スマホ視聴、全番組録画 進化したレコーダーの魅力
テレビ番組のレコーダーはお持ちだろうか。アナログ停波と共に使うのをやめてしまった人は少なくない。最近の薄型テレビは録画機能を搭載しているモデルが多いため、「テレビで録画すれば十分」という人も多いことだろう。
確かに「番組の録画と視聴」についてはテレビ内蔵機能でも十分に楽しめるのだが、レコーダーにも独自の魅力がある。スマホでの視聴や動画配信サービス対応、録り逃しや見逃しを防ぐ機能などだ。
「長時間録画」「スマホ視聴」「常時録画」がポイント
では、どのような人がレコーダーを買うといいのか。まず、Blu-rayディスク(BD)に対応しないDVDレコーダーを持っているという人はすべて買い替えどきといっていい。長時間録画に対応していない初期のBDレコーダー(長時間録画機能は2007~2008年にかけて登場)もそろそろ買い替えどきだ。
レコーダーを持っていない、使っていないという人には「スマホ視聴」をお勧めしたい。レコーダーで録画した番組をスマートフォンやタブレットを使って外出先で視聴できるようになる。
もう1つのポイントは「常時録画」。常時録画というのは、特定のチャンネルを短いもので数日間、長いもので1カ月程度、すべて録画し続けるというもの。東芝の「REGZAサーバー」シリーズを皮切りに、パナソニックも「全自動ディーガ」シリーズをラインアップしている。このカテゴリーはそれほど大きく広がっているわけではないのだが、着実に進化している。録り忘れという概念がなくなり、ウェブサイトの記事やツイッターなどで話題になった番組を後から視聴できるなど、一度体験するとテレビの見方が変わるインパクトを持っている。
主要メーカーは「外出先でスマホ視聴」に対応
「スマホ視聴」は新たにレコーダーを購入する動機になり得る機能だ。2016年10月に行われた東芝「REGZAブルーレイシリーズ」の発表会に登壇した東芝ストレージ&デバイスソリューション メモリ営業推進統括部メモリ新規ビジネス営業推進部参事の長谷直紀氏によると、同社が今年実施した「地デジ持ち出しアンケート調査」では「録画番組を頻繁に持ち出したい」というニーズは86.7%にも上ったという。
現在、BDレコーダーを製造販売している大手メーカーはシャープ、ソニー、東芝、パナソニックの4社だが、シャープは「外からリモート視聴」、ソニーは「外からどこでも視聴」、東芝は「おでかけいつでも視聴」、パナソニックは「外からどこでもスマホで視聴」と、それぞれ分かりやすい機能名を付けている。
基本的にどのメーカーも最新モデルの全機種でスマホでの外出先視聴に対応しているが、搭載するチューナー数によって外出先で利用できる機能に違いがある。例えば1チューナーしか搭載しないモデルの場合、番組録画中にスマホからテレビ番組を視聴することはできないなど、制限事項が多くなる。家の内外でレコーダーを活用したいのであれば、最低でも2チューナー、できれば3チューナー搭載モデルを選びたい。
レコーダーの乗り換えやすさがアップ
番組録画機能に関しては、保存のしやすさも以前に比べてアップしている。従来は内蔵HDDや外付けHDDに録画した番組を他のレコーダーに移すことはかなり困難だった。例えば「古いレコーダーの調子が悪いから、新しいレコーダーに乗り換えて、古いレコーダーの外付けHDDをそのまま使いたい」というニーズには応えてくれなかった。外付けHDDと本体とは1対1の暗号化がなされており、他の機器にはつながらなかったためだ。そのため、このような場合はBDに書き出すか、ネットワーク経由で転送するしか方法はなかった。
しかし「SeeQVault」対応レコーダーや対応HDDでは、内蔵HDDに録りためた番組を外付けHDDに移動したり、外付けHDDに録りためた番組を内蔵HDDに移動したりが自在にできる。メーカーが異なるとコピーや移動ができなくなる場合が多いのでその点は注意が必要だが、同一メーカー間なら安心してレコーダーを買い替えられるという点は従来と比べて大きく改善した。
SeeQVault対応レコーダーではなくても、ここ5~6年ほどのBDレコーダーではBDメディアからの番組の「書き戻し」ができるようになっている。BD-RE(書き替え可能なBDメディア)に保存した番組であれば、再度HDDに書き戻し(ムーブ)ができるというもの。SeeQVaultに比べて手間はかかるものの、どうしてもHDDに入れておきたい番組などがある場合は、そういう方法も利用できるので参考にしてほしい。
選ぶポイントは常時録画機能が必要かどうか
2011年に東芝が発売した「REGZAサーバー」を皮切りに、「常時録画レコーダー」というカテゴリーも広がっている。現状では東芝のREGZAサーバーシリーズと、パナソニックの「全自動ディーガシリーズ」の2シリーズがラインアップされている。
