調査で判明 理想の「黄褐色うんち」はたった15%
意外に知らない 腸内フローラの真実(4)
うんちをしたら、まず勇気をもって振り返ろう
腸内フローラ特集の第2回では、便は"茶色い宝石"という話をした。「便にはその人の腸内環境情報がたくさん含まれており、それらがその人自身の健康や病気とリンクするのであれば、ある意味で"究極の個人情報"ともいえる」(福田さん)からだ。しかし、一般の人が最先端テクノロジーを利用して便を調べられるようになるには、もう少し時間がかかる。
「現段階でできることは、便の状態をよく見て、食生活を改善していくことです。腸内環境に影響を与える第一要因はやはり食習慣ですので、普段から食べたものと出た便の状態を記録しておくといいでしょう」(福田さん)
便は消化できなかった食べ物の残りカスだけでできていると思っていないだろうか? しかし、「便から水分を除くと、残りには食べ物のカスだけでなく、はがれた腸粘膜や腸内細菌も含まれています。これらの割合は状況によって変わり、不溶性食物繊維が多い食事をすれば食べ物の残りカスの割合が増えますし、大腸炎などの疾患時にははがれる腸粘膜の量が増えます。消化管に出血があれば血液なども含まれるようになります。便にはこういった腸内環境情報がたくさん含まれているので、重要なポイントは、トイレで便をしたら勇気を持って振り返って見てみることです」(福田さん)
つまり、便を見ること=おおまかな腸内環境状態を知ることだったのだ!
記録をとると、なお良し
食事はスマートフォンで写真に撮れば簡単だし、便は、回数、色、におい、量などをメモしておくといい。勇気があれば便を写真に撮ってもいいだろう。
「ウンログ」などの記録アプリを利用するのも手だ。下記の表のようなものを作って管理するのでもいい。
「家族や友人と食事の話はよくしても、便の話はしにくいものです。ましてや、自分の便と他人の便を見比べることはまずない。ですから、みなさん自分の便が普通だと思っています。しかし、アンケートをとってみると、便の状態は実にさまざま」(福田さん)。次のグラフを見て、自分と他人の"便事情"を比べてほしい。
下記のグラフは、福田さんの著書『おなかの調子がよくなる本』(KKベストセラーズ)の編集に当たって行われた、20~50代の男女各100人を対象にした「おなかの調子アンケート調査」の結果の一部だ(内訳は、男女各20代=25人、同30代=25人、同40代=25人、同50代=25人、調査時期=2015年10月9日~10月14日、インターネット調査)。
8割近くの人が便の色を「茶褐色」と答えており、後述する理想の「黄褐色」を実現している人は少数派であることが分かる。また、自分の便の状態を「いつも確認する」という人は約4割にすぎないことも気になる。こうした点をはじめ、普段の自分の便や習慣がほかの人と比べてどんな様子か、データからイメージしてみよう。
「便は臭くて汚いものというイメージが根付いているため、排便後、すぐに流してしまう人がほとんどだと思います。しかし、流す前にひと呼吸置いて見てみてください。毎日続けると、自分の腸内環境に何か異変があった時に気づくことができるかもしれません」(福田さん)
バナナシェイプで黄褐色が理想のうんち
昔から健康な便の例として、よくバナナが挙げられる。「バナナのような流線を描く、美しいフォルムの黄褐色の便が出たときは、腸内環境がいいと考えられます」(福田さん)
便がバナナシェイプになるのは、水分や食物繊維をほどよく含んでいるからだ。また、便が黄色っぽいのは、胆汁が正常に分泌され、その後、血液などが混ざらなかったことの証だ。また、腸内の滞留時間も適切だったことを表している。
「"バナナシェイプで黄褐色"の便を指標とし、このタイプの便を維持できるように普段の食生活や生活習慣を続けていけば、腸内環境を健康に保つことができるはず」(福田さん)
ちなみに、赤い便は痔か大腸がん、黒い便は便秘か大腸がん、緑の便は胆汁酸の酸化、水様状の便は細菌感染の疑いがあるので医師の診察を受けよう。また、これまで嗅いだことのないにおいがするときも要注意だ。
「前夜が飲み会で、お酒の飲み過ぎや揚げ物の食べ過ぎ、にんにくやたまねぎの食べ過ぎなどがあれば、便が強烈なにおいを放っていても不思議ではありません。しかし、食事に心当たりがないのに異臭がするときは、体調不良のアラームかもしれません」(福田さん)
今回の記事で便の状態から腸内環境を見極める方法は分かった。では、腸内環境を整えるにはどうすればいいか。次回はいよいよ、腸内フローラにいい食べ物について解説する。お楽しみに。
(ライター 村山真由美)
この人に聞きました
メタジェン代表取締役社長CEO/慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。1977年生まれ。明治大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。学位取得後、理化学研究所研究員として勤務し、2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。2011年にビフィズス菌による腸管出血性大腸菌O157:H7感染予防の分子機構を世界に先駆けて明らかにし、2013年には腸内細菌が産生する酪酸が制御性T細胞の分化を誘導して大腸炎を抑制することを発見、ともに「Nature」誌に報告。2015年、株式会社メタジェン(慶應義塾大学と東京工業大学のジョイントベンチャー)を設立。著書に『おなかの調子がよくなる本』(KKベストセラーズ)。
[日経Gooday 2016年5月27日付記事を再構成]
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