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投げ売りで話題 パソコン版ポメラは買いか?

日経トレンディネット

2016/11/24

キングジム初のパソコンという点と、独自の折りたたみ式キーボードが話題を呼んだ「ポータブック XMC10」。販売開始から9カ月を目前とした11月上旬、突然格安での投げ売りが始まった

日経トレンディネット

 キングジムのWindows 10搭載ノートPC「ポータブック」が格安で投げ売りされて話題になっている。安売りの先陣を切ったヨドバシ.comでは、税込み2万3540円で販売。しかも、10%のポイントまで付いてくる。2016年2月の販売開始当初は9万円近くしていたので、1年も経たず実に1/3以下の価格になってしまった。

 新品のWindows 10搭載ノートパソコンとして考えると破格の安さであり、FacebookやTwitterなどのSNSでは「安くなったら欲しいと考えていたので、即買った」という声が多く寄せられている。だが、「発表当初からいまひとつと感じていたので、この価格でも悩む」という声も少なくない。実際、価格.comの評価を見ても、満足度は5段階中2とかなり低い。格安で再び世間を騒がせているポータブックは買いなのか、改めてチェックしていきたい。

■変形キーボードで12型ノート並みのキーピッチを確保

 ポータブック(XMC10)は、キングジム初のパソコンとして鳴り物入りで登場したWindows 10搭載ノートパソコン。8型の小型液晶を採用することで、本体をコンパクトに仕上げて持ち運びしやすくしたモバイルモデルだ。

 可搬性を高めるために本体を小型にすると、キーボードも小さくなって文字が打ちづらくなるのがモバイルノートの欠点といえる。このジレンマを解消するため、ポータブックは斬新な折りたたみ式のキーボードを採用したのが特徴。通常時、キーボードは左右に90度回転した状態で格納されており、ぐるりと回転させることで展開する仕組みだ。展開時は18mmのキーピッチが確保され、12型クラスのノートパソコン並みの打ちやすさが得られる。キーボードのフレームはアルミで補強してあり、強くタイプしてもたわまず安定してタイプできるようにした。

液晶パネルを開くと、キーボードはこのように90度回転した状態で格納されている
キーボードをぐるりと回転させることで、タイプできる状態になる。かなり凝ったギミックだ
18mmのキーピッチを確保していることに加え、キーのたわみを抑える工夫が凝らされており、タイプ感は上々だ

 この小ささながら端子類は充実しており、標準サイズのUSB端子やHDMI端子、SDカードスロット、アナログRGB端子まで搭載するのも評価できる。充電は、多くのAndroidスマホと同じmicroUSBを採用しており、モバイルバッテリー経由でも充電できるのはありがたい。マイクロソフトのOffice Mobileも搭載しており、ビジネスシーンでも安心できる。

 スペック面で物足りないのが、CPUやストレージ、液晶パネルだ。CPUはインテルのAtomで、ストレージは32GBのフラッシュメモリーのみ。8型液晶の解像度は1280×768ドットと、昨今の格安スマホよりも解像度が低い。総合的な性能は低価格のWindowsタブレット並みといえる。見た目に反して重量は意外と重く、約830gあるのも気になる。

背面にはUSB端子やHDMI端子に加え、アナログRGB端子も搭載する。microUSB経由で内蔵バッテリーの充電ができるのも気が利いている

■割り切りのよさが評価された「ポメラ」とは異なり、中途半端さが嫌われた

 キングジムのデジタル機器といえば、テキストの入力に特化した携帯型デバイス「ポメラ」がマニア層に高く評価されたのが有名だ。瞬時に起動することや、ストレスなく入力できる大型キーボードを搭載すること、乾電池で駆動できバッテリー切れで困らないことなど、ユーザーが求める部分をしっかり網羅。それでいながら、液晶はモノクロにして文字入力以外の機能は搭載しないなど、割り切りのよさが注目された。

