料理のプロが厳選 「最強」キッチンバサミ10選
3つのポイントを押さえれば後悔しない
こんにちは、飯田結太です。昆布や海苔など、包丁を使うまでではないけれど材料を切りたいというときに活躍する「キッチンバサミ」。また、焼肉店では肉をキッチンバサミで切り分けることから、最近は家庭でも肉や魚を切り分けるときにキッチンバサミを使う人が増えているんです。キッチンバサミといっても多種多様ですが、今回はどんなときにも使える万能タイプを取り上げます。
キッチンバサミを選ぶとき、皆さんはどこを見て決めますか? ハサミを研ぐのはプロでも高度な技術がいるといわれています。ましてや家庭で研ぐのは至難の業。基本的には切れ味が悪くなったら新しいものに交換するのが一般的です。だからこそ、できる限り長く使えるものを選びたいですね。そこで、絶対に後悔しない、長く使えるキッチンバサミの選び方を紹介します。
選ぶポイントは3つ。「刃の長さ(刃渡り)」「材質」「形状」です。
刃の長さ(刃渡り)は、短いものよりも長いほうが切りやすいもの。食材に対してスムーズに刃を滑り込ませようとしても刃が短いとすぐに止まってしまうので、作業に時間がかかります。刃は6cm以上のものを選ぶようにしましょう。
材質は、硬ければ硬いほど長く使えます。おすすめは、ハイカーボン製、鍛造(たんぞう)。これは材質の中で最も硬いものです。一般的なものは、機械で型抜きして最後に研磨して仕上げていくプレス加工ですが、鍛造は、鉄を型に流し込んで上から圧力をかけて仕上げていくので強度が高く、磨耗しにくいのです。価格は高めですが、10年以上使えるので結果的にとてもお得だと思います。材質はハサミ本体や箱などに書いてあるので確かめましょう。
形状は好みが分かれるところ。こだわりたいのは、指を入れるハンドルの大きさとネジの硬さです。
ハンドルの大きさは、指がスッと入って余裕があるものがベスト。自分の手の大きさに合っているか、購入前に一度は指を通してみてください。この部分が狭いとすぐに指が痛くなって使えなくなってしまうし、硬いものを切るときに力が入りません。長く使ううえでも重要なポイントです。
ネジは、ハンドルと刃の間にある部分。ハンドルに指を入れてハサミを数回動かしてみると、サクサクと動かせるものと、最初に少し力が必要なものがあります。動かすときにあまりにもぎこちないほど硬いものは使いにくいですが、すぐにサクサクと動くもの、または、ハンドルに指を入れたときに握っていないのに刃の部分が勝手に動いてしまうものはネジがゆるすぎて、すぐに使えなくなってしまいます。最初は少し力がいると思うくらいの硬いものがおすすめです。
ただし、毎日何時間もハサミを使う人には、硬いものは向きません。毎日カニやエビを切り分けるようなプロの人には少しネジがゆるめのものがいいかもしれません。家庭で使うなら、少し硬めのものを選ぶと、長持ちします。
切れ味の見極めポイントは?
ハサミを選ぶときは「刃の長さ」「材質」「形状」が重要です。とはいえ、切れ味は売り場ではなかなか判断できないことがあります。そういうときに最近はインターネットの書き込みを参考にする人が多いかもしれません。でもここで注意が必要です!
