育休延長で待機児対策 夫の取得促す施策を
育休延長をめぐる育児・介護休業法の改正審議は夫の取得を促す方向で議論されている。「もっと働けるように保育の充実を」「もっと家庭で育児を」という論戦に「女性だけでなく男性も育児を」と決着をつけるのは今や定番である。
仕事か家庭か、女性の選択にしていても問題は解決しない。その観点から妻の代わりに育休を取る男性が増えることは好ましい。だが、今回の法改正の背景に待機児童問題があることに留意したい。男性の育休にその効果を期待するなら数カ月にわたる育休を取る男性が大幅に増える必要がある。
長期の育休を夫に取ってほしいと妻が言ったら夫はどう答えるだろうか。あり得る1つの答えは「仕事が忙しくて取得できない」。夫婦の収入と社会的地位が同等でも家事・育児は妻に偏る傾向がある。
ある大手企業では女性従業員の夫に協力を求めるため仕事と育児の両立に関する従業員研修をパートナー同伴にしている。他社に勤務する配偶者やパートナーも対象である。こうした方法による夫の説得は今後広がるかもしれない。その実効性を確保するためには妻の会社の研修に出た夫の会社の理解も不可欠である。
もう1つ別の夫の答えとして「妻の収入だけで生活できるのか」と言う可能性がある。育児休業給付は6か月まで67%、その後は50%であるから収入が同じなら夫と妻が6か月ずつ取得した方が得である。
しかし、日本の男女間賃金格差は大きく、すべての育休を妻が取った方が得という夫婦は少なくない。夫婦どちらが育休を取っても世帯収入への影響が等しくなる対策が必要である。
さて、わが身に照らして考えてみると半年くらい育休を取ってみたい気持ちはあるが、育休の延長はしないと思う。保育園を求めているのは育休適用対象者だけではない。自営業やフリーランスの人、育休の適用対象になっていない雇用者もいる。そうした人が保育園の0歳児クラスに入って定員を埋めるなら、育休取得の可否にかかわらず0歳で入園するのがやはり合理的である。それだけ今の保活は競争が激しい。家庭での育児による保育需要緩和を本格的に考えるなら体系的な対策が必要であろう。
〔日本経済新聞朝刊2016年11月5日付〕
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