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女性職人が増え、働き方を見直す動きが広がっている

原田左官工業所・原田宗亮社長インタビュー(後編)

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NIKKEI STYLE

日経DUAL

今回、マタハラNet代表・小酒部さやかさんがお話を伺ったのは、原田左官工業所(東京都文京区)社長の原田宗亮さんです。女性の「左官職人」第一号を生み、それをきっかけに顧客層を広げ、歴史ある左官の業界に新しい風を吹かせています。女性職人の「原田レディース」が事業を拡大させるまでを伺った前編に続いて、産休や育休などを含む働き方の改革についても伺いました。

「中途半端は嫌」という女性職人が、初の産休・育休を取得

―― 原田左官レディースがあり、その後、福吉奈津子さんという女性職人が初めて産休・育休を取得することにつながりました。このときのことを教えていただけますか。

彼女の場合はとても自然に話が決まり、その後の産休・育休取得者のモデルケースになってくれました。弊社では4年間の見習い期間を設けているのですが、彼女はその間に結婚して子どももできました。本人からずっと「中途半端にするのは嫌だ」と聞いていたので、育休後の復帰の話もすんなりと受け入れられました。

―― 例えば、復帰後、保育園にお迎えに行かなければいけないときは、16時00分くらいには仕事を終えるということですか。

そうしていましたね。この仕事は朝が早いので、一般の会社員の皆さんと大体同じくらいの時間、働いていることになると思いますが、それでも他の職人さんと比べたら勤務時間が短くなります。建築業は拘束時間が長くなりやすい。現場で働くのは8時から17時ですが、現場までの移動時間と、道具などを準備する時間、現場から帰ってきて片付ける時間を考えると、どうしても長くなってしまいます。

フォローする職人とフォローされる職人同士、話すことが大事

―― そうなると育児中の女性は仕事や片付けを残したままで帰ることになりますね。他の職人から嫌がられそうですが、フォローする人と、フォローされる人の折り合いはどのようにされていたのでしょう。

福吉自身は、他の職人と直接話をしていたようですね。お互いに我慢したこともあったと思います。彼女に続いて産育休を取得した女性職人も、福吉がパイプになって調整してくれたようです。

建築現場は一人では本当に仕事が成り立ちません。「3人で一週間行けばちょうどいいな」と思っていても、風邪で休む人が出たりしますし、年配の職人さんも好きに休みを取ったりしています。それを現場の工期の中でフォローしながらやるので、実際はお互いさまだと思っているのでしょう。今は、孫や子どもの運動会のために休む男性の職人もいます。昔は現場があれば最優先という雰囲気でしたが、変わりましたね。

―― チームを組むときに、男性だけのほうが仕事の計画も施工も楽ではありませんか。そこに育児中の女性が加わると嫌がられそうですが、どうでしたか。

そういうことも間接的にはあったかもしれません。しかし、時短勤務者をチームに組み込むことは施工計画で調整できますし、女性職人である以上に、一人の職人として誇りを持って仕事をしているので、周囲も特に問題を感じていなかったと思います。

―― ちなみに、福吉さんは見習い期間に結婚・出産されたとおっしゃいましたが、この見習い期間にはどういう仕事をするのでしょう。4年とは長いものですか。

大昔は、4年見習いしたくらいでは、現場でコテを持たせてもらうことはまずありませんでした。材料をこねたり、掃除をしたりする中で先輩の仕事を見て、会社へ帰ってからさらに練習を積む。そうして少しずつ認められていくというのが、昔のスタイルだったんです。

今は、塗る練習を会社で大々的に行います。そうすると現場でコテを持たせてもらう機会が昔より断然早くなり、早くて1~3カ月練習すれば持たせてもらえるようになりました。そういった意味で、見習い期間とはいえ、現場仕事はしているわけです。

話が変わりますが、昔と今では、入社の仕方も教育の仕方も変わりました。30年くらい前は、業界に来る人たちは、中卒者か、高校中退者がほとんどで、しつけの段階から教育して、その後でようやくコテを持たせてもらったものです。

今は大学を出て職人になる人もたくさんいます。教育は受けているわけですが、逆に言うと教育慣れをしていて、教わったことをちゃんとやろうとか、ちゃんと形にしようっていう思いは強いけれども、言われていないことを自分からやるのにはちょっと慣れてない。

