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「負けるものか」 彩奈さんが魂で造る甲州ワイン ライター 猪瀬聖

 

2016/12/2

中央葡萄酒の三澤彩奈さん(山梨県北杜市の明野・ミサワワイナリー)

 日本固有のブドウ品種「甲州」から造る日本ワインで世界に勝負を挑み、注目を浴びるワイナリーが山梨にある。「グレイスワイン」の名で知られる中央葡萄酒だ。醸造を担当するのは、三澤茂計社長の長女で醸造責任者の彩奈(あやな)さん(36)。世界的なコンクールで受賞を重ねる理由を探ろうと、ワイナリーを訪ねた。

 中央葡萄酒の2つのワイナリーのうちの1つ、明野・ミサワワイナリーは、県北西部、甲府盆地を見下ろす標高約700メートルの高台にある。富士山や南アルプス、八ケ岳など壮大なパノラマが広がる一帯は、日照時間が日本で最も長く、高地ゆえ昼夜の寒暖差が大きい。ワイン用ブドウの栽培には理想的な気候だ。醸造作業が一息つく11月下旬、同ワイナリーで、彩奈さんに話を聞いた。

グレイスワイン

■つめの先は割れていた

 「彩奈さん」。ワイン関係者の多くは、親しみを込めて彼女をそう呼ぶ。流行りの言葉を借りれば、「美人すぎる醸造家」。今や、テレビや新聞、雑誌に引っ張りだこ。取材のリクエストはいつも、社長ではなく、彩奈さんだ。つい最近も、ある全国ネットのテレビ局から、2カ月に及ぶ文字通りの密着取材を受けたという。

 こんなに取材を受けて、本業のワイン造りに支障は出ないのだろうか。そんな疑問が頭をよぎり、インタビューの最中、手を見せてもらった。手はしばしば、真実を雄弁に物語るからだ。

 女性らしい華奢(きゃしゃ)な指。だが、よく見ると、短い爪の先が割れている。ブドウに含まれる酸の作用という。皮膚との境目には黒ずみが目立つ。ブドウの色素が付着したものだ。毎日ブドウに触り続けていないと、こんな手にはならない。「ワイン造りは力仕事なので、結構、筋肉も付いていると思います。ブドウがいっぱいに入った箱は、重さが10キロありますから」と笑いながら話してくれた。

 中央葡萄酒の4代目、茂計社長の長女として生まれた。だが、最初は家業を継ぐ考えはなかったという。「ワイン造りは格好いいとは思ったが、ブドウの栽培もワインの醸造も、現場には男性しかいない。女性の醸造家に会ったこともない。女性は醸造家になれないものだと勝手に思っていました」

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