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自動運転実験 NTTドコモが狙う「スマホで事故防止」

西田宗千佳のデジタル未来図

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NIKKEI STYLE

九州大学、NTTドコモDeNA、福岡市の4者による「スマートモビリティ推進コンソーシアム」は2017年1月、九州大学伊都キャンパス内にて、自動運転バス運行の実証実験を開始する。それに先立ち、16年12月13日、伊都キャンパス内で、試乗会を兼ねた記者説明会が開かれた。この試みは、「自動運転」だけを目的としたものではない。社会の中に自動運転車が入っていったときに必要な課題を洗い出し、そのために必要な技術を積み上げることにある。

試乗会から見えた、「自動車の外に必要な要素」を考えてみよう。

私有地内でじっくりと実験

まず、実験の概要から説明しよう。

実験に使われるのは、DeNAが仏EasyMileから供給を受け、国内でパートナー向けに展開している「Robot Shuttle」という自動運転バスだ(冒頭の写真)。

非常にコンパクトだが、中には運転席はなく、すべてが乗客のためのスペースなので、最大12人が乗れる。車内には、非常時のゴー・ストップを行うためのボタンがあるが、他に操作用の機器は見当たらない。運行状況を知らせるパネルやタブレットが中におかれているが、それもあくまで「表示用」だ。車体に積まれたセンサーとGPSを使い、車体の周囲の状況を把握する。その上で、車両運行管理を行う中央のシステムと連携し、完全な自動運転が行われる。もちろん、道に危険なものがあれば止まったり避けたりする。

といっても、Robot Shuttleの運行そのものは、もうニュースとは言えない。EasyMileとDeNAが積極的に売り込みをかけており、世界中の様々な場所で試験運用が行われている。日本でもイオンモール幕張新都心など、いくつかの場所で、今回の例と同じように、試験運用中だ。

現在は道路交通法の規定で、自動運転バスは公道を走れない。九州大学伊都キャンパスがテスト地に選ばれたのも、ここが完全な私有地であり、「福岡県警からも、道路交通法に抵触しないとお墨付きをいただいている」(九州大学・久保千春総長)という状況だからだ。しかも、実験中は時速9kmから10kmという遅い速度で運行する。伊都キャンパスは広大な上に坂が多く、この速度でも移動のメリットはある。実験関係者は「この速度も余裕が感じられて悪くない」というものの、試乗した学生は「もう少し速くないと、講義に遅刻しそうなときには間に合わないかも」と苦笑いした。ハードウエア的には時速40kmまで出るそうなのだが、現状のテスト状況では、このくらいが適切……ということなのだろう。

こうした実験を2017年1月から開始し、2018年後半の実用化を目指す。

「P2X」で歩行者の安全確保を

自動車は海外からの調達物、しかも遅い速度で私有地内でのテスト、ということで、あまり魅力を感じない……と思った方もいるのではないだろうか。

しかし、このテストの本質は「運行させること」だけにあるのではない。

まず、次のビデオを見ていただこう。

道沿いに立つ人の持つスマートフォン(スマホ)には、「十分に気をつけてください」という音声が流れている。視線の先には、自動運転バスがやってくるのが見えるだろう。すなわち、バスの接近をスマホが感知して警告を発するのだ。ビデオでは警告からすぐにバスが見えたが、実際には、カーブの向こうにいて、歩行者からもバスの中からもお互いが見えない、だいたい40mくらい離れたところで警告が発せられている。

これはどういうことかというと、「お互いが見えづらく、事故につながりやすい場所で、自動車の接近を相手に警告する機能が実現できる」ということなのである。

これは、NTTドコモが今回の実証実験の中で構築を目指している、「P2X」という概念に基づくものだ。P2Xとは「Pedestrian to everything」の略で、「歩行者とそれ以外の間」を指す。