これらは複数のチューナーを搭載しており、内蔵もしくは外付けHDDに設定したチャンネルを常時録画できるというもの。1日24時間録画するパターンもあれば、夜7時から10時までのゴールデンタイムのみなど好みに合わせて設定することができる。
最も分かりやすいのがパナソニックの全自動ディーガだろう。最上位モデルの「DMR-BRX7020」(実勢価格14万1970円)は11チューナーに7TB HDD、「DMR-BRX4020」(同9万7510円)は7チューナーに4TB HDD、「DMR-BRX2020」(同5万9660円)は7チューナーに2TB HDDを内蔵しており、DMR-BRX7020なら地デジからBS、110度CSまで含めた最大10チャンネル、DMR-BRX4020/2020なら同じく最大6チャンネルを常時録画できる。画質を下げて長時間録画にすれば、DMR-BRX7020で10チャンネル×28日間、DMR-BRX4020で最大6チャンネル×36日間、DMR-BRX2020で最大6チャンネル×16日間もの常時録画が可能なのだから驚きだ。
一方の東芝は「DBR-M590」(同15万2260円)と「DBR-T670」(同6万9280円)の2機種をラインアップする。DBR-M590は9チューナーに6TB HDDを搭載するモデルで、最大9チャンネル×15日間の常時録画が可能。DBR-T670は最大3チャンネル×23.5日間と、いずれもパナソニックに比べて若干控えめだ。
どちらも、常時録画した番組から好みの番組を探し出せる機能が充実しており、自分好みの番組との"出合い"があるのが常時録画レコーダーの楽しみだ。「常時録画期間が長くても無駄に保存してしまうだけで意味がない」という場合もあるが、3話ぐらいからSNSなどで盛り上がり始めたドラマなどを見たいと思った場合、2週間ほどさかのぼれると安心できる。このあたりは価格とのバランスで選ぶといいだろう。
外出先での視聴や常時録画に加え、もう1点紹介しておきたいのが4Kブルーレイ(Ultra HD Blu-ray)への対応だ。現状では4Kブルーレイへの録画はできないためプレーヤーのみとなるが、パナソニックはBDレコーダーに4Kブルーレイ再生機能を搭載したモデルをラインアップしている。4Kテレビを持っていて、4Kブルーレイの高画質な4Kコンテンツを楽しみたいという人は、「Ultra HD対応モデル」をお薦めしたい。
最低ラインは2チューナー、1TB HDD以上
では、メーカーごとのレコーダーの特徴とお薦めモデルを紹介していこう。基本的にチューナーは多いに越したことはないということを覚えておいてほしい。チューナー数が多くてHDD容量が大きいほど使い勝手はいいが、当然価格は高くなる。ただしHDDは増設することも可能なので、チューナー数が多くてHDD容量が少ないモデルを選ぶという選択肢もある。
外出先からスマホで視聴する機能はいずれのメーカーの製品にも付いている。製品を選ぶときは、まずは常時録画が必要かどうかを考えよう。常時録画が必要ならば、今のところ、パナソニックか東芝のレコーダーが選択肢になる。コストパフォーマンスを考えるとパナソニックに軍配が上がる。東芝はむしろ、時短機能がある非・常時録画モデルの方がお薦めだ。
常時録画は不要という人は録画や再生の機能に注目しよう。これはメーカーによって持ち味が異なる部分だ。
パナソニックは、「新番組/特番おしらせ」機能を搭載している。新たに始まった番組や、通常スケジュールとは異なる特別番組を見逃したくないという人向けだ。
東芝は、「録画した番組を見る時間がなかなか取れない」という人向け。本編以外を飛ばしたり、本編を1.3倍速で再生するなどの機能がある。
ドラマ好きならシャープがいいだろう。新作の連続ドラマを4週間分取り置きする「ドラ丸」機能は、地デジだけでなく、BS放送もフォローしている。
自分ではなかなか気づかない人気番組に出会うチャンスがあるのがソニーのレコーダー。「みんなの予約ランキング」では、ソニーのレコーダーのユーザーたちが予約録画している番組をランキングで表示する。外出先でチェックして、予約録画数がトップの番組や急上昇している番組をスマートフォンから予約するといった使い方ができる。
なお、常時録画の機種を選ばない場合の最低ラインは「2チューナー/1TB」。3チューナー以上を搭載していると、使用の自由度が増す。
(IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)
[日経トレンディネット 2016年12月13日付の記事を再構成]
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