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復職に備えて育休中にスキルアップ プログラムが活況

 

2017/1/11

 育児休暇を経て仕事に復帰する母親を後押しするプログラムが活況だ。仕事で得たノウハウや技術を生かして社会貢献する「ママボノ」と、育休中の母親が経営学の基礎などを学ぶ「育休プチMBA」の2つのプログラムを取材した。参加者の家庭や職場環境は様々だが、育休中にスキルアップしてから復職したいというポジティブな思いは共通していた。

 「ママボノ」は、NPO法人サービスグラントと日本財団の共催プログラム。保育サービスを手がけるNPO法人やガン患者の会など10団体を、母親たちが手助けして、それぞれの団体が抱える悩みの解決につなげるのが、プログラムの目標だ。約70人の母親たちが団体ごとに10チームに分かれ、約1カ月半かけて改善策などをまとめた。

 保育サービスを提供するNPO法人「子育てネットワーク・ピッコロ」を支援する母親6人のチームに密着した。11月初め、東京都清瀬市で6人とピッコロ運営者が初めて面会。子連れで現れた6人の職種はメーカー、サービス業、IT(情報技術)など多種多様だ。「中長期的に、どこを目指しているのですか」。バリバリ仕事をこなしていたころの感覚を思い出しているかのように、6人は次々に質問を畳みかけた。チームのリーダー、竹田布美子さんは「育休前、職場では何をやるべきかを第一に考えていた」。ところが、メンバーは家庭も生活のペースも様々。べき論だけでは前に進まない。「みんながどうしたら動きやすいのかを考えるようになった」と、ママボノでの活動を通じて仕事観が変化したという。

NPO法人などの課題解決を手助けするママボノで活発に議論する参加者たち

 ママボノはサービスグラントが2014年から始めたプログラムで、日本財団との共同開催となった今回は参加人数・規模が大幅に拡充された。厚生労働省によると、1996年度に5割を切っていた女性の育休取得率は、2015年度は81.5%になった。サービスグラントのママボノ担当、樫尾直美さんは「育休前と同じか、それ以上に働ける、と自信を付けてから職場に復帰したいというニーズが高まっている」と分析する。

 今回密着したもう1つのプログラム「育休プチMBA」は、経営学の博士号を持つ国保祥子さんが代表を務める勉強会。2014年7月に、ケースメソッドを用いて育休中に経営学を学ぶ数人の集まりとしてスタートした。口コミなどで評判が広がり、すでに参加者は延べ2000人を超えた。

 昨年11月、都内で開かれた勉強会を訪ねた。この日のケーススタディーは、旅行会社に勤める架空の女性「貴子さん」が育休明けで復職する際、人事部長とのコミュニケーションに難しさを感じるというもの。参加者それぞれの身に今後、リアルに降りかかることが予想される内容だ。参加者からは「貴子さんは復職の事前準備ができていない」などと厳しい意見が相次いだ。議論はその後、「なぜ準備不足に陥ったのか」「人事部長の立場からはどう見えるのか」などと視点を変えながら進んでいった。

子連れで集まった母親たちが経営学の基礎を学ぶ育休プチMBA

 育休プチMBA副代表の小早川優子さんは、「復職後は育児のため残業しづらくなる。だからこそ、仕事の優先順位を付けたり、仮説を立てたりするなど、思考の質を上げてカバーしなければならない」と経営学の重要性を説く。その上で、「復職した人が過度の権利主張をしてしまうこともある。例えば、会社から見たらどうか、上司から見たらどうかなど、他者の視点を入れることが大切ということを理解してほしい」と強調する。

 今回、2つのプログラムに密着してわかったのは、育休中だからこそできるネットワーク作りやスキルアップの方法があるということ。ある母親の言葉が心にとまった。「一歩踏み出せば、異業種の母親と出会ったり、職場や家庭での境遇が似通った母親とつながったりできるのは、この時期ならでは。世界が格段に広がった」。こうしたつながりは、ビジネスの世界でも将来生きてくる機会があるかもしれない。

 (映像報道部 桜井陽)

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