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「世界にひとつだけ」の眼鏡をつくる~福井県鯖江市

2016/12/7

熟練した職人の手仕事は見ていてほれぼれする(糸のこを握っているのは、この道40年を超える竹内公一氏)

 サン・オプチカルの工房を訪ねると、作業スペースには各工程用の加工機器がいかにも町工場然とした雰囲気で並べられ、職人が黙々と手を動かしている。最初はつやのなかったアセテート(プラスチックの一種)素材が磨き工程を経てつややかな光沢を帯びていくのは、まるで魔法を見るかのよう。枠を切り出す竹内氏の糸のこさばきは自信に満ちていて、その迷いのなさにほれぼれする。「サッと1本仕上げるなら、機械より手のほうが早い」と言う口ぶりから職人の自負がのぞく。

 特別に見せてもらった素材倉庫は昔のみそ蔵を改装したもの。長年、買い集めた貴重なアセテートの板状素材が約3000種類もそろう。色も柄も異なるうえ、切り出し方次第でさらに見え具合が変わるそうで、他人とかぶりたくない顧客のわがままなニーズを満たしてくれる。こちらでは取引先のメガネショップを通じてオーダーメードを受け付けているので、素材から選んで自分好みの「分身」をあつらえてもらえる。

たくさんのオリジナル型がオーダーメードの注文を支える(サン・オプチカル)

 眼鏡はほとんどの人が完成品を買う。だが、顔の形や瞳の位置はそれぞれに異なる。既製品を調整して使う場合、フィッティングは必ずしも完全とは言い切れない。本来は個々の顔に合わせてデザインを起こすのが最もジャストフィットしやすい。しかも、自分がまといたいイメージ次第でもデザインは微妙に異なり、たとえば両サイドのテンプルの太さで意思の強さを示すような演出もできる。だから、細部に至るまで注文を聞いてもらえるオーダーメードは、頼れる「相棒」を手に入れる近道といえる。

 めがねミュージアムの1階にある「めがねShop」ではオーダーメードも受け付けている。依頼主のライフスタイルやファッションなどをヒアリングして、最適な眼鏡をデザインする。頭部のサイズを測定し、丁寧な視力チェックをしてくれるので、安心感が高い。聖地を訪れた記念に特別な1本を仕立てるのは、またとない「おみやげ」となる。既製品を購入する場合でも、めがねShopには福井県内メーカーのフレームが3000種類以上も展示されていて、幅広い選択肢から選べる。

■東京にも拠点、長く愛用できる鯖江ブランド

 眼鏡の聖地は国産眼鏡の安心感や価値を発信する拠点を東京都内にも構えている。福井県眼鏡協会直営の眼鏡ギャラリー「GG291」(東京・青山)はプロ向けのショールームと、一般の人が購入できる小売店という性格を兼ね備える。フロアを見渡す限り、陳列されたフレームのバリエーションはもちろん、丁寧なアドバイスや視力測定で買い手をサポート。ヘッドサイズの計測や、鼻梁(びりょう)形状のチェックなどは、スピーディーな仕上がりを売り物にする新興ショップでは省かれてしまいがち。眼鏡選びのコンシェルジュは頼もしい存在だ。

 眼鏡フレームを選ぶ際、ついデザイン性にばかり目が向かいがちだが、「GG291」の末田広志店長は「枠の中心に瞳が来るように」とアドバイスする。正しいフィットはノーズパッド(鼻押さえ)と耳の後ろだけが肌に触れる状態という。顔の横がテンプルに当たるのはサイズが顔に合っていないわけだ。ただ、多くの店ではこのあたりを目分量で済ませてしまいやすい。眼鏡を扱う上での知識や技能を裏付ける、唯一の資格「認定眼鏡士」を持っているスタッフかどうかを手がかりにしたい。

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