よく「切れ味が良くて使いやすい」「スパッと切れる」などと書かれていますが、大半の書き込みは購入してから1週間くらい使った感想だと思います。それを見て私はまず、「最初はいいかもしれないけれど1年持たないぞ」と思ってしまいます。
購入して間もない新しい製品なら、切れ味は良くて当たり前。ただ材質や刃の形状によってはすぐに切れなくなってしまうものも多いのです。なので、最初の切れ味だけで惑わされてはいけません。
キッチンバサミは、片側の刃がギザ刃で、もう片側は平刃のことが多いもの。ギザギザがあることで魚や肉など油分の多い食材などをしっかり挟み込んで滑らずにスムーズに切れるようにしています。ギザ刃は最初の入りは決してスムーズとはいえませんが、最終的にきれいに切れます。
さらにじっと見ないと分からないような細かいギザギザの刃がついているものがあります。これをマイクロエッジング加工といいます。少し値が張りますが、マイクロエッジング加工されているものなら何でもスムーズに切れて、しかも切れ味が長く続きます。
刃の形状は、海外製品と国産で多少違います。国産のハサミは刃が鋭利で薄いものが多いので、切ったときにあまり力をいれなくてもスーッと入り、切り心地がいい。一方、海外のものは、刃が鈍角のものが多いですね。食材に刃を入れるときに少し重く感じます。軽い切れ味が好みならば、国産の鋭角な刃のほうがいいでしょう。しかし、長持ちさせるなら、刃の入り具合は重いけれど、しっかりとしている鈍角のほうがいいかもしれません。
ここまで細かくチェックするのは面倒かもしれません。その場合は材質で選びましょう。まず、鋭い切れ味が最も長く続くのが鍛造です。次にステンレススチール。セラミックは切れ味が持続するのですが、硬い食材は切れにくく、落とすと割れてしまうのでおすすめしません。
衛生的に使うなら
キッチンバサミには、刃が片側ずつに分解できるセパレートタイプがあります。これなら、きれいに洗い流すことができます。食品工場や大型のレストランなどで使用されているのはこのセパレートタイプ。ただし、使用中に外れないように、使う前にしっかりネジ部分がはまっているかどうかを確認することが大切です。
もちろん、分解できないタイプのキッチンバサミでも水で洗えるので、ご安心を。どちらのタイプにしても、洗い終わった後はしっかり水気をふき取っておきましょう。少しでも水気が残っているとその部分から汚れがたまったり、錆びてしまうこともあります。そうなったらセパレートタイプにしても意味がないですから。
以下では売れ筋のキッチンバサミ10点を徹底検証します。
ハマる切れ味、4種類
プロに愛用されている、絶対に期待を裏切らないのが下記の4種類です。すべてアルミのレトルトパックで切れ味を検証しました。
心地よい重さ、すべてに完璧なキッチンバサミの元祖
キッチンバサミは、1938年に、ドイツのゾーリンゲンという刃物産業が盛んな地域に本社を置く、ツヴィリングJ.A.ヘンケルス社が最初に作ったといわれています。その当時に発表されたのが、「クラシック料理バサミ」。これがすべてのキッチンバサミの原型なんです。以来、80年近くデザインが変わっていません。
材質は、特殊ハイカーボンステンレススチールの鍛造。熱したあとに急激に冷やす「フリオデュア」と呼ばれる冷硬処理がされているのでかなり強度が高く硬い刃です。また、細かいギザギザの刃、マイクロエッジング加工がされているので、滑りやすい油分の多い食材でも滑らずにきれいに切ることができます。オールステンレスなのでズッシリとした重さがありますが、握りは柔らかくて、それが長い間変わらずに続くのがすごいところ。20年以上一度も研がずに使っていて切れ味が変わらないといわれるくらいなんです。私も愛用しています。
刃の入り具合はとにかくスムーズ。ひっかかることもなく、スーッと切れていきます。価格は飛びぬけて高いですが、高いなりのしっかりとした理由があるんです。
名門メーカーの定番、切れ味抜群のキッチンバサミ
スイスに本拠地を置く、ヨーロッパ最大の刃物メーカー、ヴィクトリノックスのキッチンバサミは、鍛造ではないのですが、包丁に良く使われるハイカーボンクロームモリブデン鋼にマイクロエッジング加工がされているので、しっかり切れます。握りは少し硬いのですが、刃の入りは軽くてスムーズ。しかも重量がほどよくあるので切りやすいんですよね。ひとつ残念なのは、男性の指では少しハンドルが小さめで長く使っていると指が痛くなってくること。指の細い人なら問題なく使えますが、私には少し小さいようです。
見た目よりも驚きのスムーズさ
こちらは、東京・日本橋の老舗料理道具メーカー、木屋の定番キッチンバサミ。木屋の人気のある包丁と同じ、オーストリア製のエーデルワイス・ステンレス鋼が使われています。見た目では握りが硬そうで、少し力がいるかなと思ったのですが、実際に切ってみると、刃の入りは軽く、かなり鋭角なのでスパスパとシャープに切れます。一度刃が入ると軽くて驚くほどスムーズ。これは予想以上にいいですね。アルミなどは、刃を当てただけで切れていきます。
焼肉店に人気、肉用におすすめ
飯田屋での売れ筋ナンバーワンがこちら。焼肉店が愛してやまないハサミです。ギザ刃のギザギザ部分が深いので、肉が滑らずに切れると好評です。ほどよく重みがあって使い勝手が良く値段も手ごろ。抗菌プラスチックで上からカバーしている点も焼肉店から愛用されているポイントですね。ただし、プレス加工のステンレスなので、鍛造に比べると長持ちはしません。
