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女性の「左官職人」第一号を生んだ奇跡の職場

原田左官工業所・原田宗亮社長インタビュー(前編)

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NIKKEI STYLE

日経DUAL

今回、マタハラNet代表・小酒部さやかさんがお話を伺ったのは、原田左官工業所(東京都文京区)社長の原田宗亮さんです。女性の「左官職人」第一号を生み、それをきっかけに顧客層を広げ、歴史ある左官の業界に新しい風を吹かせる原田さんに、女性活躍の可能性について伺いました。

第一歩は女性事務職員の「面白そう。やってみたい」の一言

―― まずは御社における女性活躍のきっかけをお聞かせいただけますか。

女性事務員が職人の仕事を見て、「私もやりたい」と言ってきたのです。1989年、ちょうど男女雇用機会均等法のタイミングでした。

―― 当時、均等法を意識されていたのでしょうか。

それは全くありません。職人さんが見本を作る様子を見ていた女性事務職員が「面白そう。やってみたい」と。当時はバブルで猫の手も借りたいという状況でしたし、アルバイトスタッフにも高給を支払う時代だったので、「掃除でもなんでもいいから現場でやってみるか」と返事をしたのが始まりでした。それまで、我々の業界で女性職人はいなかったのです。

―― 実際にやってみていかがでしたか。

左官は高度な技術が必要なので、すぐ仕事で塗らせるところまではいきませんでした。現場で色々な手伝いをしながら見本を塗るわけです。技術がないために平らに塗れないのですが、逆にデコボコに塗ったものを模様として楽しんだり、白いしっくいにアイシャドウを入れて色を付けたり、口紅を砕いて入れたりして、それもグラデーションにしたりと、デザイン性を出していました。そういった自由な発想があったんです。

―― それはすごい! 本物の化粧品ですか。

はい。今でこそ、町を見渡せばいろんな壁がありますが、当時の左官の壁といえば、特にしっくいは真っ白で平ら。色があっても、ねずみ色か黒か弁柄の赤といった日本の伝統色しかなかった。

それが彼女たちの手に掛かったら、派手なパープルの壁になった。ものすごく新しかったんです。そうやってできた新しいサンプルを作っていくと、学生のアルバイトたちが「これは面白い商品だから自分たちでも売ってみたい」と言って、設計事務所に配ってくれるようになりました。

当時はディスコのような派手な装飾の建物がはやっていた時代です。そのニーズと女性初の新商品がマッチし、女性たちの仕事につながりました。それまでは現場では掃除や材料運びといった仕事ばかりで、職人さんにとって女性はアルバイトみたいな存在だったんです。

年配の職人さんとの衝突を避け、女性専門部署を新設した

―― まさにダイバーシティー人材から新しいアイデアや商品が生まれたわけですね。プロダクトイノベーションですね。

そうですね。あれから26年もたった今ではその女性がきっかけで、現在につながる仕事が増えていることが再認識できますが、当時はそこまでの分析はできていませんでした。

年配の職人さんたちはその後も5~6年は、女性発信の新しい仕事には絶対手を付けませんでした。年配の職人さんの間には「邪道だ」という思いがあったんですね。でも世の中には「ウケて」いる。なかなかそこがかみ合わなかったので、最初は「原田左官レディース」という事業部を作って、女性たちだけで営業して仕事を進めるようにしました。

―― そこが原田左官さんらしさですね。能力の生かし方、育て方を考えるという。

そうですか(笑)。そうこうしているうちに男性側も女性が現場にいることに慣れてきて、会社の方針として、女性発信の装飾的な仕事を手掛けることになりました。例えば、このサンプルを見てみてください。綺麗なものでしょう?

―― これは石灰クリームを使った磨き出し仕上げですね。ざらっとした立体感がありながら、その見た目を裏切る、滑らかで硬質な手触りが絶妙です。本当に美しい。

どうしてそんなに詳しくご存じなんですか(笑)

―― 取材準備の打ち合わせで、知り合いが感動して教えてくれたんです(笑)。こういった新しいチャレンジに成功されたということですが、もし女性が左官職人として加わっていなかったら、現在の会社のようにはなっていなかったと思いますか。

はい、今のようには、なっていなかったでしょうね。以前は個人住宅を扱うことが多く、地域の工務店さんとの仕事がほとんどでしたから。

女性職人が発案した商品をきっかけにディスコのお店などを担当するうちに、店舗も顧客先として広がり、会社としては大きな変化を迎えました。当時は、年配の職人さんたちとの間に軋轢もありましたが、それだけ会社が生まれ変わろうとしていたということでしょう。

「女なんか入ってくるな」といった感覚は消滅した

―― やはり女性が左官をやることには抵抗があった、と。

年配の職人さんたちはみんな嫌がりましたね。「じゃあ、なんで嫌なの」と聞くと、「うーん」となって、明確な答えを出すことはできない。私自身も正直なところ、左官職人という"土俵"に女性を上げることに抵抗が無かったわけではない。非常に重い荷物を持って、重い材料をこねたりする仕事だったので、そもそも男でなくてはできない。そういう過酷な時代をやってきた職人には、「そこに女性に入られて何かされても困る」という気持ちがあったのでしょう。

―― 今は女性でもできる仕事になったということですが、当時に比べて材料の袋の大きさなどにも変化があったのではないでしょうか。

変わりましたね。30年くらい前は、セメント1袋50kg。現場の設備も今ほどよくありませんから、その袋を2つも3つも担いで丸太の足場の上を運んだわけです。でもそんな職人たちも次第に年を取る。それにつれて、メーカーは40kgの袋を発売し、その直後に25kgの袋も販売されました。女性活躍のためでなく、時代の要請ですね。

最初は「この世界に女なんか入ってくるな」といった感覚は、ざっくばらんに言えば非常に強かったと思います。しかし、それも時間が解決してくれました。(後編に続きます)

小酒部さやか(おさかべ・さやか)
 2005年3月、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科を卒業し、アサツーディ・ケイへ入社。クリエイティブ職アートディレクターとして採用。その後、転職した会社で、契約社員として雑誌の編集業務に従事する中、マタニティーハラスメントの被害に遭う。2014年7月、マタハラNetを設立し、代表に就任。2015年、米誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載され、女性の地位向上などへの貢献をたたえる米国務省「世界の勇気ある女性賞」を日本人で初めて受賞。2016年1月に『マタハラ問題』(ちくま新書)を発売した。

(ライター 水野宏信)

[日経DUAL 2016年10月21日付記事を再構成]

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