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デビッド・ボウイ大回顧展 日本文化愛したカリスマ

「DAVID BOWIE is」

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NIKKEI STYLE

昨年1月に亡くなった英ロックスター、デビッド・ボウイの半世紀にわたる創作活動を振り返る大回顧展「DAVID BOWIE is」が8日、東京の寺田倉庫で始まった。音楽だけでなくアート、ファッションをはじめ幅広い分野に多大な影響を与えたボウイの創作の裏側が、300点にも及ぶ衣装や映像、写真、舞台デザイン、楽譜、絵コンテ、歌詞などで浮き彫りにされている。

ボウイは69歳の誕生日に当たる昨年1月8日、意欲的な新作アルバム「★(ブラックスター)」を発表し、わずか2日後の1月10日に肝がんで亡くなった。あれから1年。存命なら70歳になる日に東京で大回顧展がスタートするのは奇縁というべきだろう。日本流にいえば10日が一周忌である。

この回顧展は2013年にロンドンの芸術とデザインの殿堂、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)で開催されたのを皮切りにカナダやブラジル、ドイツ、米国、フランスなど世界9カ国を巡回してきた。観覧者数は160万人を超え、V&Aの史上最多記録を塗り替えている。

筆者は5日と6日に一足早く内覧会を見てきた。2回見ても味わい尽くせないほど充実した内容だった。同展の最大の特徴は音と映像を併せて鑑賞する体験型の観覧方法を採用している点だ。全入場者にヘッドホンと小型の機器が配られるが、観覧者は機械のボタンを操作する必要はない。展示品に近づくと、それにまつわる音楽やインタビュー音声が自動的に流れてくる。

「ボウイがまだ10代でアーティストとして日の目を見ず、苦労していた時期のものまできちんと保存されていたから、彼のインスピレーションの原点となる品々まで展示することができた。アーティストとしてのボウイがどのように形成されたか、展示を通して分かっていただけると思う」と同展のキュレーターを務めるV&Aのビクトリア・ブロークスさんは言う。

ボウイは1963年、16歳で学校を辞めてロンドンの広告代理店に就職し、1年後にはプロのミュージシャンを目指して退職している。商業的には鳴かず飛ばずの時代がしばらく続くのだが、自分の宣伝ポスターを自らデザインしているのをはじめ、スターになる未来を確信して着々と準備を進めていたとしか思えない自己演出と自己研さんの数々に改めて驚かされる。

若き日のボウイのアパートに飾ってあったというチベット仏教の仏画(版画)が展示されているのも目を引くが、彼はやがて新旧の日本文化に傾倒していく。「ボウイと日本の関係は特別といえます。伝統を重んじながらもモダンなものを求める日本文化の物の見方、考え方にボウイはとても共感していました。だから当初はこの展覧会もロンドンの後、すぐに東京で開催するつもりでリサーチしていたのです」とブロークスさんは明かす。

特にボウイの歴史を語るうえで欠かせないのがファッションデザイナー、山本寛斎との関係だ。会場のあちこちに寛斎の衣装が展示されている。ボウイは1971年にロンドンで寛斎のショーを見て、その造形にほれこんだという。同展では「僕が求めていたもののすべて。斬新で、挑発的で、照明の下で着るには信じがたいほど暑い」という寛斎の衣装に対するボウイの言葉が紹介されている。

「デビッド・ボウイ」と読める「出火吐暴威」の漢字が躍る白いマントをはじめ、寛斎が手がけたボウイの衣装には有名なものが多いが、中でも印象深いのはニット製のキャットスーツだ。ボウイは1973年に来日した際に、このスーツ一式を受け取り、ファンがまねられるように型紙まで発売している。ボウイは自分とは違う異質な人間になれるものとして、日本のファッションを積極的に取り入れたのである。

日本の影響といえば、会場で異彩を放っているのがボウイが描いた三島由紀夫の肖像画だ。1977年、つまりボウイがベルリンにいた時代、彼のアパートのベッドの上に飾られていた。三島の長編小説「午後の曳航」はボウイの愛読書だった。

