薄毛に効く? シャープの「頭皮ケア」ドライヤー
ヘアドライヤーの高級路線が三つどもえの戦いになりそうだ。シャープは、2016年10月20日に、"髪と頭皮をケアする"をコンセプトにした新ヘアドライヤー「プラズマクラスター スカルプエステIB-GX9K」を発表した。10月27日発売で、予想実売価格は2万5000円。
最近のヘアドライヤーといえば、2016年5月にダイソンがエアマルチプライアーの技術を応用した「スーパーソニック」(4万5000円)を、9月にはパナソニックがナノイー機能を搭載した「ナノケアシリーズ」の最上位クラス(2万2000円前後)を発表。どちらのメーカーも代表的な技術を軸にした高級ドライヤーを開発し、ヘアドライヤー市場の高級化を牽引する存在だ。そこに、シャープがプラズマクラスターを応用した頭皮ケアを行える新製品で参戦した。
シャープの調査によると、30~60代の男女803人にアンケートを行った結果、自分の髪や頭皮について悩みがあると答えた人は約67%に上った。特に多かった悩みが、「髪のボリュームが減った」「ふけ・かゆみ」「頭皮のべたつき」「頭皮の吹き出物」「頭皮の乾燥」だったという。これらの悩みに対して「何もケアをしていない」と答えた人が約52%もあったことから、日頃から習慣の中に取り入れやすい頭皮ケアに着目した。
シャープ、健康・環境システム事業本部空調PCI事業部の冨田昌志副事業部長は、今回発表したIB-GX9Kについて、「50度の低温で頭皮を程よくマッサージして、プラズマクラスターイオンを直接頭皮にまで届ける」と説明する。
シャープのプラズマクラスター技術といえば、水素プラスイオンと酸素マイナスイオンを人工的に作り出して放出し、カビ菌などに作用して水分になって空気中に戻るというもので、除菌・消臭、静電気の除去、そして保湿効果があるとされている。
IB-GX9Kは、このなかの保湿効果に注目。新たに搭載したマッサージ器具「かっさアタッチメント」でマッサージしながら、プラズマクラスターイオンを直接送り届けて頭皮をケアする。
髪を乾かしたあとに行うスカルプケアとは
新たに搭載したマッサージ器具、かっさアタッチメントの「かっさ」とは、専用のプレートや料理で使うレンゲなどで肌をこすって血流やリンパの流れを促進する美容法。IB-GX9Kは、その美容法からヒントを得て、人の手をモチーフにしたマッサージ器具、かっさアタッチメントを開発。クリアカバーが付いた構造で、プラズマクラスターイオンが密集する高濃度空間を作った。このアタッチメントを滑らせながら人の手のような部分で髪の毛をかき分けることで、高濃度のプラズマクラスターイオンを直接頭皮に届ける。
このかっさアタッチメントを使用するのは、髪の毛を乾かしたあとが良いという。ドライ後にこれを装着すると、温風温度は50度の「スカルプモード」、または冷風のどちらかにだけ切り変わるように設定されている。
このかっさアタッチメントを使用したIB-GX9Kと、プラズマクラスター機能非搭載の同社の従来品で比較したところ、IB-GX9Kは頭皮からの水分蒸散量を抑制し、うるおいを保つ効果があることが実証されたとのことだ。
頭皮のうるおいが保たれると、毛穴周辺の余分な皮脂が除かれて皮脂バランスの良い状態になり、頭皮を清潔に保てるとのこと。被験者からは「髪の根元がふんわりと立ち上がってボリューム感がアップ」「抜け毛が気にならなくなった」という声もあったという。
発表会では、トータルビューティーサロン「uka」のヘッドセラピスト、塩澤直子氏によるスカルプケアのデモンストレーションも行われた。「頭皮は顔のTゾーンよりも皮脂腺が多く、頭髪に覆われているので風が通りにくく蒸れやすい。頭皮マッサージなどのケアを定期的に取り入れることで頭皮を健康に保てる」と塩澤氏は話す。かっさアタッチメントでの頭皮ケアは、約5分、頭皮全体をくまなく滑らせてマッサージすると良いそうだ。
ドライ時間は60%時短
頭皮ケアのほかに新たな機能として、従来品よりもドライ時間を60%も短縮したという。これは、高速飛行する鳥である「アマツバメ」の翼を応用して空気抵抗を抑えたファンと、そのファンの回転で生じた渦状の流れをストレートに勢いのある風に整える「整流ロングノズル」を組み合わせた、独自の速乾構造「速乾エアロフォルム」によるもの。最大で毎分1.7立方メートルもの大量の高速風を作って髪の根元まで届けることで、熱に頼らない速乾性を実現した。
温風モードでは、温風と冷風を交互に出してキューティクルを引き締めながら髪にツヤを出す「ビューティモード」を新たに搭載。ほかに、モードボタンで切り替える「スピーディドライ(HOT)」「いたわりドライ(WARM)」「地肌ドライ(SCALP)」と、「冷風(COLD)」がある。
色はミッドナイトブラックの1色展開。「ヘアドライヤーというと、女性をイメージするが、これは頭皮ケアができるので、女性だけではなく男性や高めの年齢層も想定し、ブラックカラーを採用した」(冨田昌志副事業部長)
発表会では、かっさアタッチメントがつかない「IB-GP9」シリーズ(予想実売価格2万円)も紹介。こちらは従来のターゲットである女性を意識した4色のカラー展開(ルージュレッド、ミステリアスパープル、シャボングリーン、アンティークゴールド)だ。
最近はヘッドスパを利用する男性も増えている。自宅で手軽に頭皮ケアができるのであれば、男性や髪のボリュームが気になり始めた年齢層にも受けるだろう。ターゲットの差異化を図ったことで、高級ドライヤー競争の中でどのような動きを見せてくれるのか注目したい。
(ライター 広瀬敬代)
[日経トレンディネット 2016年10月26日付の記事を再構成]
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