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甘いもの食べたら走る 目標を持った体調管理術に学ぶ 人気トレーナー・中野ジェームズ修一さんのカラダメンテ術(3)

日経Gooday

2017/1/23

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 仕事にオフタイム、生活の質を上げるには健康な体でいることが大切だ。それを実現するために自らが実践している方法を、卓球の福原愛選手や、箱根駅伝で3連覇を果たした青山学院大学陸上部のフィジカルトレーナーを務める中野ジェームズ修一さんに聞くシリーズの3回目。前回「『どんな時も起床時刻は変えない』プロの体調管理術」で紹介した健やかな体づくりに欠かせない「生活リズムのつくり方」に関連し、今回は、中野さん流「体調管理術」について聞いた。

■コンディショニングやリカバリーに対する考え方を変える

 みなさんはよく「コンディションを整える」「疲労を回復させる」という言葉を使います。体調を整え、酷使した体をその前の状態に戻すという意味だと思いますが、いったん崩れた体調、疲れた体を元に戻すのは、それなりに時間や労力が必要で、簡単なことではありません。

 重要なのはそうならない段階で、予防医学的な観点で体づくりをしていくことです。私たちフィジカルトレーナーは、選手の体を見たり実際に触ったり、あるいは選手と話をしたりして体の状態を感じ取ります。そして、このまま練習を続けていくと、あるいは試合に出ると、こういう障害やケガが起きるから、このストレッチや強化メニューをやってくださいとアドバイスをします。そうすることでケガや障害が避けられ、選手は万全の状態で練習や試合に臨めるわけです。

 医療従事者であれば、ケガをしたときに治すので、選手からありがとうと感謝されますが、私たちはあまり言葉に出して感謝されることがありません。ケガも何も起こらない、つまり効果が実感できないわけですから当然といえば当然ですね。だから私はドラえもんと出会いたい。「タイムマシンに選手を乗せて、ストレッチやリカバリー、強化メニューをしないと1年後にどうなるかを見せてあげたら、もっと感謝されるんじゃないか」と思うことがあります(笑)。とにもかくにも、選手たちの体に異変を起こさせずに好成績を収めてもらうことは、私たちの仕事が成功したといえる証しです。

■体形維持のためのランニングとウエートトレーニング

 そんな私自身の体調管理や体調維持の方法についてですが、月間80~100kmを走るようにしています。これは、体調管理に加えて、フルマラソンやウルトラマラソンに出るためでもあります。スピードは、1kmあたり5分程度が一番気持ちがいいペースです。走るのはだいたい週末ですが、5分を切ろうとすると、ちょっとキツイ感じになってきます。

 それに加えて、ウエートトレーニングもやっています。週に何度か、グループレッスンでデモンストレーションをする時に行うほか、自分自身のためにも週1回くらいは真剣にやっています。

 もし、ジョギングなどをこれから始めようというのであれば、ペースに関しては、個人の体力差があるので、自分ができる範囲で一番気持ちよく走れるスピードでいいと思います。最初から無理をする必要はありません。

 上述した通り、私が走ったり、筋トレを行ったりする理由は2つあります。まず、体形の維持です。なぜなら第1回でも少しお話ししましたが、私は食べることが大好きなのです。もちろん、14品目の食事は守っていますが、食べる量も多いし、甘いものやおいしいパンを探し歩くのも趣味の一つです。ですから、摂取した分のカロリーは消費しないと、体脂肪が増え過ぎるのです。

■「ケーキ+ポテトチップス」もランニング10kmでなかったことに

「パンやケーキが大好き」と話す中野さん。写真はある日の朝食。スモークチキンのサンドと、アーモンドとシリアルとはちみつのかかったヨーグルト(中野さん撮影)

 ケーキ1個で約400kcal。甘いものを食べるとポテトチップスなど塩気のあるものも食べたくなりそれが300kcalだとすると、合計700kcal。私の体重(約70kg)だと10km走れば約700kcalを消費できるのを分かっているので、そして私は走ることが大好きなので、好きなものを食べつつ、しっかり走って体形を維持するようにしています。

 トレーナーとして、時にはクライアントに食べたいものを我慢してもらったり、キツイ運動をしてもらったりすることがあります。その時に、指導する側が太っていたり、走れなかったりすると説得力がないですよね。それに、人には指導しておいて、自分は何も苦しい思いをしないのでは申し訳ない気持ちになります。ですから、体形や筋力維持のために走ったり、筋トレを行ったりしているのです。

■自分の体験を選手の体調管理に生かす

 もう一つの大きな理由が、選手たちの気持ちや体の感覚を、自分自身の体と心で実感するためです。一気に100kmを走るウルトラマラソンに出場するのもそのため。フルマラソンも何度か出場していますが、目標に向かってチャレンジしていくと、選手の気持ちが分かってくるのです。

 2016年も、リオ五輪が終わったらウルトラマラソンに出ようと決めていて、実際10月に、四万十川ウルトラマラソンで完走しました。私たちは普段、選手が最善の結果を出せるよう、極限の状態を求めてトレーニングを行わせます。だからこそ、選手と同じように目標に向かって突き進むという課題を自分に課しているのです。

 そんなふうに体を酷使することで、例えば何日で体を回復させられるかといったことを、自分の体で試しているという側面もあります。選手にやってもらっているアイシングやストレッチ、温めることと冷やすことを繰り返す交代浴など、どんなときにどの方法が一番向いているのかなどを自分で体験できる機会でもあるのです。実際に自分でやってみると、アイシング一つ取っても「もっと広い範囲を冷やしたほうがいい」とか、「この感じの疲労には、ここに当てたほうがいい」と言ったような気づきがあります。

 100kmを走りきるために、どんな準備をすればいいのか。そして終わった後、どうしたら回復が早いのかを、本や論文に載っている理論だけでなく、私自身の体験や言葉で選手やクライアントに伝えたほうが、説得力があり現実味も出てくると思っています。実際、選手が疲労困憊(こんぱい)している時、以前は「こうやって軽く体を動かしたほうが早く回復するよ」などと言っていましたが、実際に自分が100kmを走って疲労困憊して初めて、「ああ、こんな状態だと体を動かすのは難しいんだな。だったら、横になってできることを考えよう」と思えるようになりました。自分で体験することで、そうしたヒントを得られるわけです。

愛用のシューズ

 私は上述した通り、仕事でもあり、好きでもあるから運動し、体形維持にも生かしていますが、読者のみなさんも、運動をするなら小さなことでいいので目標を持つといいですよ。

 例えばダイエットのために始めたジョギングでも、ある程度慣れてきたら、短い距離の大会に出てみたり、1km当たりの走る時間を短くできるよう努力するなど、目標の立て方はいろいろあると思います。大きな目標ではなく、少し頑張れば達成できそうな目標を立て、それを一つひとつ達成していくのが、継続のコツだと思います。

(ライター 松尾直俊/カメラマン 室川イサオ)

■この人に聞きました

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
 フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士。1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。

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