企業の利益率は、市場平均を大幅に上回っています。単なる企業風土や社風の話ではなく、実益に大きく関わるものでもあるのです。

危機を予測し、乗り越えるため「創業メンタリティ」育成を

企業が地位を確立していくうえで規模の拡大は欠かせませんが、その過程で多くは創業メンタリティを失い、自ら成長を止めてしまうのです。たとえば、組織が官僚化して現場の声が届かなくなったり、顧客よりも上司や社内の意見を優先する、といったことは、経験がある方も多いでしょう。

ただし、創業メンタリティは学習可能なものであり、組織内部を見直すことで立て直しはできると私たちは考えています。失速した企業の多くは、創業当時の理念を見失いつつあります。過去、会社を輝かせていた尖りは何だったのかを問い、それを時代に合わせて再構築することが重要です。加えて、複雑化した事業ポートフォリオ、組織、プロセスを単純にします。それによって組織の焦点は定まり、社長と現場の距離は縮まり、正しい意思決定を迅速に行えるようになるでしょう。さらに、複雑性から解放されることで、リソースは次の尖りを生むための投資に向かうことができるようになり、永続的な成長につながるのです。

外部要因とは異なり、内部の危機は予測も対処も可能です。トップも現場も、創業メンタリティの維持・回復を考え実行することが、持続的な成長の鍵だと考えています。

火浦 俊彦(ひうら・としひこ)
べイン・アンド・カンパニー東京オフィス会長兼パートナー
 30年にわたり、オーナー企業から大企業、プライベートエクイティファンドまで幅広く企業変革に関与。近年は戦略、組織を中心に新たなビジネスモデル構築やイノベーションを手がけている。監訳書に『創業メンタリティ』(日経BP社)、編書に『企業価値4倍のマネジメント』(日本経済新聞出版社)など。
「ニューススクール」は随時掲載です。

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