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ナノ構造の「透明マント」 姿を隠す海の生き物発見

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

広々とした海の中でも、生き物たちは過酷な生存競争を繰り広げている。隠れ場所の少ない海中で、捕食者に見つからずに生き延びるには、身を隠す手段をもつことが重要だ。

例えば、コウイカの皮膚には色細胞と呼ばれる特殊な細胞が約1000万個もあり、体の色や模様を変えてサンゴや海藻、砂などに擬態できる。

だが身を隠すものが何もなく、見通しの良い海の真ん中では事情が違ってくる。そんな海中で最も効果的なカムフラージュの方法とは? 答えは無色になること、すなわち体を透明にして、周囲を取り巻く水になりきってしまうのだ。

ところが海の生き物のなかには、さらに上を行く「忍びの術」の使い手がいることがわかった。光の反射を防ぐ層で体表を覆うことで、まるで透明なマントにくるまったように、ほぼ姿を消してしまうのである。

「水の中にいると、ほとんど目に見えません」と、米デューク大学の博士課程に在籍する海洋生物学者のローラ・バッゲ氏は言う。「ただし目の部分だけは例外です。光を集めるために網膜に色がついていますから」

姿はまるでエイリアン

バッゲ氏の専門は透明な甲殻類で、端脚目のクラゲノミ類を主に研究している。大きなものは体長15センチ以上にもなり、見た目もかなり気味が悪い。なかにはクラゲやホヤの仲間に寄生し、映画に登場するエイリアンのモデルになったと言われる種もいる。

透明な海洋生物に興味をもつようになったきっかけは数年前、バッゲ氏が調査船に乗っていたときのことだった。

「採集した生物を入れたバケツの中には、黒っぽい不気味な魚がうようよいました。ある生物をつかみ上げようとしたのですが、その手前で何か硬いものに手が当たりました。でも、目には何も見えません。バケツから取り出してみると、それはまるでガラスのような生き物でした」

さえぎるもののない海の中では、透明な体は便利な特性だ。「影も形も見えないので、獲物を探す魚たちの目にも留まりにくいでしょう」

いったいなぜ、そこまで見えなくなれるのか。バッゲ氏は興味を抱いた。透明な体はカムフラージュにはなるが、だからと言って通常は、完全に見えなくなるわけではない。透明なグラスやセロハン紙も、目には見える。つまり透明な物質も、すべての光を透過させるわけではない。光の一部は反射し、それによって私たちの目は物の形や大きさなどを認識することができるのだ。

このため透明なクラゲノミでも、太陽や月の光に照らされれば、その姿は普段より見えやすくなるはずだ。「上からの光が物体に反射すれば、暗い背景との対比でその姿は明るく浮かび上がります」。また、発光器官をもつ捕食生物がその光で海中を照らして獲物を探せば、見つけられてしまうだろう。

ポイントは表面の「けば立ち」

しかしバッゲ氏は、クラゲノミのなかには光の反射を抑えることで、自分の姿をさらに見えにくくする種がいることを発見した。

光の透過速度は物質によって異なり、その指標として使われるのが屈折率だ。例えば真空の屈折率は1、氷では1.31だと、真空を通過する光の速度は、氷を通過するときの1.31倍速いということになる。

屈折率の異なる物質が接する境界面では、光の反射が起きる(暗い夜に、窓ガラスを懐中電灯で照らしてみよう)。クラゲノミにとって、これは危険な現象だ。屈折率1.34の海水を通過した光が、屈折率1.57の生物に当たると、生物の体の表面で光が反射する。透明なクラゲノミも、光で照らせば、その姿は明るく浮かび上がってしまうのだ。

7種のクラゲノミを研究したバッゲ氏は、そのうちフクロウミノミ属(Cystisoma)の1種では、脚の表面がナノ突起と呼ばれる微小な構造で覆われていることを発見した。「表面が毛足の長いじゅうたんのようになっていて、光の反射を弱め、和らげているのです」と、バッゲ氏は説明する。この研究結果は、2016年11月21日付の科学誌「Current Biology」に掲載された。

個々のナノ突起は、先がとがった山のような形をしている。同様の構造は昆虫にも見られ、複眼の表面の反射を抑える働きをしているという。

微生物でできた透明マントも

バッゲ氏が研究した別の種からは、違う仕組みの「透明マント」が見つかった。顕微鏡でないと見えない微小な球体でできた層が、クラゲノミの体を覆っていたのである。その正体は微生物ではないかとバッゲ氏は考えている。

「球体は、電子顕微鏡で見る細菌によく似ています。糸のようなものでクラゲノミの表面に付着していますが、同様の構造は細菌にもよく見られます」。球体の層には光の反射を抑える働きがあるとみられ、その実体が生物だとすれば、クラゲノミと共生関係にあるのではないかとバッゲ氏は推測する。クラゲノミは反射を防ぐマントをまとい、細菌は動く住居を手に入れるというわけだ。

(文 Mark Strauss、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年12月15日付]

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