昔のやり方を当てはめてしまうと、「塗れと言われてないから現場でやっちゃいけないんだ」と思って、下働きばかりうまくなる。「それが自分の仕事だ」と、真面目な人ほど考えてしまう。だから、塗ることも最初に教えてあげないといけないと思ったわけです。

同業者の中でも、女性職人を採用する会社は増えている

―― 社員のことをよく見ていらっしゃいますね。それは、できる社長さん共通の特徴です。原田さんの代から、教育方法を変えたのですか。

教える余裕が無いくらい忙しいときもあれば、暇なときもあり、ムラがありました。それを手順化して系統立てたのは私です。それと、モデリングといって、左官の達人が塗っている動画を見て、技術をまねる練習もさせています。やはり塗るのが楽しいので、できるだけ早くコテを持たせてあげたいな、と。

―― その動画に出てくる左官の達人とは、久住章さんですね。

よくご存じですね(笑)。"左官の神様"と呼ばれる方です。

―― 原田さんのもとだと、職人の皆さんも安心して仕事に励み、成長できそうですね。見習い期間終了の時に、家族も取引先も呼んで盛大にお披露目式をしたり、仕事をしてきた姿を本にして、家族にも働いている姿を見せられるようにしたり。そんなふうにされれば、家族の皆さんも「この会社での仕事をぜひ続けてほしい」と思うようになるでしょうね。

そのことはとても大切にしています。人材育成の賞を取ったりメディアに出たりすることで、親御さんにも安心してもらえますしね。過去にこんなことがありました。都内の高卒の女性が本人の強い希望で「就職したい」と言ってきたのですが、母親に反対されて断念してしまったんです。

今では女性の先輩も複数名いますし、職人になることは昔より認められていて、若い女性の希望者も増えています。長く働けるためのイメージアップと安心感は、採用活動に大きく寄与していると感じています。

―― 同業者の反応はいかがですか。女性職人の育て方など聞かれるのでは。

反応は間違いなくあります。都内でも女性を採用しているところは増えています。こういう話を同業の方にすると、働き方を見直す雰囲気が少しずつ広がってきているなと思います。

―― 最近、DIY向けのしっくいワークショップなども人気ですね。そこから左官に興味を持った人が仕事として考えても、なかなか入りづらい職人世界の雰囲気があると思います。だからこそ、「働きやすさのブランド化」が非常に有効なのですね。そして原田左官さんはそれに成功されています。感服致しました。では、最後に、原田左官さんが大切にされていることと、左官の魅力についてお聞かせください。

弊社は順調に成長していますが、会社を大きくすることが目標ではありません。確かに、仕事をたくさん受注して、下請けに働いてもらえば利益はたくさん出ます。でも、それでは誰も幸せになりません。

「職人を守る」「伝統技術の継承発展」「幸せの創造」。この3つが会社の目標だと考えています。

私自身、自分が塗った壁は全部覚えています。一つとして同じものはなく、どれにも思い入れがあります。綺麗な壁を作ろうと、工夫し、緊張し、極度に集中して壁を塗ることには時間を忘れるほどの楽しさがあります。完成したときの達成感は、ものづくりならではの醍醐味ですよ。

―― いいお話をたくさん聞かせていただきました。ありがとうございました。

小酒部さやかの「取材後記」
 建築現場でも女性活躍が進んでいると聞き、「男性社会でも女性活躍を進められるのなら、そのノウハウはとても参考になるのでは」と思い、原田左官さんを訪ねました。
 「売り上げを追求するのではなく、職人を守るのが役目」という原田さんの言葉に、インタビュー早々感動しっぱなしで、「多様性(女性活躍)から生まれた仕事が会社を変えた」という実際のお話も、思わず「これですよ!」と膝を打ち叫びそうになるほど。
 綺麗なサンプルに囲まれたオフィスは、職人の幸せと喜びに装われているかのようで、とっても嬉しい気持ちでいっぱいとなった取材でした。
小酒部さやか(おさかべ・さやか)
 2005年3月、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科を卒業し、アサツーディ・ケイへ入社。クリエイティブ職アートディレクターとして採用。その後、転職した会社で、契約社員として雑誌の編集業務に従事する中、マタニティーハラスメントの被害に遭う。2014年7月、マタハラNetを設立し、代表に就任。2015年、米誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載され、女性の地位向上などへの貢献をたたえる米国務省「世界の勇気ある女性賞」を日本人で初めて受賞。2016年1月に『マタハラ問題』(ちくま新書)を発売した。

(ライター 水野宏信)

[日経DUAL 2016年10月21日付記事を再構成]

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