MONO TRENDY

モノ・フラッシュ

耳から浮く 斬新ワイヤレスヘッドホンが大人気

日経トレンディネット

2016/12/30

Bluetoothヘッドホン「VIE SHAIR」。重量は270g、連続使用可能時間は8時間。カラーはブラックとホワイトの2色が選べる。一般販売での予定価格は3万9900円
日経トレンディネット

 アップルの最新スマートフォン「iPhone 7」でイヤホンジャックがなくなったことで、今まで以上に注目を集めるようになったBluetooth接続のヘッドホンやイヤホン。

 ワイヤレスによる利便性の高さに加えて、近年は音質も向上。ノイズキャンセル対応など、さらに使い勝手を高めてくれる多機能モデルも登場している。

 そんな中、クラウドファンディングサイト「Makuake」において、3Dフレームでハウジング部を浮かせて耳が見えるデザインで話題を集めたのがBluetoothヘッドホン「VIE SHAIR(ヴィー・シェア)」(予定価格3万9900円)だ。

 VIE SHAIR は、Makuakeで700人以上から総額2000万円を超える支援を受けた。これまでMakuakeで1000万円以上を集めた案件はまだ30件程度しかないだけに、その人気の高さがうかがえる。

 斬新デザインのVIE SHAIRはなぜ人気になったのか。開発者の声とともに、その秘密を解き明かす。

■耳が蒸れなくなる

 先述のように、VIE SHAIRは3Dデザインのフレームによってハウジング部を浮かせるというデザインを採用しているのが特徴だ。このデザインにより、音楽を聴きながらでも、外の音(人の声)を聞けるというメリットを持つ。長時間つけていても痛くならず、耳が蒸れることもないなど、通常のヘッドホンよりも装着感が優れているという。

 実際、Makuakeでは「既存のヘッドホンとは異なるこの装着感が、多くの人に注目かつ支持されている」と、開発を主導したVie Styleの今村泰彦氏は語る。

VIE SHAIRの装着イメージ。見た目からイメージするほどの音漏れはしないので、外出中でも問題なく利用できる
Vie Styleの今村泰彦氏。オンライン音楽配信の立ち上げや、Evernoteへの入社、ミュージシャンとしてメジャーデビューなど、マルチな経歴を持つ人物だ

 もうひとつVIE SHAIRには、自分が聴いている音楽を別のVIE SHAIRヘッドホンにシェアできる「オン・エアー機能」がある。この機能によって、家族や友達と一緒に同じ音楽を手軽に楽しめる。製品開発のきっかけとなったのは、新しい装着感ではなく、実はこのオン・エアー機能だという。

 もともと音楽関係の仕事をしながらミュージシャンをしていた今村氏が「1人だけで音楽を聴くのは寂しい。ヘッドホンやイヤホンでも、音楽の共有体験ができないものか」と考えたのが事の始まりだった。

■「ヘッドホンを外す」煩わしさをなくしたい

 サイレントディスコ(同種のBluetoothヘッドホンに同じ音楽を配信して、野外でも静かにディスコを楽しめるというイベント)で感じた今村氏の体験も、VIE SHAIRの誕生に大きくかかわっている。

 サイレントディスコでは周囲の仲間や店員と会話するときには、ヘッドホンを外す必要がある。その煩わしさを、どうすれば解消できるのか。その結論としてたどり着いたのが、「ヘッドホンのハウジング部を耳から浮かせる」という突拍子もないアイデアだったわけだ。

 とはいえ、物理的にハウジングを浮かせるのはもちろん不可能。そこで、VIE SHAIRのデザインを手がけたデザイナーの西村拓紀氏がアイデアの起点としたのは、「メガネのような方向性で接地面を少なくし、少しでも浮かせた状態に近づける」というイメージ。そして苦労の末に生まれたのが、独創的な3Dデザインの「エアーフレーム」だった。

 前例がないうえに、複雑な形状をしているエアーフレーム。この形状を実現できたのは、地道に膨大な数の試作品を作ったからに他ならない。そして、開発を支えたのは、世界的な3Dプリンターメーカー「Stratasys(ストラタシス)」の全面的な協力だった。

