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加熱式次世代たばこ レストラン、タクシーもOK続々 五輪にらみ2020年の屋内全面禁煙どう影響

2016/12/23 日経MJ

アイコスのみ喫煙でき、借し出しもしている日比谷バー(東京都中央区)

 日本のたばこ市場に久々の革新が起きている。電気で熱する「加熱式たばこ」だ。灰や煙、嫌なにおいが出ず、周囲に迷惑をかけにくい。2020年の東京五輪・パラリンピックをにらみ、厚生労働省は屋内の全面禁煙を提言している。屋内禁煙が決まった場合、加熱式が紙巻きと同様に規制されるのか、それとも例外とされて普及へ火が付くのか。

 「飲み会でたばこ嫌いな人が隣でも『吸っていいよ』と言ってもらえる」。証券会社に勤める二宮多喜男さん(49)の喫煙ライフは米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の加熱式たばこ「アイコス」で大きく変わった。自宅マンションはベランダを含めて全面禁煙。わざわざ敷地外まで行って吸っていたが、堂々と喫煙できるようになった。

自宅でアイコスを使用する美容師の田辺さん(東京都千代田区)

 都内の美容師、田辺俊也さん(22)は「灰が出ないのでソファに寝転がってテレビを見ながら吸える」。接客業でも、においを気にせず休憩時間に一服できる点も気に入っている。

 加熱式たばこは、火を使わずに葉タバコを加熱して蒸気を楽しむ。本体と充電器のほか、葉タバコの詰まったスティックやカプセルからなる。

 参入したのは世界の大手メーカー3社だ。PMIがアイコス(本体は希望小売価格9980円)を2014年に名古屋市で発売して口火を切り、今春に全国販売を開始。日本たばこ産業(JT)も3月から「プルーム・テック」を福岡市の店舗とインターネット通販で販売。英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も「グロー」を仙台市で発売。JTもBATも早期の全国発売を計画する。

 JTの調査では16年の男性喫煙率は29.7%と初めて3割を切り、国内たばこ販売本数もピークのほぼ半分。「別物の喫煙体験」で市場の縮小に歯止めをかけようとしている。

 加熱式なら灰皿も必要なく、吸い終わったスティックなどはそのままゴミ箱に捨てられる。最初に本体機器を買えば、スティックやカプセルの1箱の価格は、紙巻き1箱と同じか10~20円高い程度。1箱で吸える回数も、紙巻き1箱の回数とほぼ同じくらいだ。

 充電が必要なうえ、スイッチを押してから吸えるまでに時間がかかったりと一手間かかる。味にも賛否あるが「慣れれば使い勝手は気にならないし、味も十分に紙巻きの代わりになる」(40歳の男性デザイナー)と多くの愛煙家が評価する。

 10月の平日、午前6時。「アイコスストア原宿」(東京・渋谷)には100人以上が並んだ。「また午前8時に来て下さい」。5分ほどして店舗のスタッフが番号札を配り始めた。人気に供給が追いつかず、この日の販売台数は約80個。この行列は朝の原宿のちょっとした名物になっている。

 恋人と一緒に並んだ横内麻衣さん(26)は「自宅では換気扇の下で吸っていたけど、彼氏と一緒にリビングでくつろぎながら吸える」。人気は過熱し、限定カラーの「ボルドーレッド」はネットオークションで10万円で転売されることも。

 JTのプルーム・テックも発売直後の5日間で月間計画の5倍の売れ行きとなり、一時出荷停止に。店頭販売は福岡市のみで、出張や旅行の際に買い求める人も目立つ。

 プルーム・テックの購入や試し吸いができる「リシンクカフェ」(福岡市中央区)を訪れた札幌市の長野篤志さん(46)は、1日40本は吸うヘビースモーカー。「周囲の迷惑になる場面では加熱式を吸うつもり」と、紙巻きと併用するという。

 加熱式たばこの登場は、飲食店やサービス業にとっても愛煙家を呼び込むチャンスになる。

 都内を中心に6店を展開する高級レストラン「ゼックス」。2年ほど前からバーを除いて全面禁煙にしたが「アイコスなら周囲に不快感を与えない」(運営するワイズテーブルコーポレーションの稲塚晃裕・上席執行役員)と5店でアイコスをOKにした。

 PMIによると、禁煙施設や禁煙スペースでもアイコスを吸える場所は、全国で約4200カ所。レストランやカフェなど飲食店のほか、ホテルや旅館、貸会議室などにも広がっている。

 自動車関連のサービスでも動きが。カーシェアリング大手のオリックス自動車(東京・港)は加熱式たばこが吸える車両を都内で60台導入。通常のカーシェアは全車両禁煙だが「たばこを吸える車を用意してほしい」という要望が多かったという。盛岡市のタクシー会社、ふるさと交通もアイコスに限って車内で吸えるようにした。

 福岡市のファッションビル「VIORO(ヴィオロ)」では10月、館内でプルーム・テックを貸し出し、喫煙スペースを設置した。服にたばこのにおいは大敵だが、加熱式なら問題ない。「ファッションとたばこの新しいスタイルを提案する」というキャンペーンだ。

 加熱式たばこが完全に「市民権」を得るには、受動喫煙を気にする人々や、行政がどう捉えるかが焦点になる。

 歩きたばこを条例で禁止する自治体は、加熱式への対応が分かれた。やけどや煙害の心配はないが、紙巻き同様、ポイ捨ての懸念はあるためだ。

 東京都の13年度の調査では「禁煙や分煙の対策はしていない」という飲食店は56.8%。「なぜ食事をする場所でにおいや煙を出すのか理解できない」(ドイツ人の女性、31)というように、日本の禁煙の遅れに不満を持つ外国人は多い。

 ▼次世代たばこ アイコスなど「加熱式たばこ」は普通のたばこと同様に葉タバコを使用。火はつけずスティックなどを本体で熱して蒸気を吸う。海外で主流の「電子たばこ」はニコチンを含む溶液を加熱して蒸気を吸う。日本では医薬品医療機器等法(旧薬事法)で販売が規制され、浸透していない。

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