実際に使ってみると、刃の角度が鋭角なのですぐに切れるんです。切れ味はヘンケルスのクラシック料理バサミと同等かもしれません。長持ちはしないけれど、切れ味を追求している人にはおすすめです。
衛生的なセパレートタイプ6種
ここ数年で人気が急上昇しているのが、刃が片側ずつに分解できるセパレートタイプです。刃のすみずみまで洗えるのが一番のメリット。まれに使用中に外れることもあります。今回検証して、コストパフォーマンスが高いものが多いことが分かりました。前述の4種同様に、すべてアルミのレトルトパックで切れ味を検証しました。
硬い食材もスパッと切れる
マイクロエッジング加工のギザ刃が付いている切れ味がいいキッチンバサミ。大型焼肉チェーン店で導入されている人気商品です。実際に使ってみると、ハンドル部分が大きいのでしっかり握れて力も入りやすいのがいいですね。刃の厚さが約3mmもあるのでカニなどの硬い食材もスパッと切れそうですが、片面がギザ刃なので、そのギザギザ部分に少し引っかかる感触が手に伝わってくるのが気になります。
刃が外れにくく安全性に優れた国産品
こちらは新潟県三条市のハサミ専門メーカー、金鹿工具製作所のキッチンバサミ。ずっしり重いわりには握りは柔らかく、手が疲れにくくて優秀。セパレートになるのに、ネジ部分がしっかりしているので、ハンドルをフックに引っ掛けていても簡単に刃が開かないので安全です。しかし、実際に切ってみると最初の刃の入り具合が鈍く、ひっかかるのが残念。スパッと切りたい場合には向かないかもしれません。
軽くて持ちやすい女性用キッチンバサミ
料理研究家の浜内千波さんが開発に携わったキッチンバサミは、今回紹介した中で最も軽量。これは裁ちバサミをキッチン用に小さくしたもので、女性のために作られています。ハンドルは小さいのが特徴。さらに、ハンドルの材質は、弾力性があってグニャっとつぶれるほど柔らかいので指が痛くならないんです。重いハサミでは疲れてしまうという女性に支持されています。ただし、刃はそんなに硬いものではなく入り方も鈍いので、コツがいるかもしれません。
切る音が気持ちいい!刃がユニークなキッチンバサミ
これは、ようやく見つけた手ごろな価格の鍛造品。鍛造品なのにセパレートタイプというところも珍しいんです。刃の奥のほうが少しだけギザ刃になっているので、ぬるぬるした食材や厚みのある肉も滑らずに切れます。もし先端の刃がもろくなってきても、奥のギザ刃のおかげで切れ味が持続するユニークなハサミ。ただし刃に特徴があるので、少しコツが必要です。柔らかいものを切るときは先の刃で、硬いもの、厚みのあるものを切るときは奥の刃で切る感覚でしょうか。また、切るときのサクッという音が爽快で気に入っています。
コスパ最高! 国内リゾート御用達のプロ仕様
国内のリゾートグループの厨房で使われているプロ仕様。刃が鋭角で、とにかく切れ心地が抜群にいいハサミです。鍛造品ではないので十年持つとはいえませんが、刃の入り具合、握り具合、切れ味ともに文句なしのスグレモノ。コストパフォーマンスの良さは群を抜いているかもしれません。
スーッと入ってスイスイ切れる!老舗の名品
東京都足立区にある、老舗のハサミ専門メーカー、庄三郎。今も1本ずつ手作業で作られているキッチンバサミは、切れ味がすごい! さらにサクサクという音も気持ちいいんです。刃は、AUS-6(鋼材)といって、手術用のメスに使われている刃が使われています。硬度はほどほどで、錆びにもまあまあ強いほうでしょう。
実際に切ってみると、スーッと力を入れなくてもどんどん進んでいくのに驚きました。引っかかりは一切なし。これは切るのが楽しくなりそうです。
持っていると便利なユニーク・キッチンバサミ
ツヴィリングJ.A.ヘンケルスで開発されたキッチンバサミがあまりにも完璧なものだったため、キッチンバサミは現在まであまり変化することなくきました。ところが、ここ数年でユニークな形状のハサミが次々と登場しています。
最近、刃がカーブしている文房具のハサミが話題になりました。その形状に似たキッチンバサミが、「関孫六 カーブキッチン鋏(はさみ)DH-3313」です。刃がカーブしてエッジがきいていることから、力を入れなくても切れてしまうというもの。刃は、ギザ刃と平刃を使用。刃の入り方は重いのですが、最後までしっかり力を入れなくても切れます。
チョップドサラダ専用!?
こちらはボールの中に野菜を入れ、そこにハサミを入れてボウルの中でザクザクと野菜を刻んでいくためのハサミ。刃の先端が丸くなっているのは、ボウルの底を傷つけないため。刃はマイクロエッジング加工がされていて切れ味もしっかり。
面白いのは、このハサミの持ち方です。通常のハサミのようにハンドルに指を通すのではなく、ハンドル部分を上から握って、まるで握力トレーニングのハンドグリップのように持って使います。これなら誰でも簡単に均等にザク切りができそうです。(談)
(ライター 広瀬敬代)
[日経トレンディネット 2016年11月2日付の記事を再構成]
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