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年末年始にぜひ読みたい 16年発刊、話題の経済新書

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世界を見渡すと、英国の欧州連合(EU)離脱決定、米大統領選でのトランプ氏の勝利といった「まさか」の出来事が相次ぐ一方で、日本では少子高齢化が「予想通り」に進んでいる。年末年始の読書用に、2016年に出版され、混迷する世界経済や日本経済の深層に迫る新書を紹介する。

【世界経済の危機】

なぜ、英国はEU離脱の道を選んだのか。ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり著『EU分裂と世界経済危機』は統計データを駆使し、EUの政治・経済制度の変遷に触れながら、離脱の背景を解説している。日本への影響にも触れていて、マクロの視点から問題点を把握する入門書になるだろう。北海道大学教授の遠藤乾著『欧州複合危機』は応用編。前半では、ユーロ危機、難民問題、安全保障の危機など欧州を取り巻く難題を順に取り上げ、様々な危機が同時進行する「複合危機」の現状を描き出す。その上で、欧州統合の歴史をひもときつつ、EUの「神話化」に警鐘を鳴らす。国際政治学の視点から、欧州にはEUしか生き残り策がないと指摘し、解決策を示す。

危機は世界に広がっている。伊藤忠商事元社長・会長で元駐中国大使の丹羽宇一郎氏の『習近平はいったい何を考えているのか』は、中国について一歩踏み込んで知りたい読者に最適な書。商社マンとして30年以上、中国と関わり、中国大使として2年半、中国全土を歩き、政財界の要人たちとつき合ってきたという著者が、中国の現状と行方を分析し、日本と世界がどう動くのかを予測している。

中東情勢からも目が離せない。『中東崩壊』は現地に駐在する日経新聞の記者たちが、中東全域を視野に入れて政治、経済、社会の激流を解き明かしている。最終章では、今後の動きとして、専制主義的な体制による圧政が続くシナリオ1、各地で政府の機能がマヒし、過激思想がはびこるシナリオ2、各地の民主化や社会の近代化を少しずつ進めるシナリオ3をあげ、シナリオ3に期待をつなぐ。

歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は日本でも人気が高く、数多くの邦訳版が出版されている。『グローバリズム以後』は朝日新聞のインタビューを収録した書で、混迷する世界を俯瞰(ふかん)する。同書に収録されている2016年1月のインタビューで、先進国では、共同体的な信仰の喪失、高齢化、教育革命が起こり、大きな転換期にあるとの見方を示している。

【日本経済・人口問題】

日本の未来像に影を落としているのは、人口減少だ。悲観論に傾きがちな風潮に異議を唱えるのは立正大学教授の吉川洋著『人口と日本経済』。トマス・ロバート・マルサスやジョン・メイナード・ケインズらの人口論を見据えつつ、経済成長を決めるのは人口ではなく、労働生産性の成長であり、生産性の上昇をもたらす最大の要因は、新しい設備や機械を投入する資本蓄積と、広い意味での技術進歩、イノベーションであると指摘する。超高齢社会で人々が人間らしく生きるためには、医療・介護、交通、流通などすべてが変わらざるを得ず、膨大なイノベーションが必要だとの持論を展開する。

経済協力開発機構(OECD)東京センター長の村上由美子著『武器としての人口減社会』も、人口減少は日本にとってむしろチャンスだと強調する。OECDが16歳から65歳までの男女を対象に社会・経済活動に有効なスキルのレベルを調査する「国際成人力調査」(PIAAC)の結果を踏まえ、日本人の潜在能力を引き出す労働・雇用改革を求めている。

日本経済を題材にした新書では、日本総合研究所の研究員による3冊の著書が目を引いた。1冊目は藤波匠著『人口減が地方を強くする』。人口減少の影響が真っ先に表れているのが地方だ。元岩手県知事の増田寛也著『地方消滅』(中公新書、14年)は具体的なデータを基に、消滅する可能性がある地方自治体を列挙し、大きなインパクを与えた。藤波氏は、『地方消滅』を意識するあまり、地方同士が若者らを取り合おうとする動きを批判する。「人口移動は結果であり、目標にすべきではない」と考える著者は、地場産業とICT(情報通信技術)を融合した新ビジネスなど、仕事の創出を優先すべきだと提案する。

