迫り来る2025年問題 改正「育児・介護休業法」とは
こんにちは。社会保険労務士 佐佐木由美子です。みなさんは、「2025年問題」という言葉を聞いたことはありますか? 少し先の未来に起こり得る、日本の姿について考えてみましょう。
私たちに大きく関係する「2025年問題」とは?
日本は、諸外国に例をみない速さで高齢化が進んでいます。約800万人といわれる団塊の世代が、2025年には75歳の「後期高齢者」となります。そして、この年齢になると、要介護の比率や認知症の発症率が一気に上がることが明らかにされています。
ここでさらに問題視されるのは、親世代の介護によって、介護離職者が加速するリスクです。総務省の調べによると、介護・看護を理由に仕事を辞めた人は、年間10万人(2011年10月以降の1年間)に達しました。
すでに年間10万人以上の人たちが介護離職を余儀なくされているのです。このままでは、団塊世代が後期高齢者となるころに、介護離職が大きな社会問題となることは避けられません。
介護を担うであろう多くの人たちは、40代後半から50代全般、つまり定年を迎えるまでの長い間、仕事と介護の両立という課題を抱えることが予想されます。
この年代は、就労者の中でも役職者や役員などキーマンとして働く世代。突然大量に退職されるようなことがあっては企業側としても困りますし、介護する家族を抱えた失業者が増えることは、社会的に深刻な問題となります。
2025年問題を踏まえて、政府は2020年初頭までに「介護離職ゼロ」を推進し、必要な介護サービスの確保と、働く環境改善・家族支援を両輪とした取り組みを行っています。
その一つとして、2017年1月1日に、改正「育児・介護休業法」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が施行されました。
介護休業の改正ポイント
介護休業で大きく変わった点を挙げてみましょう。これまでは介護を必要とする家族(対象家族)1人につき、通算93日まで原則1回に限り取得が可能とされていました。改正後は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に介護休業を分割して取得できるようになりました。
また、介護のための所定労働時間短縮措置(選択的措置義務)については、介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能とされていたものが、改正後は介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となりました。
介護のための残業免除(所定外労働の制限)についても、対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで受けられるようになります。
(注)上記は法律上における改正内容であり、会社によってこれらを上回る内容が定められている場合があります。詳しくは、勤め先の就業規則等をご確認ください。
介護保険料の見直しも
アラフォー世代の人たちにとって、10年後といえば親の介護は決して遠い話ではありません。何よりも、40歳になると、介護保険料が給与から天引きされるようになります。
受けられる介護サービスは、65歳以上(介護保険第1号被保険者)と比べると限られていますが、40歳になると私たちも介護保険被保険者(40歳~64歳までを「第2号被保険者」といいます)になるのです。
そして今後、介護保険のニーズが高まるにつれて、保険料も見直しが適宜行われていくことになるでしょう。現役世代が支払う介護保険料の見直しについては、2017年8月分から段階的に実施する方向で検討が始まっています。
現時点での「案」では、大企業に勤める会社員ら(健保組合)は平均月700円以上の負担増、中小企業の会社員ら(協会けんぽ)は逆に平均月240円程度減、公務員ら(共済組合)は平均月1970円以上の負担増という数字が算出されています。これからどのように見直しが進んでいくか、気になるところです。
今後は、身のまわりで介護する人・される人は、増えていくでしょう。自分の上司が介護休業を取る、ということもあるかもしれません。そうしたときに、私たち一人ひとりにかかわる社会全体の問題として、捉えていきたいものです。
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、「働く女性のためのグレース・プロジェクト」でサロン(サロン・ド・グレース)を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
[nikkei WOMAN Online 2016年12月20日付記事を再構成]
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