NTTドコモの吉沢和弘社長は、この機能の狙いを次のように説明する。

「現在、交通事故の3割は自動車と歩行者との間で起きている。歩行者に対して安全を提供するための技術は急務。自動車の接近などを警告する機能を開発できれば、歩行者の交通事故を減らせるはず。特に高齢者や子供に対しては有用なのではないか」

すなわちこの概念は、自動運転バスに限らず、最終的には、バスやトラック、一般的な乗用車などへの搭載も視野に入れたものなのだ。

今回のデモでは、スマホに搭載したアプリを使い、自動運転バスとスマホの間にWi-Fi Directでの通信を使って接続し、接近に伴う警告の検知に使っていた。ただ、Wi-Fi Directは多数の端末を同時に扱うことを想定した技術でなく、本来機器を1対1でつなぐものであるため「あくまでこの場での暫定」的な技術だと関係者は説明する。将来は、Bluetooth LEなど、別の汎用技術を使っての実現を目指す。

「これらの技術は5Gの時代を見越してのものだが、P2Xについては、高齢者や子供のことを考えた専用端末や、スマホへの先行導入も考えられる」とNTTドコモの吉沢社長は話す。

実は、ドコモの言うP2Xに近い概念は、自動車業界でも検討が進んでいる。総務省との間で進む「ITS安全運転支援無線システム」の導入では、700MHz帯の独自帯域を使い、自動車同士、さらには自動車と歩行者の間での危険防止を考えた技術を導入することになっている。

しかし、この700MHz帯での議論は、日本独自のものであり、汎用技術でもない。全世界で販売されるスマホに搭載してもらうのは難しい。

NTTドコモの今回のテストには、「スマホ」に導入しやすい技術により、歩行者保護を推進してもらいたい……という考えも透けて見えてくる。「自動車メーカーも含め、我々の考えを相談していきたい」とNTTドコモ関係者は話す。

データを蓄積し「運航サービス」をビジネス化

もうひとつ、実験の狙いがある。

それは「適切に判断するためのデータ収集」だ。最近はこういう話になると「AI」という言葉につながってしまうが、ここでは、自動運転用のAIと混同しやすいので、あえて分けて明確にしておく。

自動運転バスは中央で運行制御される、と書いた。画面は、運行制御用のコントロールパネルに表示されるものである。よく見ると、バスの中に何人乗っているか、バス停で何人待っているかがきちんと表示されている。今回のデモでは、スマホとの間でBluetooth LEによる通信を行い、人数をカウントしている。もちろん将来は、映像監視など、他の方法も採りうるが、試験運用ではこれがもっとも確実、と判断されたようだ。

人数を正確に把握するのが必要な理由は、運行を効率化するためだ。学内のシャトルバスやコミュニティー内のシャトルバスなどは、一般的な路線バスと異なり、需要に波が起きやすい。だれも乗っていないのにバスだけが回っているのは無駄である。しかし、「いつバスを回せばいいのか」「いつバスが来るか」が読めないので、無駄が出てもバスを運行していたわけだ。

今回の実験では、乗客の乗降状況をきちんとカウントすることで、需要を予測して「先読みしてバスを回す」システムの構築を目指す。そのためには、当然、長期的なデータ収集が必要になる。だから、九州大学伊都キャンパスでは2018年まで、じっくりテストするのだ。

また、データを集めるという意味では、先ほど挙げた「P2X」の事例集めも重要になる。どういうどころで警告を出すべきか、という事例集めをするのだ。無駄に大量の警告を出すようでは、「警告」の意味がなくなる。どうするのが効率的かを判断する材料に使おうとしている。

NTTドコモとしては、こうした「運行サービス」のためのシステムおよび技術提供が、大きなビジネスになると期待している。特に、過疎化が進んだ地方での足として、コミュニティー・シャトルとしての自動運転バスが運航できる時代になれば、ビジネスは大きくなる。その際には当然、通信環境は、遅延も少なくスピードも速い5Gになっているだろう。

通信事業者としての「次の一手」として、こうした実験に取り組んでいるのである。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)
フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。

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