 エアーフレームの開発時に、角度や数値が微妙に異なる多数の試作品を3Dプリンターでスピーディーに製造し、ひとつずつチェックしたという。

エアーフレームは、頭に触れる面も平面ではなく、かなり複雑な形状をしている
開発時は、角度などの数値が微妙な異なる試作品を3Dプリンターで一気に作り出し、ひとつずつチェックしたという

エアーフレームを含む、VIE SHAIRのデザインを担当したデザイナーの西村拓紀氏

 エアーフレームが完成したことで、音楽を楽しみながら周囲の音もしっかり聞き取れるようになった。そしてこのエアーフレームこそが、結果的に「装着感を高める」という予期せぬメリットを生んだ。

 エアーフレームは、一見プラスチックのような硬い素材に見える。しかし実は、最新のメガネフレームにも使われるような、強度と柔軟性に優れた特殊な樹脂「TR90」が採用されている。

 さらに、フレームの形状は試行錯誤を経て、ハウジング部を頭に固定するための圧力(側圧)を、うまく分散できるように設計されている。これが装着感の向上につながったわけだ。

 実際に着けてみると、軽い装着感でフィット感も良く、頭を締め付けるようなストレスはほとんど感じなかった。長時間着けていても、痛くなるような違和感がなかったのは驚きだ。

■音漏れの心配は……

 ハウジング部が浮いた構造では、どうしても気になるのが音漏れだが、VIE SHAIRはこの点に関しても対策済みだ。具体的には、指向性に優れた全面駆動平板スピーカーを使用することで、一般的なヘッドホンと変わらないレベルにまで音漏れを抑えている。

 本当に大丈夫なのか試してみると、音漏れは想像以上に感じない。少なくとも、常識的な音量であれば外出先で使っても全く問題ない。今村氏も「『音漏れが少ない』という感想は、イベントで試聴してもらった来場者からも多数聞いた」と話す。

エアーフレームは、パーツを交換することで密閉型にすることもできる。ここまですれば、音漏れの心配はほぼないといってよさそう
フレームパーツは、ひねるだけで簡単に取り外せる構造。手軽に交換できる

 実際の音質はどうだろうか。筆者の聴いた印象としては、高音から低音までどの音域もしっかり出ていると感じた。スピーカーが耳から遠くなると低い音域が聴こえにくくなるのだが、そういった懸念はない。

 また、音の抜け感がとても豊かで、密閉型よりも開放型のヘッドホンに近い音が鳴る。ただオープン構造なので、周囲がうるさい場合は外部の音の影響を受けやすい。その点は注意しよう。

 本製品はヤマハと共同開発しているということもあり、音づくりに抜かりはなさそうだ。しかし、今村氏によれば、ここに行きつくまでには相当な苦労があったという。

 当初は、通常のヘッドホンと同様に原音に近いフラットな音づくりを目指したが、ハウジングが浮いている特殊な設計から、何度やっても「思うような音質にならなかった」そうだ。

 そこで、最後はフラットな音作りを止め、思い切って方向転換。自分の感覚を信じて作り上げたのが、今回の抜け感のあるいい音となる。結果だけ見るとかなり個性的な設定になっているそうだが、「これがVIE SHAIRの音。いい音づくりができた」と、今村氏は胸を張る。

音質は、専用アプリで調整することも可能。アプリは、iOSとAndroidの両方でリリースされる
ハウジング部にはLEDを内蔵し、青・赤・黄・緑・白のカラーで光らせる機能もある。サイレントディスコからインスピレーションを受けた機能で、光の色などは専用アプリで制御可能だ

■ヘッドホンが苦手な人におすすめ

 見た目こそ個性的なVIE SHAIRだが、これまでにない使い勝手を体感できる意味では唯一無二のヘッドホンといっていい。いままでのヘッドホンの装着感が苦手だった人は、試してみる価値がある。

 また、装着したまま周囲の音が聞こえるので、移動中のアナウンスや仕事中の話し声を聞き逃しにくく、メリットは大きい。ヘッドホンの基本である音質も目立った弱点はないので、既存のヘッドホンユーザーも安心して使えるはずだ。

(スプール 近藤寿成)

[日経トレンディネット 2016年11月28日付の記事を再構成]

MONO TRENDY新着記事

ALL CHANNEL