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トランプ当選にショック状態のハーバード 学長も涙目

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NIKKEI STYLE

日経ウーマンオンライン

2016年11月8日夜――。ハーバード・ケネディ・スクールの天井に準備された赤・青・白の無数の風船が落ちることはなかった。ヒラリー・クリントン氏の勝利が宣言された瞬間、落下するはずだった風船は、網に囲われ、重く天井からぶら下がったままとなった。

ハーバード・ケネディ・スクールの同級生の大半は、民主党支持者だ。教授陣も民主党支持者が多く、歴代政権で活躍した人も多い。

8日の夜、初の女性大統領誕生に希望を抱いた学生たちは、大学で開かれた選挙結果開票パーティーに集まった。私も「このタイミングで行政大学院に留学できてラッキーだな」とワクワクした気持ちで、結果を友人たちと待った。

華やかな装飾と期待であふれた大学だったが、トランプ氏がオハイオ州で勝利をしてから、少しずつ静かになっていく。結局、深夜になっても結果が出ず、学校は閉まった。

そして翌日、学校に行くと、そこは別世界のようだった。

エルメンドルフ学長から学生にメールが届く

私自身、「メキシコの不法移民はレイプ犯」「イスラム教徒の入国を禁止すべき」など、異常ともいえる差別発言を繰り返し、アメリカの理念であるはずの「平等」や「多様性」を真っ向から否定する人が大統領になったことが、信じられなかった。同級生も皆一様に、動揺している。

そんな中、エルメンドルフ学長から全学生にメールが届いた。

「多くの人にとって、長く苦しい夜でした。午後1時に全校の集まりを開催するので、どうぞ来てください」

午後1時。全校生徒を前に、学長は壇上に立った。

彼もショックを隠し切れない様子だった。ハーバード・ケネディ・スクールは、差別と戦い、知識を探求(knowledge and inquiry)する学校だと強調したうえで、トランプ氏はそれらの理念を共感しない人であると話した。そして涙ながらに、行政や公共政策を学ぶ学生として、この選挙結果を受け止め、世のため人のために働くことがこれまで以上に重要であると訴えた。

ハーバード・ケネディ・スクールでは選挙の結果にかかわらず民主主義による選挙によって選ばれた大統領を祝福するために、風船落下をおこなうことが伝統だと話した学長は、天井にたまったままの風船を落下させた。

むせび泣く人の声、そしてアメイジング・グレースを歌う女性の声が響く中、静かに落下していく風船をみんな見守った。

アメリカの大統領選は、そもそも日本とは制度が違うので、淡々と行われる総理大臣選出に慣れている日本人にとっては、アメリカ人の反応は芝居がかって大げさに見えるかもしれない。しかし、それくらいこれらの出来事は異常で、現実ではないようだった。

これまでトランプの批判や侮辱の対象となった同級生たちは、喪失感でいっぱいだ。彼らはこう語る。

トランプの批判や侮辱の対象となった同級生の声

ヒスパニック系アメリカ人男性の同級生は、泣きながら語った。

「自分の存在、尊厳、価値、"アメリカ人"であることを証明するのに、もう疲れ果てた。アメリカという国は黒人、アジア系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人、LGBT、障害者、女性をはじめとする少数派を好まないかもしれない。でも、諦めずに、お互いが力を合わせれば乗り越えられると信じている」

アフリカ系アメリカ人女性の同級生も、泣いていた。

「オバマ政権が進めた、あらゆる人種や性別へ寛容な社会に対する、反動が起きている。いろいろな意味で多様性を受け入れられない、白人層の怒りが明らかになった。トランプ氏は選挙に勝つために、差別的な発言を繰り返したと信じたい。そうだとしても、彼に投票した人たちがこんなにもたくさんいた。トランプ氏の勝利で、彼らが、嫌悪や差別を正当化できるようになると思うと、恐ろしくて息ができない」

白人男性の同級生は、寄り添った。

「私たちもショック状態だが、彼らマイノリティーの不安は、想像を絶する。白人男性には理解しようがない恐怖を、友人たちが感じている。何かできることがあったら教えてほしい。全力でサポートをする」

マレーシア人女性の友人が話した言葉が、今でも心に残っている。

「ヒラリー、オバマ、学長の言葉に希望を感じられない」

マレーシア人女性の友人はこう語った。

「困難な状況で、人はリーダーを探す。どう考えて、何をすればいいのかと。理解できない状況を、理解できるようにしてほしいの。選挙を経てヒラリー、オバマ大統領、そしてエルメンドルフ学長のスピーチを聞いたが、希望を感じられなかった。

希望を与えるはずの言葉だったが、彼ら自身の未来への恐怖が見え隠れしていた。頼れるはずの人たちの恐怖を感じ取ることほど、恐ろしいことはない」

これほど悲しみにあふれた日が、国民の半数にとっては、トランプ大統領を喜んで祝福する日だった。対極の世界が同時に存在していることが、今のアメリカの現実だ。

日本では、TPPや日米同盟など、外交への懸念が多く報じられている。日本人として、直接影響を受けるだろう政策のため、当然だ。でも、今アメリカで起きていることの深刻さ、支持された価値観や考えがアメリカや世界にどういう影響を及ぼすか、日本人としても考えなければいけない。

この選挙はアメリカがいかに分断されているかを明らかにした。エリート支配層への怒り、自分と違う人種や性別の国民に仕事や社会的な力を奪われる恐怖感、自分たちが恩恵を受けない経済……。今までと明らかに異なる過激なリーダーに賭けてみようという力が、世界の大方の予想を覆した。

アメリカは今、ショック状態だ。

大倉瑶子(おおくら・ようこ)
テレビ局で報道記者・ディレクターとして4年働く。東日本大震災の取材やフィリピンでの台風被災地のボランティアを通して、災害復旧に興味を持ち、退職を決断。フルブライト奨学生として、ハーバード・ケネディ・スクールで学んでいる。

[nikkei WOMAN Online 2016年11月10日付の記事を再構成]

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