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変わる寺、情報発信で若い世代が集う “寺院消滅”と仏像ガール(後編)

2016/11/28

PIXTA

 新潟県小千谷市の極楽寺の第19代住職、麻田さんは13年前に実家の寺に戻ってきました。そこで目の当たりにしたのは、寺との付き合いを面倒だと感じ、拒否感を持つ人が多いという現実でした(11月28日公開『「寺院消滅」と仏像ガール(前編)』参照)。

 「70~80代以上の世代は『お寺にはお参りにいくもの』と義務的に考えている。しかし、その下の50~60代は寺に対して良い感情を持っていない。じいちゃん、ばあちゃんだけが寺と付き合い、自分たちはお坊さんの顔も知らないという話が多いのです。寺の側も長年、檀家との関係は一方通行のままだった。そうしたツケが今、回ってきているということでしょう」(麻田さん)

 しかし、50~60代が拒否感を持ち、「寺離れ」傾向がある一方で、その子世代は異なるといいます。

 「40代以下の世代の人たちは情報や先入観がない分、純粋に面白いと思うことはあっさり受け入れてくれます。いいと思えば話を聞いてくれる。お寺からいろんなことを発信していけば、きっと人々の寺離れは回避できる、そう思いました」

 この10年あまり、極楽寺ではさまざまなイベントを企画。毎回、1000~2000人が訪れるといいます。昨年、麻田さんが住職に就任した際の「継職法要」も、イベントと合わせることで初めて一般に公開しました。

 麻田さんが作り続けている消しゴムはんこは、訪れる人との重要なコミュ二ケーションツールでもあるといいます。東日本大震災の被災地の仮設住宅では、一緒に並んで消しゴムを削りながら、被災者同士でも初めて聞くというつらい体験を話す人もいました。

 「お坊さんが衣を着て、対面に座って『さあ、悩みを何でもお話しください』なんて言ってもなかなか難しいですよね。人の心に寄り添うには、その人がほっとできたり『無』になれる何かが必要だと感じています」

(左)消しゴムはんこのユニット「諸行無常ズ」の活動を続ける麻田弘潤さん (右)ユニットを組む津久井智子さんと一緒にワークショップを開催している
さまざまな仏教のモチーフを作成する

 消しゴムはんこ作りは、作る人によって千差万別。ガリガリと潔く削る人もいれば、消しゴムに刃を全然入れない人もいます。

 「残す部分にばかり気を配り、削る部分は雑にカットする人もいます。人は目的以外のことは雑に扱いがちですが、視点を変えれば切り落とす方も大切なんですよね。ただし、そこに良い悪いはありません。同様に、自分や他人、起きた出来事を良い悪いで評価しないでください、といつも言っています」

 できあがったはんこを全員で見せ合う鑑賞会はいつも大いに盛り上がるとか。人は何かを通して、誰かとつながる場を求めているのかもしれません。

■「死の体験」に訪れる若い女性層

 若い世代を中心に人が集まるイベントやワークショップは、ほかにも各地の寺で開催されるようになっています。寺イベントの情報サイト「寺子屋ブッダ」(運営元:百人組)には誰もが参加できるイベントが数多く紹介されています。従来からある写経はもちろん、ヨガ、マッサージ、ジャズ、寺シネマ、お香作りなど多岐にわたります。

 アルケミー・クリスタルボウル奏者で、くりすたり庵代表の牧野持侑さんは15年以上前からお寺でクリスタルボウルの演奏を行なっています。参加者は、寺で仰向けになって鑑賞。倍音が耳に響き、想像以上にリラックスができると評判です。牧野さんは過去にスパのレセプションなどでも演奏をしたことがありますが「お寺の音の環境は全般的に良いので、もっと活用されるべきだと思います」といいます。

 横浜市神奈川区に10年前に開所された布教所「なごみ庵」では「死の体験旅行」というワークショップが行われています。4年前に始め、過去100回ほど開催。これまでに2000人が受講しました。

 「死を見つめることによって『生』が輝くと考えています。ワークショップでは、自らが命を終えていく過程を擬似体験します。自分が病気になったと仮定して、大切なものを書き出し、それを一つひとつ捨てるという作業をします。参加者の多くは20~40代。6~7割が女性です」(なごみ庵住職の浦上哲也さん)

 まだ人生の折り返し地点にも達していない人たちが、「死」を体験しようと寺に足を運んでいる現実に驚きます。

 檀家だけが寺を支えた時代から、開かれた寺へ。変化は既に始まっているのかもしれません。

(ライター 大崎百紀、WOMAN SMART編集部)

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