 ポータブックは、ポメラを作ったキングジムが満を持して投入した製品で、「キングジムならではの工夫が多く盛り込まれているのだろう」と発表当初は注目が集まった。だが、最新のノートパソコンとしてはスペックが低すぎるにもかかわらず価格が高めなうえ、オリジナリティーが独自の工夫を凝らしたキーボードしかなく、ユーザーには「とにかく中途半端」と写ってしまったのだ。

 ある人は「ポメラのいいところは、打ちやすいキーボードを備えていること、すぐに起動して使い始められること、フリーズせず安定して動作すること、容易に手に入る乾電池で使えること、電池の持ちが桁違いに長いこと、価格が安いことにある。だが、ポータブックはキーボードのよさしか受け継いでいない。コレクターズアイテムではないのだから、実用性を求めるツールとしての魅力は薄い」と厳しい評価を下す。

 別の人も「アナログRGB端子でプロジェクターにつなげたり、USB充電できるので出張時もACアダプターなどの荷物を減らせるなど、魅力的に感じる部分はある。だが、あの小さなディスプレイで作業するのは厳しい。せめて500gを切るなど軽ければ入手したかもしれないが…」とコメントする。

■格安で売り出したヨドバシ.comは一時在庫切れ

 発売直後に特徴的なキーボードが大きな話題になったポータブックだが、低いスペックの割に価格が高いことからほどなく熱気も冷め、春には話題になることもなくなった。価格.comのレビューや口コミ情報もまったく盛り上がらず、早くも人々の頭から消え去りつつあった。

 その中で、11月8日にヨドバシ.comがポータブックの価格を一気に引き下げたことがSNSで大きな話題になった。価格は税込み2万3540円と、なんと一気に2万円台前半まで下がった。10%のポイント還元も付くので、実質的な価格は2万円ちょっととなる。前日までは、最安値が6万5000円前後で推移していたので、半額どころか3分の1に迫る大ディスカウントとなった。

ポータブックの最安値推移グラフ。長らくほとんど動きがなく、ヨドバシ.comが一気に価格を引き下げたことがよく分かる 価格.comのトレンドサーチから引用、グラフの価格は税込み Copyright (c) Kakaku.com, Inc. All Rights Reserved.
ポータブックの製品ページの閲覧数推移グラフ。こちらも長らくほとんど話題になっておらず、値下げの知らせを聞いて製品ページをチェックする人が急増したことが分かる 価格.comのトレンドサーチから引用、グラフの価格は税込み Copyright (c) Kakaku.com, Inc. All Rights Reserved.

 この価格が人々の驚きを呼び、「発表当初に欲しい!と思っていたが高くてあきらめていたので、早速買った」という声がSNSに多く寄せられた。低価格のWindowsタブレットならば2万円台で買えるものもあるが、Windows 10搭載ノートPCとなるとこの価格で新品を購入するのは難しい。「2万円台で買えるノートPC」のインパクトは相当大きかったようだ。

 だが、「内容を考えるとこの価格でも手が出ない」「スペックを考慮すれば、本来これが適正価格だったのではないか」という厳しい声も散見された。特に、高性能モバイルノートPCをすでに使っている人にとっては魅力に欠ける存在のようだ。

 あまりの人気ぶりに、ヨドバシ.comでは一時在庫切れになったが、その後在庫が戻っている。ヨドバシ.comでしばらく注文できる可能性が高いうえ、「この価格にしない限りは売れない」と判断した販売店が続々と価格を引き下げる可能性もある。実際、価格.comで調べると、20位くらいまで2万円台前半の価格に下がった。インターネットやSNSができればよく、文字入力を重視しないのであれば、iPadなどのタブレットといった選択肢もある。気になる人もあわてず検討したい。

商品を取り扱う店舗数の推移。 価格.comのトレンドサーチから引用、グラフの価格は税込み Copyright (c) Kakaku.com, Inc. All Rights Reserved.

[注]この記事は、「価格.com」の各種データをまとめた市場調査支援サービス「トレンドサーチ」の情報を基に執筆しています。

(日経トレンディネット 磯修)

[日経トレンディネット 2016年11月10日付の記事を再構成]

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