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南チロル発 バロックバイオリンが開く古楽

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NIKKEI STYLE

古い18世紀仕様のバロックバイオリン奏者ヨハネス・プラムゾーラーさん(36)が古楽演奏界の若手第一人者として世界的に注目を集めている。イタリア語とドイツ語の文化が交錯し、オーストリア国境に近いイタリア最北部、南チロル地方の出身。自主CDレーベルを立ち上げ、バロック以前の知られざる作曲家の隠れた名曲を発掘し、レコーディングしている。10月に来日した彼の公演会場を訪ね、リハーサルを聴き、古い西洋音楽の魅力について聞いた。

「モンタナーリ、マイスター、モンドンヴィル。知らんね」。プラムゾーラーさんは大手レコード会社の担当者にそう言われたという。「バロック以前の音楽に熱中し、傑作を書いた重要な作曲家がたくさんいることを知った。多くの人々に聴いてもらおうと思ってCD録音を提案したが、断られた」と話す。「誰も知らない作曲家の作品を録音するよりも、ヴィヴァルディの『四季』でもやった方がいいよと言われた」

バロック以前の作曲家を発掘

そこで2013年に自主レーベル「オーダックス・レコーズ」を立ち上げ、発掘した古い作曲家の優れた作品を録音し、CDを出すようになった。「日本でも一部の有名作曲家の作品しか聴かれていないのではないか」と彼に逆に質問された。バロック以前の作曲家ではヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデル。少し詳しくなればテレマン、クープラン、コレッリなどを聴く人もいるだろう。だが「コレッリの弟子のモンタナーリも聴いてほしいな」。ここまで来るとかなりの通だが、実際に彼の世界初録音CD「アントニオ・マリア・モンタナーリ ヴァイオリン協奏曲集」(輸入販売・東京エムプラス)を聴くと、決して難しくはない。聴きやすくて親しみやすい、みずみずしいバロック音楽だ。

CDで演奏しているのは「アンサンブル・ディドロ」という古楽合奏団。プラムゾーラーさんが2009年に結成し、自ら芸術監督と第1バイオリン奏者を務める。彼の使用楽器は1713年製作の「ピエトロ・ジャコモ・ロジェリ」という銘器。「バロック以前の音楽を聴くのが好きだった。作曲家のそれぞれの作品に時代背景があり、調べていくうちに楽器も当時の仕様のものを弾こうと思うようになった」

自分の楽器を説明し始めたとき、「製作年代が古いからバロックバイオリンだというわけではない」と彼は強調した。やはり銘器といわれるストラディバリウスやグァルネリも「同じ18世紀のバロック時代に製作されたからもともとバロックバイオリンだった」。しかし19世紀になって弦が羊腸製のガット弦から金属製のスチール弦に替わり、ネックも取り換えられ、楽器内部が補強されて現代仕様に改造された。ひとたび改造されれば、どんなに製作年代が古くても現代バイオリンに変わる。ストラディバリウスも同様だ。これに対し「バロック音楽を演奏するに当たって、再び改造して当時の仕様に戻したものが本当のバロックバイオリンであり古楽器だ」と説明する。古楽器とは再改造されているだけに実は新しい楽器なのだ。

10月3日、アジアの人々の店舗が立ち並ぶ新大久保にも近い東京都新宿区百人町。アジア文化の交差点のような町のざわめきの中に淀橋教会小原記念チャペルが静かにたたずんでいる。この教会を会場にした来日記念リサイタルはすべてJ.S.バッハの作品。「バッハはいつも練習している。しかしコンサートではもっとずっと珍しい作曲家の作品を取り上げるので、バッハを演奏することはめったにない」

リハーサルではチェンバロの山本満寿美さんと「バイオリンとチェンバロのためのソナタ第2番」などを演奏した。きらびやかできめ細かい模様を描く山本さんのチェンバロの響きに乗って、プラムゾーラーさんのバロックバイオリンが鳴る。時たまフルートやホルンのような音色にもなり、ざらついて引っ掛かりのある響きは現代バイオリンと明らかに異なる。ピアノよりもチェンバロと相性のよい響きだ。

欧州文化の交差点で育んだ才能

プラムゾーラーさんは欧州文化の交差点といえる南チロル地方に生まれ育った。かつてはドイツ語圏の旧オーストリア=ハンガリー帝国領で、現在はイタリアに属する。中心都市ボルツァーノから北上してブレンナー峠を越えると、オーストリアのチロル地方、インスブルックにたどり着く。平らな高原と鋭い峰を持つシリアール山塊をはじめドロミテアルプスの威容が取り囲む山岳地帯だ。「ドイツ語とイタリア語の両方を話す土地柄。私もどちらも話せる」と英語で言う。彼の姓名はドイツふうだ。英国の著名な女性バロックバイオリン奏者レイチェル・ポッジャーさんに学び、今はパリに住んでいる。多様な欧州文化を体現している演奏家だ。

「南チロルには安くて質の高い音楽学校のシステムがある。子供たちはみんな音楽学校に通う。私の故郷の町は人口6000人だが、1000人が音楽学校の生徒だ」。チロル地方の伝統音楽や民俗音楽も習うという。クラシック音楽の古層にはそうした欧州各地の民俗音楽がある。「チロルの古い伝統音楽を知れば、違う視点からクラシック音楽にアプローチできる」。彼が古楽演奏家として注目を集める理由も、南チロルで育まれた独特の才能にありそうだ。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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