藻谷浩介氏は、スイス在住で日本の地域支援に力を注いできた山田桂一郎氏との共著『観光立国の正体』で、地方再生の障害となっている様々な問題点を明らかにする。問題の根源となっている、改革に後ろ向きな地元の有力者を「地域ゾンビ」と呼び、厳しい視線を注ぐ。山田氏は、強い観光地の基礎となるのはそこで暮らす人たちの豊かなライフスタイルであり、観光・リゾート地としてのビジョンに限定しない地域の将来像を描き、理想と現状のギャップを埋めるために、一歩ずつ進むしかないと力説する。

3冊目は河村小百合著『中央銀行は持ちこたえられるか』。第2次安倍政権の発足後、看板政策のアベノミクスをテーマとする著書が次々と登場してきた。同書はそんな中の1冊だ。日銀が黒田東彦総裁のもとで実行してきた異次元金融緩和がもたらす負の影響に焦点を当て、「出口戦略」なき金融緩和がどんな結末をもたらすのか、具体的に推測している。欧米の中央銀行による金融緩和策との比較など参考になる材料が豊富だ。

【先人に学ぶ】

偉大な先人たちの思想を紹介し、混迷の時代を生き抜くヒントを示そうとする新書の出版が相次いでいる。グローバリズムがもたらす負の要素が膨らんでいるためか、資本主義の弊害に目を向けた思想家の人気が高まっている。

人々の欲望を支配し、世界を席巻する大企業を厳しく批判した米国の思想家、ジョン・ケネス・ガルブレイス。2016年は没後10年に当たり、関連書や復刻版の出版が目立った。京都大学名誉教授の伊東光晴著『ガルブレイス』はガルブレイスの半生記と『ゆたかな社会』『新しい産業国家』などの主著の解説で構成する。資本主義社会が抱える問題に対する伊東氏自身の見解も随所に盛り込まれている。

立教大学准教授の佐々木隆治著『カール・マルクス』は前半でマルクスの一生をたどり、後半ではマルクスの主著『資本論』の中核をなす商品、貨幣、恐慌などの概念が持つ意味を解説する。失敗に終わった共産主義運動と、マルクス自身の思想は異なると著者はみる。

フランスの経済学者、トマ・ピケティ著『21世紀の資本』は邦訳版(みすず書房、14年)が10万部を超すベストセラーとなった。資本収益率(資本の取り分)は経済成長率(労働者の取り分)を上回るという法則を、膨大な実証研究から導き出し、格差問題を考える土台を提供した。それでは、先人たちは格差や不平等の問題を素通りしてきたのだろうか。明治学院大学教授の稲葉振一郎著『不平等との闘い』はジャン・ジャック・ルソー、アダム・スミス、マルクス、アルフレッド・マーシャルらの先人が不平等の問題に取り組んできた軌跡を検証する。「先進国内の格差に注目した経済学者の多くが、物的資本よりは人的資本に注目したのに対して、ピケティ氏は物的資本に注目した」と整理している。

閉塞した経済を活気づかせる原動力としてイノベーションや企業家精神の大切さを説く論者は多い。企業家精神という言葉を耳にするとヨーゼフ・シュンペーターの名前を思い浮かべる人は多いだろう。京都大学教授の根井雅弘著『企業家精神とは何か』の副題は「シュンペーターを超えて」。企業家の役割は、シュンペーターが強調したイノベーションだけではない。根井氏が注目するのは、「(企業家にとって大切なのは)どこで新しい生産物が消費者にとって思いもかけず貴重なものになり、どこで他者には未知であった新しい生産方法が実現可能になったのかに気づく能力」と説いたイスラエル・カーズナーだ。根井氏はシュンペーターとカーズナーの企業家論を念頭に置き、企業家には「創造型」と「受動型」の2類型があるとの見方を披露する。

最後の1冊は京都大学名誉教授の佐和隆光著『経済学のすすめ』。専門論文誌への投稿を競う、「制度化」された経済学界の現状を憂う。「社会のあるべき姿を想定し、現実社会を、あるべき社会にできるだけ近づけるための手段を研究する」モラル・サイエンスとしての経済学の復興を提唱する。

今回、紹介した新書に限らず、「経済成長」「グローバリズム」「市場の均衡」といった現代経済学ひいては現代社会の根底をなす考え方に異議を唱える著書の出版が増えている。混迷する現代社会に厳しい目を向ける人が増えるのは当然ではあるが、「批判のための批判」を繰り返していても世の中は変わらない。制度疲労の色を濃くしている社会への不満を表明するだけでなく、新たな価値観や生き方、制度改革などを具体的に提示する書が今、強く求められている。

(編集委員 前田裕之)

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