家計

もうかる家計のつくり方

貯蓄を減らさないようローン? 本末転倒な家計 家計再生コンサルタント 横山光昭

2016/11/30

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 「家も車も買ったけど貯蓄はあります。毎月、ためることもできているので大丈夫ですよね」と、家計の状態に「優良」という太鼓判がほしくてやってきた会社員のCさん(38)。今は共働きの奥さん(35)と2人暮らしですが、金銭的な準備が整ったら子どもをもうけたいと考えているそうです。

 Cさんは「将来のためにきちんと準備をしてから子どもをもちたいのです」と言います。貯蓄額は1000万円。子どものための貯蓄を今後どう増やしていくか、また、お子さんができた後の生活費はどうなるのかを検討するために、家計表を見せていただきました。すると、収入は約49万円ありますが、支出が約47万円あります。支出の詳細はわかりませんが、少し多すぎると私は感じました。

 「日常生活にはお金をかけすぎないよう気を付けていますが、将来のためになることについてはお金を使っています。メリハリですよ」とCさんは自信たっぷりな様子です。確かに日常の生活費には問題を感じませんが、住居費、自動車関連費、生命保険、医療費、習い事などが、家族構成や収入の割には高くなっています。このままの状態でお子さんが増えると、瞬く間に赤字家計に転落してしまいます。

 Cさんは、賃貸住宅より持ち家の方が長い目で見れば住居費を安くできるし、若いうちに買ってしまえば住宅ローンも早く終わると考え、金利が3%の時期に住宅を購入しました。その後、住宅ローンの借り換えなどは検討もしていません。

 また、貯蓄を減らしたくないからと300万円を超える自動車をローンで購入。金利は3.2%でローン期間は5年。利息については「考えていなかった」と言います。

 生命保険は相談先で薦められたものに入っているそうですが、かけすぎのようにも感じます。医療費の大部分は健康維持のためのサプリメント。病気予防と美容を目的に2人で飲んでいるのだそう。特に奥さんは美容系のサプリを多く飲んでいます。

 また、体力維持のために夫はフィットネスクラブに通い、トレーナーをつけて週1回運動しています。さらに、海外旅行や海外転勤の予定などはないそうですが、マンツーマンで授業を受ける英会話教室に通っています。

 その他の支出は、すでに格安スマートフォンに乗り換えていますし、水道光熱費も意識して節約しているようでしたので、まず、前述の気になる費目の改善方法を考えていくことにしました。

 ただ、改善するに当たっては、Cさんが大切にしている「将来のために」という気持ちを尊重しながら臨まなくてはいけません。奥さんにも面談に同席いただき、何度か話し合いを繰り返しながら、時間をかけて改善していきました。

 まず、自動車です。お金のことを懸命に考えている一方で、ローンを利用することによって利息という無駄な支出が生じてしまうことへの意識が薄いようです。5年間で25万円以上もの利息を払うことになるのに、気にせず返済を続けています。貯蓄を減らすことになりますが、無駄な支出をなくすために、300万円ほどの残債がある自動車ローンを一括返済しました。

 健康のためのサプリにもお金をかけすぎているように思えました。効果があるのかないのかを考えながら、いる、いらないを検討しました。すると、効果を感じずに惰性で飲んでいたものがいくつかあり、それらをやめました。

 夫のフィットネスクラブはトレーナーから習ったトレーニング内容を自分で覚えたため、そろそろ一人でもできそうだと思っているそうです。トレーナーの指導をやめ、時々、見てもらう方法に変えました。

 英会話は日常で使う機会がなく、上達もあまりしていないそうです。ただ、学びたいという気持ちがあるので、教室を少し割安な月謝のところに変えて継続することにしました。これで習い事費用はかなり抑えられました。生命保険は「念のため」と加入したものが多かったので、保障内容を見直しました。

 これらと同時進行で、住宅ローンの借り換えを検討しました。借入残高は約2000万円で借入金利は3%、返済期間も20年ぐらい残っているので、今のマイナス金利の状況を考えると、借り換えによって十分にメリットが出ます。借り換えた結果、借入金利は0.8%になりました。返済期間の短縮も考えましたが、自動車ローンの返済で貯蓄を300万円取り崩したことや、お子さんが生まれた後の生活費を考え、毎月の返済額の負担を軽くすることにしました。

 Cさんには貯蓄がありますから、少しまとめて繰り上げ返済することも検討しました。残高の2000万円をそのまま借り換えると、毎月の返済額は9万1000円です。もし300万円を繰り上げ返済し、1700万円を借りるなら毎月の返済額は7万7000円になります。

 生活費の圧縮具合と年間の貯蓄予定額を計算すると、住宅ローンを300万円繰り上げ返済すると、年間の貯蓄見込み額は毎月の余剰金だけで年間200万円になります。自動車の一括返済と合わせると、貯蓄を取り崩した600万円分は3年で取り返せる計算です。このようにシミュレーションし、300万円を繰り上げ返済し、1700万円で住宅ローンを借り換えました。

 こうしてCさんの家計は最終的に支出を14万7000円削減でき、今までのわずかな黒字額と合わせ毎月16万7000円を貯蓄できることになりました。このペースを保っていけば、ボーナスがなくても年間200万円の貯蓄が可能です。

 「貯蓄さえ残っていれば大丈夫だと思い込んで無駄な支出を見逃していました。毎月これだけのゆとりができれば、子どもができてもやっていけるという自信がもてました」と話すCさんは自信を持った様子です。

 将来を考えて資金づくりに懸命な若い方は多いのですが、懸命にやっているつもりでも、知らず知らずのうちに無駄な支出をしていることもあります。今は低金利なので「ローンを組めばお得ですよ」と巧みに誘われ、何を買うにもローンを組んでしまう人がいますが、利息を払うデメリットをきちんと理解してほしいものです。「貯蓄は将来のため」と強く意識するあまり、足元で損をしていたら元も子もありません。そうならないように、一度、家計全体を点検してみることをお勧めします。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は12月14日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計180万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)


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