経済学で考える 理想の人と出会う確率を高める方法
「運命の人」…という言葉には、どんな女性であってもドキッとするのではないでしょうか。最近、美輪明宏さんの本を読んだのですが「宿命は、持って生まれた定め。しかし、それを自分の力で変えて切り開くのが運命」といった言葉がありました。結局、運命の人というのは、自分が培ってきた人生を共感し合える人であり、今の自分にとって最高だと思える人なのかもしれませんね。
では、最高に自分と合う人と、出会える確率はどれぐらいなのでしょうか? そんなことを考えていたとき、非常に興味深い論文を見つけました。
出会える確率を数学者が試算してみた
タイトルは、
「Why I don't have a girlfriend : An application of the Drake Equation to love in the UK /Peter Backus」
和訳すると「なぜ私には彼女がいないのか?」。直球です(笑)。
これは、イギリスのマンチェスター大学で助手として勤務するピーター・バッカス博士による論文です。彼は、ロンドン在住の研究者(論文発表当時)で、得意の数学を生かして、銀河系に生命体がどれぐらいいるかを算出するための推定式を使って、自分が理想の彼女と出会う確率を計算しました。
イギリスのロンドンに住む人の中に、自分好みの女性が何%いるのか。その女性が未婚であり、自分に関心を持ってくれるのか。そして、ロンドンで一晩の間に偶然に遭遇する確率を算出したのです。
運命の人に出会う確率は?
その結果、はじき出されたのは、0.00034%という確率でした。
あまりの低さにただただ驚きますよね。ただ、このバッカス博士は、この論文を書いた後に彼女ができたと、当時のニュースで語っているようです。運命の人に出会う確率が0.00034%という低い数字の中で、彼はどのようにして理想の彼女を見つけたのでしょうか?
そのヒントを得るための研究は、世界各国の経済学者の間で数多く発表されています。
「結婚」を経済学で考えてみる
経済学は、有限な資源(人、もの、時間…)をどのように配置すれば私たちがさらに幸せになるかを研究するための学問です。
例えば、結婚は(さまざまな定義はありますが)、お互いへの愛はもちろん、お互いに足りないところ(得意分野、不得意分野、性格など…)を補いあうことで、現実社会を一緒に歩んでいこうというものだと思います。お互いの資源をどう補完しあい、どのように意思決定すべきかを考えるのに、経済学の考えは非常に有効なのです。1992年にノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大学のゲイリー・ベッカー教授も、比較優位という考え方を利用して結婚に関する論文を残しています。
日本では、この分野では一橋大学の北村行伸博士が非常に有名です。彼は「結婚の経済学」というサーベイ論文で、最適なパートナーを、最短で見つけるためのヒントをゲーム理論という考え方を応用して記しています。
北村博士が記した、最適なパートナーを最短で見つける方法とは一体どんな方法でしょうか。
一つの出会いから必ず学びを得て絞る
北村博士の論文では、出会いを求めてやみくもに人に会ったり、目の前に来た人に片っ端から夢中になったりするのではなく、自分が経験した出会いの中で、自分が求める条件や判断基準を明確にし、作り上げていくことが重要だと説いています。
「運命の人」というドラマチックな人を探すプロセスで、なんだかドライに感じるかもしれませんが、焦っているときほど、まずは自分の明確な判断軸を持つことが最短ルートといえそうです。
そして、北村博士は、このゲーム理論を応用した確率式をベースに、出会える人が多い人ほどこの判断軸がどんどん変化していき、晩婚化につながりやすく、出会いの総数が多い都会で晩婚化が続いている背景ではないか、ともしています。これは、恋愛以外にもいえそうですね。
出会いが多ければ多いほどいい、というものでもないのかもしれません。過去、そしてこれからの一つ一つの出会いを、自分の理想とする幸せをつかむために大切に生かしていきたいですね。私も、人との縁を改めて大事にしたいと思います!
マクロエコノミスト。Good News and Companies代表。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。化粧品会社エイボン・プロダクツ社外取締役。1983年生まれ。神戸大学経済学部、一橋大学大学院(ICS)卒業。大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)では株式アナリストとして活動し、最年少女性アナリストとして株式解説者に抜てきされる。2012年に独立。経済学を軸にニュース・資本市場解説をメディアや大学等で行う。若年層の経済・金融リテラシー向上をミッションに掲げる。
[nikkei WOMAN Online 2016年11月9日付記事を再構成]
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