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リバランスで9%も成績アップ 投信の分散投資 QUICK資産運用研究所 高瀬浩

 

2016/11/9

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 投資信託を複数束ねて分散投資すると、投信の基準価格は日々変動するので、資産額全体に占める投信ごとの組み入れ比率も変動していく。増減した配分をあらかじめ決めた比率に戻すのをリバランス(資産配分の再調整)と呼ぶ。

 万能ではないものの、リバランスを定期的に行うと運用成果(パフォーマンス)の改善につながることが多い。実際に投資可能なインデックスファンド4本の組み合わせで検証したところ、過去10年のリターンが9%アップしたケースもある。

■投信ならリバランス自在

 複数の投信に分散投資した際、資産額でみた配分比率が減った投信を買い増す一方で、増えた投信を一部売って配分比率を元に戻すのがリバランスだ。投信は金額で売買できるので、1万円以上1円単位などの最低売買金額に合わせてA投信を○円分売り、B投信を○円買い増すという具合にリバランスも自在に行える。

 組み入れ投信が上昇相場の勢いに乗り、基準価格が今後も上昇し続けるなら、そのまま放置するのが得策かもしれない。だが将来の予測が困難だからこそ、資産分散して配分比率を元に戻す意味がある。

 そのため、リバランスによるパフォーマンス向上の検証も一本調子の上げ相場や下落局面ではなく、投信が上げ下げを繰り返した長期で行うのが適当だ。

 今回は国際分散投資の典型例として、国内株・海外株・国内債券・海外債券の4資産で運用するインデックスファンド4本を10年前に組み合わせ投資したとして、その10年リターンがリバランスの有無でどう変わるか計測した。同時にリバランス頻度による効果の違いも計るため、リバランス間隔を1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月、1年で変えてみた。

 インデックスファンド4本は、各資産ごとに「10年リターンが最大」などの条件を満たすものを選んだ(表A)。4本とも確定拠出年金(DC)の対象商品だ。

 DCでは制度上、販売手数料なし(ノーロード)で購入きるのもメリットだ。ノーロードだとリバランス時の買い増し費用が発生しない。選んだ4本は信託財産留保額がないので、売却時の費用もかからない。

 グラフBに4本の10年間の値動きを示した。国内債券型は緩やかに上昇してきたが、それ以外の3本は2008年の金融危機時のつるべ落としの下げや、その後のウナギ登りの上昇など上げ下げを繰り返してきた。表Aに示すリスク階級が上げ下げの振幅の大きさに対応している。

■1771通りの大半でリバランス効果

 次に4本の組み合わせ配分比率を決める必要がある。今回は5%の配分を基準とし、各投信の配分比率は0%から5%刻みで増えていく組み合わせパターンを用意した。すると、4本の配分が合計100%になる組み合わせパターンは1771通りある。例えば日本株25%、海外株5%、国内債券40%、海外債券30%の組み合わせや、各25%の均等配分などだ。

 1771通りの組み合わせパターンについて、10年前に投資してそのまま放置した時のリターンと、途中1カ月または2カ月、3カ月……1年ごとにリバランスを行ったリターンを比較計測した。

 その結果、放置したままに比べ、大半のケースでリバランスした方の10年リターンがアップした。リバランス間隔別に放置した場合とのリターンの差を集計したところ、間隔1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月、1年の順にリバランスした方が平均で5.3%、5.6%、6.1%、5.9%、6.6%、4.8%上回った。

 今回の検証では6カ月間隔のリバランスでリターンが最高となったが、ほかの間隔とのリターン差は小さい。計測期間特有の市場変動が影響した可能性も排除できないため、「リバランス間隔は6カ月が最適」というのはあくまでも目安だ。価格変動リスクに関しては、リバランスした方が放置に比べてやや大きめ(平均で年率0.7%程度増大)となったが、許容範囲だ。

 具体的な例でリバランスの効果を示すと、4資産に均等配分(各25%の配分比率)した場合について、リバランスせずに放置した場合と6カ月おきにリバランスした場合の運用成績の推移をグラフにした(グラフC)。10年リターンの差は9%に達した。前半の5年で下げ続けて配分比率が低下した国内株式・海外株式をリバランスのたびに買い増したことが、その後の上昇局面で効いた。

 リバランスする際、投信を売却せず追加資金を投入するという手もあるが、今回は追加資金なしで、投信の売却と購入は同一日に実施という前提で検証している。現実には、投信を一部現金化するまでには数日要し、それを元手に買い増すので、即日のリバランスはできない。投信の売却と購入日のずれがパフォーマンスに多少なりとも影響する。

■リバランス時の課税に要注意

 見落としがちなのは、少額投資非課税制度(NISA)や確定拠出年金(DC)のような非課税口座以外では、リバランス時の投信の一部換金益が課税対象となるため、リターンの縮小要因になることだ。

 実際にどの程度、リターンが目減りするのか。源泉税率を20.315%として4資産均等配分のパターンについて、10年間のリターンが非課税時と比べどの位減るのか試算してみた。リバランス間隔が長くなるほどリターンの目減り幅は縮小し、1カ月間隔だと約3%の低下幅が6カ月間隔では1%強に縮まった。

 課税口座で頻繁にリバランスすると、税制面で不利になるといえそうだ。ファンドラップやロボアドバイザーでも同様、投信リバランス時に税負担が生じるので目配りしたい。

 これに対し、1本で資産分散するバランス型ファンドでは、新興国株の一部などを除き、ファンド内で組み入れ資産をリバランスする場合の売買益は課税対象にならない。何よりも、自分で定期的にリバランスする手間暇が不要という点は捨てがたいメリットだ。

 最近は組み入れ資産の配分を機動的に変更するファンドが多くなったこともあり、配分比率固定型の影が薄くなっているが、この固定型のパフォーパンスは侮りがたい面がある。配分比率固定型は運用方針通りの配分比率を維持するため、リバランスはほぼ毎日、もしくは比率にズレが発生しだい随時行うのが一般的だ。

 ラッセル・インベストメントが運用する「ラッセル・インベストメント・グローバル・バランス」も内外4資産でアクティブ運用する配分比率固定型のバランス型ファンドの一例だ。「安定型」「安定成長型」「成長型」の3本のファンドに分かれ、リスク階級は配分比率に応じて順に「1」「2」「3」と上がっていく。

 「安定型」だと国内株15%、海外株10%、国内債券5%、海外債券(為替ヘッジあり)70%を基本配分比率とする。信託報酬は税込みで年1%を超すが、10年リターンは3本とも投信市場全体の平均を上回っている(グラフD)。

 3本の純資産総額は10億円未満と小粒だが、数百億円規模のマザーファンドを通じて運用しているので、繰り上げ償還の可能性は低いようだ。

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