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疲れは体と心に出る 過労による悲劇を防ぐために

日経ヘルス

2016/12/25

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日経ヘルス

 この秋、電通の女性新入社員の過労自殺が労災認定され、また厚生労働省が初の「過労死白書」をまとめた。あらためて過労死が注目されるなか、仕事で命を落とさないための注意点、予防法を紹介する。
残業が月に80時間を超えるような「長時間労働」、裁量性が低く負担の重い「過重労働」、パワハラや職場いじめなどの「ハラスメント」が3大要因。これらが重なると過労自殺や過労死が起こりやすくなる

 長時間労働などで心身ともに疲弊した結果、死に至る「過労死」。心筋梗塞や脳卒中などを発症して死亡する場合と精神的に追い詰められての「過労自殺」に大別される。

 「近年増えているのは過労自殺。そのほとんどはうつ病が引き金になっている。女性、20~30代の若い世代、非正規労働者での増加が目立つ。また職場いじめなどのハラスメントが原因になっているケースも多い」と、職場のメンタルヘルスに詳しい代々木病院精神科の天笠崇科長は話す。

 上司によるパワハラやいじめは、都道府県労働局などへの相談内容の中でも最も多い。「ハラスメントが心臓血管系の病気やうつ病の原因になるという研究報告もある。特に長引くハラスメントは、うつ病の発症率を高める」と天笠科長。

 もちろん、長時間労働や過重労働も過労死につながる。一般に“過労死ライン”と呼ばれるのは、残業が月に80時間を超える場合。また仕事の要求度が高い、自己決定権が乏しいなどの職場環境は過重労働を招く。さて、あなたは大丈夫だろうか。

 過労死を防ぐには、どのくらい疲労がたまっているか、自己チェックしておくことが必要だ。まずは身体症状。だるい、肩や首が凝る、食欲がないなどの症状が続くようなら、うつ病発症の前段階かもしれない。

職場のストレスや疲労は、まず身体症状として現れることが多い。上記以外にも頭痛、動悸、めまい、目の疲れ、腰痛などさまざま。ひどくなるとうつ病に発展することもあるので、この段階で休養や受診などの対策を

 天笠科長によると、2~3日休んで疲れがとれる場合は健康的な疲労。1週間休養しても疲れがとれないなら黄色信号、2週間でも回復しないなら、うつ病の可能性があるという。のうつ病チェックもやっておこう。

過労自殺の大きなリスクになるのが、うつ病。このチェックでうつ病の疑いありと出たら、産業医に相談するか、精神科で受診を。「死にたい」と口にする、身辺を整理する、アルコールや薬物を乱用するなどは、自殺のサイン。この表はうつ病の簡便な構造化面接法(BSID)

 また過労自殺に至る前には、これまでとは違った言動が現れるという。例えば泣き言をいう、辞めたいという、ミスが増える……など。これらの頭文字を取って天笠科長がまとめたのが、「なやみのみちへ」だ()。「この段階で手を打てば助けられる可能性が高い。本人はもちろん、周囲の人もサインに気をつけて」と天笠科長。

過労自殺をした約60事例を天笠科長が追跡調査。過労自殺の前に見られたサインをまとめた。サインが多いほど、精神的に追い詰められている。周囲の人も気づいてあげられるといい

 日ごろから仕事との距離感を意識しておくことも重要だ。例えば「私の職場」ではなく、「この職場」と言い換えてみる。「それだけで自分と職場との距離が少し離れ、客観視できるようになる。違う職場の友人を持つことも大事」と天笠科長は助言する。

■この人に聞きました
天笠崇さん
代々木病院(東京都渋谷区)精神科科長。精神保健指定医、認定産業医。「メンタル労災センター」運営委員、「働くもののいのちと健康を守る東京センター」理事長、「(公財)社会医学研究センター」代表理事も務める。著書に『ストレスチェック時代のメンタルヘルス』(新日本出版社)など

(ライター 佐田節子)

[日経ヘルス2017年1月号の記事を再構成]

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