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もうかる家計のつくり方

「ぜいたくショック療法」で立ち直った家計 家計再生コンサルタント 横山光昭

 

2017/1/11

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 お正月は初売りやお年玉などにお金をいっぱい使って、なんとなく後悔している人も多いようです。この時期になると、数年前に相談に来られた会社員のAさん(52、当時)を思い出してしまいます。

 Aさんは平たくいうと、「買い物が好きな人」です。専業主婦の奥さん(49)と公立高校2年生の息子との3人暮らしなのですが、家族の誰よりも買い物が好きなのです。あれもこれも欲しいと、よく言えば「人間らしく物欲がある人」、悪く言えば「節操がないタイプ」でした。

 前年末の冬のボーナスが例年より少なかったそうで、「買い物は我慢、我慢です」とため息をつきながら残念そうな顔つきでした。ですから私は、「そんなに気分が沈むなら、思い切って使ってみたらどうです?」と伝えました。そして、「そこから何かを感じ取れるかもしれませんよ、きっと」と付け加えました。

 Aさんはやりたいことを我慢すると引きずるタイプにみえたので、ショック療法というわけではないのですが、やりたいようにやってもらったのです。

 ただし、「何に使ったのか」と「金額」をきちんと記録しておくこと、そして、それについて正直に本音で私に話すことの2つを約束してもらいました。

 本当は奥さんと話し合ってもらうのが一番なのですが、Aさんの奥さんはあまり家計に関心はないそうで、お金の使い方について話し合いをしようとすると、決まってけんかになるそうです。ですから、私に話してもらうことにしたのです。

 このような約束をし、年末年始を過ごしてもらい、その後、Aさんが約束どおり報告に来ました。

 年末は大みそかに食べたすき焼き用の国産牛や高級な年越しそば、年始はおせちにカニ、お刺し身、お酒。他にも、奥さんと子どもから「初売りに行きたい」「福袋が欲しい」などの要望があり、それらに盛大にお金を使いました。

 親戚と会ってお年玉をあげたり、ちょっと豪華な手土産を用意したりもしました。ついでに、自分が欲しかった靴(8万円)やコート(5万円)なども買いました。とにかく、遠慮なく、躊躇(ちゅうちょ)せず、思う存分消費したそうです。それが彼の要望だったし、私との約束だったからです。

 予定通りともいえる買い物の感想を聞いてみました。するとAさんは「良いと思ったこともあったけれど、お金を使い続けて気分爽快という感じばかりではなかった」と言います。

 良い点は納得いく良い品物を買えたこと。自分用に購入した靴やコートは「品質がいいので長く使えそう」と満足したそうです。良くなかった点は「なんだかどこかしら罪悪感が残ったこと」だそうです。それと「お金がなくなってしまったこと」。当たり前のことなんですけれどね。

 つまり、いいものは買ってそこそこ満足はしたものの、自分にはなじまないぐらいの金額を使ってしまったという空虚感と、お金がなくなったという事実をはっきりと認識したのです。

 何事も良い面と悪い面がありますが、それが見えたことが収穫でした。お金を使えばいい物が手に入りますが、それに対する罪悪感もどこかにあり、貯金できない状態に陥る。当たり前のことなのですが、ここが見えていない人が多すぎるように感じます。

 悪い面がしっかり見えたことで、Aさんは変わりました。自分の適切なお金の使い方、つまり自分なりの消費の仕方をつかめたのです。特に、年末年始など出費がかさむ時期に、いかにしてお金と上手に付き合うのかについて感じたことがあったようです。

 この出来事をきっかけに、Aさんはお金とうまく付き合い、きちんと蓄えをしたいと思い立ち、毎月の家計の支出に目が向かいました。実は、毎月のやりくりから貯蓄ができていない「ギリギリ家計」だったので、ここを改善すればもっとお金とうまく付き合えると思ったようです。

 このような状態になって、Aさんと私は家計の見直しに着手しました。生命保険料や通信費だけでなく、食費や日用品、教育費も気になり始めたようです。

 生命保険は保障を見直し、通信費は格安スマホを取り入れて毎月の支払額を抑えました。食費と日用品は無駄な買い物をしていないか振り返るとともに、1週間の支出に予算を決めて買い物をするようになりました。教育費は子どもと相談して2つ通っている塾のうち、サボりぎみになっていた塾をやめました。

 その結果、支出を5万5000円削減でき、貯蓄に回すことができるようになりました。

 こうして支出の見直しをする過程で、奥さんともお金について話し合いができるようになってきました。息子さんとも進学費用について話し合いをするようになったそうです。年末年始の支出をきっかけに、毎月の家計が大きく変わり、家族とも考え方を共有していけるようになったのです。

 Aさんのように、自分の消費の仕方を認識することで悪いところが見え、それが家計全般にいい効果をもたらすことがあります。現実から目を背けず、自分に正直に向き合うことで変化することもあるのです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は2017年1月25日付の予定です。

横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計180万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
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