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小沢コージのちょっといいクルマ

新型CX-5 絶好調マツダに「本当の勝負の時」

 

2017/1/11

マツダのクロスオーバーSUV「CX-5」。米「ロサンゼルスモーターショー2016」で世界初披露した。価格は246万2400円~352万6200円

 2012年に登場しマツダの改革路線のスタートとなったCX-5がモデルチェンジを遂げた。自動車評論家の小沢コージ氏は「今回のモデルチェンジがマツダにとって本当の勝負の時」と指摘する。果たして、その意味は?

■「いったいどこが変わったの?」なフルモデルチェンジ

 近々の国内販売こそ落ち気味だったが、ここ最近完全に勢いに乗っている日本のマツダ。2012年の初代「CX-5」を皮切りに、スカイアクティブテクノロジーと名付けた改革路線が進んでいて、新商品群の「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」「CX-3」「ロードスター」と軒並み成功。だが、ここからが本当の正念場であり、勝負の時だと小沢は考えている。

 その象徴が先日発表され、2017年1月から国内販売が始まる2代目「CX-5」だ。これが成功してこそ、マツダのスカイアクティブ革命は本物になる。

 それはビックリするほど「変わってない」し、「コンセプトにブレがない」からである。

 具体的には新作CX-5のデザインを見ていただくのが最も分かりやすいが、どこからどう見てもキープコンセプト! 全体のフォルムであり、特徴的なマツダの五角形グリルに大きな変化はない。

 正直に告白すると、小沢は米「ロサンゼルスモーターショー2016」で遠目から初めて見たとき、「あれ? 今回はフルモデルチェンジじゃなくって、マイナーチェンジだったっけ?」と一瞬思ったほど。もちろんそれは勘違いだったのだが。

五角形グリルに大きな変更はない

■実はすべての面で良くなっている

 近くで見てみると、担当デザイナーの諌山慎一氏が「今回は進化ではなく“深化”です」というように、その改良具合が深く、手が込んでいるのが分かる。

 基本となるプラットホームは初代からの補強レベルで2700mmのホイールベースにこそ変わりはないが、グリルのメタリックな下唇はより太く、なまめかしいフォルムになっているし、真横から見ると分かるがプロポーションが絶妙にワイルド化。聞けば日本刀をイメージし、フロントピラーを35mm下げてマスクを微妙に下向きにし、フロントノーズの塊感を研ぎすませている。

 さらにデザイナーが「面質」と呼ぶ、鉄板の微妙なアンジュレーションを磨き込み、緻密な美しさを演出。そのうえ、それをよく分からせるために新作ボディーカラー「ソウルレッドクリスタルメタリック」まで開発。特に外の光で見ると、初代とは別物の美しさだ。

 同テイストの美しい顔でも、お母さんとその娘ぐらいの違いがあるといっていい。

サイズは全長4545×全幅1840×全高1690mmと先代とほぼ同様ながらワイルドな印象に

 インテリアも全体の造形はもちろん、マテリアルのクオリティーが完全にワンランク上がって、輸入プレミアムブランドに迫る上質感を備えたし、走りも特に静かさ、滑らかさは先代とは完全に別物レベル。それも遮音材を単純に増やして適正配置しただけでなく、ボディーの細かいスキマや穴を埋め、段差をなくし、ワイパーの位置まで変更してノイズの進入から発生まで徹底的に抑え込んだ。

 結果、走行中に運転手が小声でリアシートの人と会話できるほど静かになった。加速も特に新世代マツダの売りである、2.2Lクリーンディーゼルが改善され、エンジン震動が明らかに少なくなったうえ、立ち上がりのレスポンス、滑らかさが向上した。

 装備も先進安全システムの「i-ACTIVSENSE」が新世代になったし、ナビモニターは今までの埋め込み式からダッシュボード上の独立タイプになったし、新たにステアリングヒーターなども装備。

 つまり、速さ、乗り心地、静かさ、ハンドリング、インテリア、装備などほぼすべての面でクオリティーが上がっているのだ。

ダッシュボード上部に7インチのセンターディスプレーを配置

■いたずらにインパクトを追わない難しさ

 ただしこれらはある意味、両刃の剣だ。なぜならこれら改良点はほとんど数字に表れない。販売全体の7~8割を占める2.2Lディーゼルターボにしろ、出力特性は変わったがピークパワーは175psでまったく変わっていないし、モード燃費は車重増が影響したのか18.0km/Lと逆に微減。室内の広さやトランク容量にしてもほとんど変わってない。

 というか繰り返しになるが、新型CX-5を見ても、特にクルマに興味のない人なら「どこが新しくなったの?」と思ってしまうだろう。絵心がある人や美的センスが良い人なら「カッコよくなったね!」と即答できるかもしれないが、そういう人はそれほど多くないのが実情。恥ずかしながら、小沢もパッと見て「代わり映えしないなぁ」と思ったほどなのだ。

ラゲッジ容量はシートを倒さない状態で505Lで、先代より5Lだけ拡大

 いわば1本3000円のワインが、5000円レベルのクオリティーになったようなもので、ある意味これはこれで非常に挑戦的なフルモデルチェンジだ。今までのこのクラスの国産車は、もっと分かりやすい大衆が誰でも気づく「ドラスチックな変化」をしたものだが、それを完全否定。「本質的な改善」であり「深化」に終始しているのだから。それこそが今のマツダが取り組む“いいクルマ理想主義”の本質なのだ。

 昔から「本当にいいデザインは10年に一度出るか出ないか」といわれるがそれは本当で、この自動車界におけるモデルチェンジの結構な部分が改悪だったりする。

 表面的な、誰でも分かる燃費やパワーを数値的に良くすると同時に、デザインに目新しさを出すために、カッコ悪くてもインパクト優先の顔をまとうことはよくあるし、燃費スペックを良くするために、加速性能を微妙に落とすこともある。“本当に客のためになる進化”とは難しいものなのだ。

 無口ないい人より、冗舌なこずるい人がモテるように、生き馬の目を抜くこの世の中にあって、“モノ作り理想主義”を貫き通すのは本当に大変なことだ。だが、ある意味マツダはそこに挑戦している。

 新型を買ったお客様はもちろん、型落ち感が少なく旧型オーナーにも喜んでもらえるジミだが本質的な戦い。販売戦略でも値引きも極力抑えるワンプライス戦略を取っており、本当の勝負はまさにこれから。はたしてこのマツダ理想主義はどこまで通用し、支持されるのか?

 そこが見ものである。

ボディーの微妙なアンジュレーションを引き立てるために新しいボディーカラーも開発したという

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

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