日本会場のオリジナルとして、ボウイが出演した「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)のコーナーも特設されている。共演した北野武と坂本龍一がボウイ論を語る映像が流れる。翻訳して世界中で見てもらいたい映像だ。

ボウイがベルリンに移住していたころの展示品で、音楽ファンの目をくぎ付けにしそうなのが古風なアナログシンセサイザーだ。まだベルリンの壁が存在していた時代、分断された街という存在に触発されたボウイは、ここで創造力を爆発させた。ブライアン・イーノと共同でレコーディングしたベルリン3部作「ロウ」「ヒーローズ」「ロジャー」で使われたのが、この骨董品のようなシンセサイザーだ。1999年になってイーノが「ほかのどんな機材とも違う(音楽的なサウンドとしての)ノイズを発する。工夫して使ってみてくれ」という手紙とともにボウイにプレゼントしたのだという。

寛斎以外の衣装で目を引くのは、1997年のアルバム「アースリング」のジャケット写真でもおなじみの英国国旗をあしらったユニオン・ジャック・コートだ。こうして会場で現物を前にすると感慨深い。1960年代にザ・フーのピート・タウンゼントが着ていたユニオン・ジャックのコートなどに触発されたもので、英国の伝統的な仕立て技術と因習を打破するパンクの美意識を融合させ、アレクサンダー・マックイーンとボウイが共同でデザインしている。

従来のあやふやな説を裏付けるような展示もある。ボウイはジョージ・オーウェルの反ユートピア小説「1984」などに触発されて作ったアルバム「ダイアモンドの犬」(1974年)の映画化を目指していたが実現には至らなかった……がロック界の定説だが、確たる物的な証拠はなかったそうだ。会場には映像の設計図ともいえるカラフルな絵コンテが堂々と展示されている。ボウイが本気で「ダイアモンドの犬」を映画化しようと考えていたことを裏付ける決定的な資料だ。

筆者が最も驚いた展示は短い耳かきのような「コカインのスプーン」。キュレーターのブロークスさんが「ボウイの上着のポケットから見つけた」と明かしてくれた。ボウイは生前、2013年にロンドンで同展を見ている。奥さんと娘さんを伴って訪れたという。7万5000点にも及び、きちんとリスト化された膨大なデビッド・ボウイ・アーカイブを「自由に使ってくれていい」とブロークスさんらスタッフに託し、スプーンを含めてどの展示にも文句は言わず、熱心に観覧したそうだ。

展覧会の計画が動き出したのは2011年のこと。ボウイが長らく公の場に姿を見せなくなっていた時期だ。ロンドンで同展が始まった2013年3月、時を同じくしてボウイはアルバム「ザ・ネクスト・デイ」で復活を遂げている。「非常に奇妙なことで、それが偶然の一致なのか、展覧会の企画自体がボウイの復活を後押しすることになったのか、今でも分かりません」とブロークスさんは言う。

内覧会を見た日本のロックギタリスト、SUGIZOが「音楽にさほど詳しくない人でも感動できるポピュラリティーと音楽マニアにしか分からないマニアックさ。その両方を最もバランス良く、世界的なレベルで備えていたのがボウイだと思う」と記者団に語ってくれたが、まさにその特性がよく表れ、幅広い層がそれぞれに楽しめる展示になっている。

展覧会の公式サポーターを務め、ボウイの大ファンだという女優の二階堂ふみが記者団に話してくれた言葉も紹介しておこう。「最初は単にファッションや曲が格好いいと思ってボウイを好きになったのですが、自分が表現者になってもっと分かってきました。新しい自分を見せていくこと、つまり変化を恐れず、常に挑戦していく姿。そこに今は最も影響を受けています」。確かにボウイの大きな魅力はそこにある。観覧者の創造性を刺激して「君にもできるよ」と誘ってくるような展覧会だ。

(編集委員 吉田俊宏)

「DAVID BOWIE is」展は1月8日~4月9日、東京・天王洲アイルの寺田倉庫G1ビルで。毎週月曜日(1月9日、3月20日、3月27日、4月3日は除く)は休館。

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