貯蓄上手な人ほど実践 年末「お金の大掃除」
昔は、神様を迎えるためにすす払いを行い、翌年の豊作を願ったという大掃除。掃除が苦手な私は、大掃除のコツについては語れませんが、それでもお金のプロとして欠かさずやっているのが「お金の大掃除」です。
まず、下の4点を確認します。
2.現在の貯蓄総額
3.年間の貯蓄額
4.現在のローン残高
大ざっぱ確認でOK!
その際に意識してほしいのは「完璧にこだわらない」こと。1円単位、10円単位で計算すると、計算や確認で疲れて、途中で挫折してしまいがち。実際の家計相談でも「ちゃんと書かなきゃ!」という方のほうが正確性にこだわってしまって、手が止まる傾向にあります。
「お金の大掃除」の目的は、あくまで「全体像を把握すること」。
例えば、数千円、1万円の誤差にはこだわらない。42万3240円なら、42万円または40万円という、ざっくりでOK。おおらかに取り組み、大ざっぱでも家計の動きが分かれば、お金の大掃除は大成功なのです!
それでは、冒頭で紹介した4点を確認していきましょう。
「年収=自分が使える収入」は間違い
【1】自分が使える収入を確認
・会社員は源泉徴収票
・個人事業主は、収入から経費を差し引いた金額
12月になると、給料明細と共に源泉徴収票をもらうことでしょう。源泉徴収票の収入欄は、誰もがチェックすると思いますが、年収からは、社会保険料や税金が差し引かれているので、源泉徴収票に書かれている年収の全てが、自分が使えるお金にはなりません。
では、自分が使えるお金はいくらでしょう? ざっくり考えるなら、会社員の場合は、源泉徴収票に書かれている年収の約8割。これが、自分の自由に使えるお金です。実際に振り込まれる金額は、会社によっては組合費などが差し引かれたり、人によっては、昼食代や財形貯蓄、保険料なども差し引かれたりするので、もっと少なくなるかもしれません。ただ、組合費や財形貯蓄などは、あくまでも自分の希望した会社や個人の希望によるものなので、ここでは、手取り収入として実際に使える収入を把握しましょう。
今の自分の貯蓄総額はいくらか?
【2】現在の貯蓄総額を確認
・記帳した通帳あるいは、オンラインの場合は残高照会
あなたの年末の貯蓄残高はいくらですか? すぐに答えられない人は、この機会に財形や持ち株なども含めて、自分の金融資産の合計額を出しましょう。
金融資産とは、普通預金や定期預金、債券、株式、投資信託などの資産のことですが、株式や投資信託は日々金額が変わります。でも、ここでも最初にお伝えした「ざっくり」でOKです。時価が分からなければ、最初の投資額でも構いません。とにかく、金融資産全体でだいたいいくらぐらいの貯蓄があるのかを知ることが目的なので、細かなところにこだわりすぎないように、でも、確認漏れの口座がないようにしてくださいね。
なお、解約返戻金がたまっていくような貯蓄タイプの保険を貯蓄ととらえる人もいらっしゃいますが、保険は支払期間中に解約すると元本割れを起こすものがほとんどです。そこで、ここではいったん、保険は除いておきましょう。
1年間にどれだけ貯蓄できたか?
【3】1年間の貯蓄額を確認
・記帳した通帳あるいは、ネットバンキングの場合は利用明細画面
・給料天引きがある人は、給料あるいはボーナスの明細書
毎月、あるいは、ボーナス増額でためている人は、年間の貯蓄額もすぐに分かることでしょう。でも、「定期的な貯蓄はやっていない」あるいは、「余った金額が貯蓄」という人にとっては、1年間にいくらぐらい貯蓄できているか、という質問には答えづらいものですよね。
味方になるのは、通帳です。昨年と今年の同時期の残高を見て、その増減を記録しましょう。昨年よりも今年の方が増えていれば、それが1年間の貯蓄額の目安です。増えていることが理想ですが、例えば車や家などの高額な買い物をした場合は1年間の貯蓄がマイナスになることもあります。その場合は、使ったお金の満足度や必要性などを振り返ります。
なお、まとまった金額を使った記憶がないのに、昨年よりも今年の貯蓄が減っている場合は、要注意です。減っている理由が自分で分かればいいのですが「なぜか減っている」「なぜか増えない」というような場合は、赤字家計に慣れっこになっている可能性があります。
ローンの残高には無頓着になりがち
【4】今のローン残高を確認
・ローン等の明細書、契約書など
次に確認するのは、現在のローン残高です。住宅ローンやカーローン、奨学金やエステや脱毛の分割払いなど、ローンの残高を意識していますか? 毎月返済額は分かっていても、ローンの残高については無頓着になりがちです。この機会に、借入残高もしっかり確認しておきましょう。返済予定表やカード明細などで確認できますよ。
ワークシートに書くのも一つの手
この4項目は、確認しながら自分流にメモをとったり、パソコンを使ってまとめたりしてもOKですが、ワークシート形式で簡単に書き込みたいという方は、下の書式を使ってみてください。分かるところから記入シートを埋めていくだけなので、整理がラクにできると思います。
意外と時間がかかってしまうのが「お金の大掃除」の不思議なところ。新年に向けて、今できることから少しずつ始めて、「お金の大掃除」を完成させましょう。
Cras代表取締役。FPオフィス will代表。大阪在住のファイナンシャル・プランナー。中学校・高校の保健室の先生を経て、結婚、退職、住宅購入、加入保険会社の破たんを経てFPに転身。自らの住宅ローンで800万円、生命保険で1000万円の見直しを行った実績を持つ。「お金の安心と可能性をかたちにし、心の自立と輝く明日をつくる」ことを理念に「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を働く女性や子育て世帯に伝えている。新著に『本気で家計を変えたいあなたへ〈第2版〉書き込む"お金のワークブック"』(日本経済新聞出版社)。
[nikkei WOMAN Online 2016年12月19日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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